ゴーストライター

名無しのゴーストライター(ユアン・マクレガー)のいかにも英国人的な婉曲表現が笑える。ときどき真意とは反対の言葉で表現するので、他の俳優が演じたら皮肉っぽい人物になったかもしれないが、世界一チャーミングな俳優が演じたことによりユーモラスな人物になった。この名無しのゴーストライターの前任者は事故死したことになっているが、どうも殺されたらしい。誰がなぜ、アダム・ラング(ピアース・ブロスナン)元英国首相のゴーストライターを殺したのか。名無し君が真相に迫っていくとともに、自分もとっても怖い目に遭う政治サスペンス・ミステリーだ。

この映画にはいろんな人物が登場して名無し君に質問をする。その人物は前任者を殺した相手かもしれない。下手なこと(自分がどれだけ情報を掴んでいるか、前任者と同じくらい知っていること)を言って殺されたくないと思うはずだ。それなのに名無し君は知っていることを話してしまう。大丈夫かと心配していたら大丈夫だった。考えてみれば、名無し君はフリーのライターで、どこの誰にも組織にも属せず与しないのだから、自分の身の安全を確保できさえすればいいのだ。他人のために守らなければならない秘密はない。だとすれば、知っていることを話した方が断然助かる!(という論理が成り立つのかどうかわからないが、そう思ってしまった。)また、直情径行型人間(←名無し君のことではない)に悪人はいないということも再確認できた。

それにしてもポランスキーの演出力は凄い。冒頭、フェリーから車が一台ずつ出て行くシーンからしてジワジワと怖い。ラスト付近も手紙が手から手へ渡されていくシーンにドキドキした。この渋い演出と、ガラス張りの別荘やいかにも寒そうな風景をもう一度観たい。本当のことを言うと、名無し君の婉曲表現の他にもクスクス笑える場面がいっぱいあったので、また笑いに行きたい。

ルース・ラング(オリヴィア・ウィリアムズ)
エメット(トム・ウィルキンソン)

THE GHOST WRITER
監督:ロマン・ポランスキー
(2012/02/26 あたご劇場)

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