アイガー北壁

登攀シーンは、ホラーでもないのに顔を覆った指の間から観た。
山岳映画の景色、スリル、絆など、期待どおりだったけれど、期待以上の面白さを期待してたのかも(笑)。
「栄光か悲劇でないと記事にはならない」というベテラン新聞記者の言葉を否定するような結末を望んでいた。全員無事に下山したって、ほらほら、ちゃんと映画として面白いでしょ、というふうに栄光でも悲劇でもない物語だってすごいんだというところを見せつけてほしかった。(言わば「生き残ることが栄光だ」という物語。)だけど、あっという間に3人亡くなり、あの結末だ。私にとっては大どんでん返しだった。だって、一人でも生き残らないと、北壁での出来事の細部は、作り手の想像の域を出ないこになってしまう。もしかして、トニー(ベンノ・フユルマン)はあの状態のまま、ルイーゼ(ヨハンナ・ヴォカレク)に細部を語り尽くしたのか????と思いながら観ていた(^_^;。
結局、登攀シーンを山場に据えながらも、麓でのうのうと見物している人たち(記者だけではない。また、麓だけではない。)への批判がメインの映画のような気がした。新聞に栄光か悲劇を期待している見物人が大勢いるから、ナチスが若者を国威発揚の犠牲にしたり、後の登攀成功時にはオーストリアとの併合に利用したりできるのだと思う。

「アイガー北壁」への2件のフィードバック

  1. >「栄光か悲劇でないと記事にはならない」というベテラン新聞記者の言葉を否定するような結末を望んでいた。全員無事に下山したって、ほらほら、ちゃんと映画として面白いでしょ、というふうに・・・
    全く同じこと考えてました。
    だから私にとっても「大どんでん返し」でしたね、あの結末は。
    観た後のアンケートに「事実というものの情け容赦のなさをしみじみ感じました。」とかナントカ書いた記憶があります。会場は暖かかったけど、観てる方としてはあまりの寒さに震えて上がって・・・「寒くて涙が出た」映画は初めてです。
    登山は好きだけれど「危険」が好きなわけではないらしいトニーが、最後に「まだ死にたくない。助けてくれ!」。相棒はその前に「お前は生きて降りろ。」ってザイルを切って・・・などなど。でも私が「事実」って書いたのは単に4人が結局亡くなったっていうことだけど、お茶屋さんの言われる通り確かに「細かい」部分については事実かどうかは判りませんね。(でも、なんかほんとに可哀想でした。ナチスに利用されたことを別にしても。)
    それにしても過去の実話に基づく「山の映画」って、装備の貧しさ(時代から言うと当然だけど)に泣けてきます。こんな格好、これくらいの道具しか無くてアンナトコに登ったんだ・・・って、山のことなんか何も知らないけど思います。

  2. >私にとっても「大どんでん返し」でしたね、あの結末は。
    おお!同志よ!
    寒くて涙は出なかったけど風邪を引きそうだったのが『八甲田山』。高校生のとき、総合見学で観ましたが、映画も寒い、映画館も冷房効き過ぎで、みんな、口々に「寒かったー」と。それが唯一の感想(笑)。
    トニーとアンディの絆や遭難してザイルを切るところなど、山岳映画の定番といえば定番ですが、やっぱり胸に迫るものがありますよね。死にたくないという叫びも堪えました。
    登山の衣服や装備って大事ですよね。命に関わるもの。日帰りで夏山に登るときでも、非常食と合羽とセーターはザックに入れていました。
    当時の装備は『劔岳 点の記』などもそうですが、生きて帰れるのかと思うくらいですよね。
    遭難して、本当に可哀想だし、ものすごく怖い映画でした。

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