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■ひきだしバレエ(ダンス)覚書>マラーホフの贈り物(2008)


えー、今から約1年半前の2008年2月、大阪で「マラーホフの贈り物」を観てきました。たしか、同じ日に松竹座で玉三郎、菊之助、海老蔵の舞踊の会を観て、翌日友だちに会い楽しいひとときの後、新幹線と土讃線を乗り継いで帰ってきたその足で高知県立美術館ホールで上演されたヤン・ファーブル「死の天使」を観たというハードスケジュールでした。海老蔵の「連獅子」はブログで感想を書いたけど、玉三郎、菊之助の「二人道成寺」は書かず仕舞い。「死の天使」については、「ヤン・ファーブル、サド説」を書くつもりが未だ果たせず。乗り継いだ汽車の中で読んだ三浦雅士氏のベジャール追悼文に感動したことも書きたかったのですが、それより今はマラーホフです。演目などは下の表をご覧ください。

このときのマラーホフは怪我から復帰したばかり。ロビンズの「牧神の午後」、「白鳥の湖」グラン・アダージョ、歌入り音楽での「ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ」の三演目を踊りましたが、足に負担がかからないようにジャンプも回転もなし。しかーし、マラーホフはマラーホフなのです。特に最後に踊った「ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ」は、「ドン・キホーテ」で盛り上がった後ですから、いかにマラーホフと言えども、こう沸いた後では踊りにくいだろうし、最後の演目ですから盛り下がったらどうするのよと思ったのですが、いえいえどうして、ワタクシ思わず「ちくしょう、ユーリの奴、やりやがった!」と内心叫んだくらいです。「ちくしょう、ユーリの奴うんぬん」は、バレエファン及び山岸凉子ファンだとピンとくると思いますが、ジャンプなどの大技なしに人々を魅了する踊りを踊ったユーリに対して、その前に会場を沸かせきったライバルが思わずこぼした敗北の台詞です(マンガ「アラベスク」のエピソード)。もちろん私の場合、快哉の叫びなわけですが。
ヒップホップ風の現代的な動きで、とにかく柔らかくて軽い。それで発光していて、これぞマラーホフなのですが、前の座席の男性は嫌そうなため息をついていて(笑)、もしかしてマラーホフって男性的でないということで好悪が分かれるのかしらと思いました。
長ズボンで踊っていたのが、さっと早変わり(歌舞伎か!?)。一瞬にして白の短パンになったのにはビックリ。とにかくその動きの美しさをどう書いたら伝わるものやら。「もう観てくれ」と言った方が手っ取り早いです(笑)。
今回も復帰したばかりで、絶好調と言われた舞台を私は一度も観ていないのですが(素晴らしい!と思って帰ってきて他の方々の感想を読むと本調子じゃなかったとか書かれているのです)、それでもやはり素晴らしいのであります。

「白鳥の湖」では、ポリーナ・セミオノワが良くいえば癖のない、悪くいえば強さに欠けるオデットでした。自信を持って踊れば、たおやかであってもオデットとしての芯のようなものが感じられるようになるのではないでしょうか。
マラーホフは、あんなに細い身体でよくサポートできるなーと思うのですが、よくサポートできるんですよ。そして、そのサポートする姿までが美しいのです。んで、全幕ではないのに王子になりきっていますから〜。演技もバッチリです。ほんま、けなすところのない憎い奴(笑)。

「牧神の午後」はセミオノワちゃんもよかったです。バレエのレッスン場みたいなところで、マラーホフがぼけら〜んと寝そべっているところへセミオノワちゃん登場。マラーホフ、セミオノワちゃんに視線が釘付け。と言っても直接見るわけじゃなくて、鏡に映ったセミオノワちゃんを見ているらしい。レッスン場だから四方は鏡の設定なのですね。このセミオノワは色っぽかったです。セミオノワが出て行った後のマラーホフは、ぼけら〜ん(笑)。あれは夢だったのか・・・・(笑)。

その他印象に残ったのは見た順に「エスメラルダ」。タンバリンを鳴らしながら踊るのですが、ヤーナ・サレンコの鳴らすタイミングが、私が「ここ!」と思うタイミングと異なっており、何ともスッキリしない感が残りました。

「くるみ割り人形」のイリーナ・ドヴォロヴェンコとマクシム・ベロツェルコフスキーの夫婦ペアは美男美女なのもいいけれど、それ以上に踊りの息が合っていて、リフトをリフトと感じさせないのです。一連の流れの中に「あれ、いまリフトもあったわね」というくらい自然に見せてくれます。「ふわり」「さらり〜」大好きなペアです。

「黒鳥のパ・ド・ドゥ」では、マリーヤ・アレクサンドロワがすごかったです。「どうだ!」という感じで、爽快なくらいポーズが決まるし(しかもちゃんと美しい)、連続36回転では会場が沸いた沸いた沸きました。テクニックだけではこうはいかないでしょう。華があるのですねー!

「スプレンディッド・アイソレーションIII」は、ドヴォロヴェンコ、ベロツェルコフスキーのペアでありながら、お茶屋大絶賛のリフトを封印した作品で観た当時は不満だったのですが、驚くことに1年半後の今でも大変印象に残っています。ドヴォロヴェンコは裾の長いドレスで、その裾が腰から下何重にも身体に巻き付いていて身動きが取れません。上半身だけの踊りです。ベロツェルコフスキーは、その周りを自由に踊ります。巻き付いた裾を拡げても(視覚的な美しさはあるのですが)、不自由さは変わりありません。ダンサーの性別を意識すると、家庭に縛り付けられている女性にも見えるし、性別に関係なく見たまんま身体が不自由で往生している人が周囲と意思疎通できない様にも見えます。好き嫌いは別として印象深い作品であることには違いないです。

というわけで、マラーホフ様、素敵な贈り物をありがとうございました。

2009/9/23
 
■マラーホフの贈り物
2008年2月13日(水)18:30〜
フェスティバルホール(大阪)
■第1部
牧神の午後 音楽:ドビュッシー
振付:ジェローム・ロビンズ
ポリーナ・セミノワ
ウラジーミル・マラーホフ
エスメラルダ 音楽:チェーザレ・プーニ
振付:M・プティパ
ヤーナ・サレンコ
ズデネク・コンヴァリーナ
シンデレラ 音楽:プロコフィエフ
振付:ロスチフラフ・ザハーロフ
マリーヤ・アレクサンドロワ
セルゲイ・フィーリン
くるみ割り人形 音楽:チャイコフスキー
振付:レフ・イワーノフ
イリーナ・ドヴォロヴェンコ
マクシム・ベロツェルコフスキー
■第2部
「白鳥の湖」第2幕(全編) 音楽:チャイコフスキー
振付:M・プティパ、レフ・イワーノフ
オデット:ポリーナ・セミノワ
ジークフリート王子:ウラジーミル・マラーホフ
悪魔ロットバルト:木村和夫
4羽の白鳥:森志織、村上美香、岸本夏未、河合眞里
3羽の白鳥:西村真由美、乾友子、田中結子
ほか東京バレエ団
■第3部
「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ 音楽:チャイコフスキー
振付:M・プティパ
マリーヤ・アレクサンドロワ
セルゲイ・フィーリン
スプレンディッド・アイソレーションIII 音楽:マーラー
振付:ジェシカ・ラング
イリーナ・ドヴォロヴェンコ
マクシム・ベロツェルコフスキー
ドン・キホーテ 音楽:ミンクス
振付:M・プティパ
ヤーナ・サレンコ
ズデネク・コンヴァリーナ
ラ・ヴィータ・ヌォーヴァ 音楽:クラウス・ノミ
振付:ロナルド・サフコヴィッチ
ウラジーミル・マラーホフ

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