ウィンターズ・ボーン

ハードボイルドや~~!
麻薬密造小屋の焼け跡場面あたりで、「ウィンターズ・ボーンって、父親の骨を拾う話なのか!」とビックリ。
しかし、まあ、いまさらながらに映画は世相の鏡だ。
『8Mile』(2003年)でホワイト・トラッシュという言葉を覚えたが、昔、日本人が憧れたアメリカは今いずこ。ミズーリの田舎だから、リー(ジェニファー・ローレンス)たちは、まだ家屋敷があるのかもしれないが、17歳の少女が病気の母と幼い弟妹を養うなんて出来るのか?軍隊に入ろうとするのも無理はない。(面接官の合理的な説得にもアメリカを感じた。)イギリス映画だと、すぐに福祉局の職員が飛んでくるケースだと思うけど、アメリカ映画はワイルドだ。自分たちで生きるしかない。狩りもするけど、お隣さんから、たまにある差し入れが命の綱だ。
こういう厳しい貧しさを背景にし、物語を語るに徹したこの作品はエンタメらしからぬエンターテイメントだ。感傷を排した語り口を堪能した。

リーの父親に対して、初めは「保釈中に子どもを残して逃げるなんて、なんちゅう親や」と思っていた。ところが、物語が進むにつれて、リーたちにとっては良い父親だったとわかってくる。
誰かが父親の保釈金を出した。その目的は、掟破りの口を封じるため。だから、父親は家に帰れず、逃げ隠れしていたのだ。
父親が捕まる前は、いい暮らしだったと思う。子どもたちには遊具があるし、馬も飼っていたし、洋服もけっこうある。リーが弟妹に狩りを教える様子から、きっとリーもこうして父親に教わったんだろうと想像する。アルバムをめくると幸せそうな父母の写真があるし、父とティアドロップ伯父(ジョン・ホークス)の子どもの頃の写真も可愛い。生業が麻薬密造でも普通の家族の絆があったのだ。だから、リーは父が弾いていたバンジョーを売れない。奥に仕舞ったバンジョーの前でリーが佇むシーンがあるが、売る気などさらさらなくて、父のことを思っていたのかもしれない。

田舎の女の子リーが、君はローレン・バコールかフェイ・ダナウェイかというくらいにクールでカッチョイイ。でも、彼女が母の髪を梳くときな穏やかな表情をはじめ、答えるはずもない母に「どうしたらいいの」と涙を見せたり、ティアドロップ伯父に脅されて本気で怖がったり、死にに行くも同然の伯父を見送る表情など、なかなか見応えがあった。『あの日、欲望の大地で』『X-MEN』と観るにつけ、ジェニファー・ローレンスは大器だなぁ。
また、ハードボイルドにカントリーソングとはこれ如何に。カントリーソングって日本人にとっての演歌みたいなものじゃないのかなぁ?アメリカ人が観ると異化作用でもあるのだろうか。

WINTER’S BONE
監督:デブラ・グラニック
(シネマ・サンライズ 高知県立美術館ホール 2012/06/28)

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