彼女と彼

直子(左幸子)が素晴らしい。英一(岡田英次)の可愛く色っぽく溌剌とした妻というだけでなしに、子どもたちのケンカをやめさせようとしたり、田舎から出てきたクリーニング店の若者にも、夫の大学時代の友人で現在は廃品回収をしている伊古奈(山下菊二)や、伊古奈が面倒をみている目の不自由な少女花子(長谷川まりこ)にも分け隔てなく親切で優しい。だけど、見知らぬ人にまで世話を焼くわけでなく、花子と出会ったときは近寄らず、気づかれないようにそっと離れていったくらいだった。伊古奈が面倒を見ている少女とわかったから、伊古奈が留守中、病気の花子を自宅に連れてきて看病したのだった。

上映の後の武藤教授の講演で、当時にあっても直子は浮いた存在だという話があって、この映画がよく理解できた。高度成長期に経済的に発展していく一方、貧しいまま取り残された人たちもいたわけが、それだけでなく人とのつながりも薄れていって、直子のように積極的に他人と関わっていく人が少なくなったというのだ。今を生きる私の目からすると、直子が変わり者(異分子)として、いつ団地の主婦連につまはじきになるか気が気でなかったわけだが、そんなに感じたということは、今現在は昭和四十年代より更に人とのつながりが薄くなっており、変わり者を排斥する狭量な社会になってしまったかもしれない。
私もこの年になって「困ったときは、お互いさま」というつながりが大切だとわかってきたけれど、究極のものぐさ体質から「希望は仙人」なくらい人と関わることがイヤなので直子のマネはできない。ただし、「一寸先は闇。明日は我が身」と思っているから、病気の花子を自宅に連れてきたことを「関係ないだろ、そこまですることない」と言う英一のようにはなりたくない。武藤教授の話で妙に自分の立ち位置を自覚させられた(笑)。

それにしても当時の子どもは元気だったんだなぁ。本来子どもってこの映画に写っているくらいパワフルなものだと思う。今だって大人に比べれば疲れ知らずで元気なんだろうけど、この映画の子どもには圧倒された。

監督:羽仁進
(小夏の映画会 2012/07/16 龍馬の生まれたまち記念館)

「彼女と彼」への2件のフィードバック

  1. お茶屋さん、こんにちは。

     すっかり遅くなってしまいましたが、過日の拙サイトの更新で、こちらの頁をいつもの直リンクに拝借しているので、報告とお礼に参上しました。

     「本来子どもってこの映画に写っているくらいパワフルなものだと思う」とお書きなのを読んで、あの戦争ごっこの場面を思い出しました。今はTVゲームでやってて小石の投げ合いなど決してやんないんでしょうね。本体の戦争でもボタン化してるくらいですもんね。

     はてさて、その他者との関わりにおける立ち位置の話ですが、非常に興味深く思いました。“究極のものぐさ体質”だとは思えないながらも何となく“希望は仙人”に合点がいかなくもないお茶屋さんらしさが窺えるように思いました。

     どうもありがとうございました。

  2. ヤマちゃんがリンクしてくれたおかげで、再読して誤字脱字その他を修正することができました。どうもありがとう。

    「希望は縁側老人」と言う人がいて、その人は高いところからじゃなく水平に見たいのだとか。私はもっと広範囲を見たいし、食べるものも霞でいいのでやっぱり仙人がいいです。
    ものぐさは間違いないですよ。自分省エネ大好きです。

    小石の投げ合いは止められるだろうなぁ。私も含めて度量のない大人がおおすぎかも。

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