東京家族

良かった。次男の昌次(妻夫木聡)を非正規労働者にすることによって今の映画になっていると思った。また、妻とみこ(吉行和子)に先立たれ単身となった周吉(橋爪功)を、ユキちゃんを始めとする田舎のご近所さんが助け合おうとするところに希望を感じた。
東京の子どもたちも薄情なわけでなく、あくせくした時の流れに乗っかると、仕事や些事に追われ満足に親孝行できないのは無理もないような気がする。時流に乗ると、東京に限らずあんな感じになるだろうと思う。

『東京物語』と異なると思ったのは、人物が小粒になったところだ。『東京物語』の人物には風格があった。『東京家族』の人物に風格が感じられないのは必ずしも悪いことではない。例えば、『東京物語』で次男の嫁を演じた原節子が現在から見ると出来すぎに感じられるくらい格調高いのに対して、『東京家族』の次男の婚約者、間宮紀子を演じた蒼井優は、本当にいそうな女性で親しみさえ感じる。
名作のリメイクもそれなりに意義があると思った。

幸一(西村雅彦)/文子(夏川結衣)/滋子(中嶋朋子)/庫造(林家正蔵)

監督:山田洋次
(2013/01/20 TOHOシネマズ高知8)

「東京家族」への2件のフィードバック

  1. お茶屋さん、こんにちは。

    昨日付の拙サイトの更新で、こちらの頁をいつもの職リンクに拝借したので、
    報告とお礼に参上しました。

    「次男の昌次(妻夫木聡)を非正規労働者にすることによって今の映画になっている」
    本作の核心部分ですねー(拍手)。
    『切腹』やら昨今の黒澤作品のリメイクラッシュを観ていると、
    その意義に対して懐疑的にならざるを得ないのですが、こういう作品に出会うと
    ちょっと見直しますよねー。どうもありがとうございました。

  2. ヤマちゃん、リンクとコメントありがとう。
    映画のリメイクも舞台みたいに配役や演出の妙を楽しむことはできるけど、舞台と違って名作が決定版として残っていますからねぇ。(ちょっと思い出しましたが、むかし、『二十四の瞳』のリメイクで、吉永小百合のところに話が行ったんでしょう、小百合さんは「桃井かおりさんにやっていただいたら皆さん見たいと思うのでは」と断ったそうな。)
    名作という決定版がある映画の場合、リメイクは勇気がいりそうに思うのですが、あまりプレッシャーなく作られているような気がしないでもないような(笑)。要は作り手の意識がどこにあるかですよねー。

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