シャーロック・ホームズ全集 河出文庫

注文してあった冒険、思い出、バスカヴィルの三冊が届いた。今のところ第1巻から第5巻まで刊行されていて、このあと月1巻のペースで第6巻から第9巻まで刊行される予定。
連載時の全挿絵付きが売りなだけあって、初めて見る絵があって嬉しい。もうひとつの売り、巻末に付いているオックスフォード大学出版部の注釈もイイ感じだ。
ワトソンが知人(患者でもある)を阿片窟まで迎えに行って、思いがけずホームズに遭遇する場面のある「唇のねじれた男」のさわりを見てみると「アヘンチンキ」という言葉があって、次のように注釈されている。

アヘンチンキは阿片をアルコールに漬けたもの。〔アヘンは空想力を高める薬だと信じられ、英国全土に常用が広まった。1920年に毒性薬物法が制定されるまで、取り締まりはなかった〕(第3巻P655、R・L・グリーン著、高田寛訳)

勉強になるなー(^_^)。
ベアリング=グールドのようなマニアックな注釈(事件の順番とか)はあまりなさそうだけど、それでも「大きめの青いガウン」の注釈では、「青いガーネット」では紫色、「空き家の冒険」では鼠色であるとされていてガウンの色に矛盾があるが、「唇のねじれた男」ではセントクレアのものを借りたと考えることもできるだろうと書かれていて、病膏肓に入るホームズファンもニンマリだ。

少し残念なのは、ホームズとワトソンの灰汁が抜けていることだ。BBCシャーロックほどではなくても、BBCの二人(特にホームズ)がそれほど違和感がないくらいには、あるいはグラナダTVのエキセントリックなホームズ(ジェレミー・ブレッド)がピッタリと思えるくらいには灰汁のあるキャラクターなのだ。阿片窟にいるホームズに驚いたワトソンのセリフも、その声の大きさをたしなめるホームズのセリフも優しすぎると思う。

「ホームズ!」わたしはささやいた。「こんな穴倉で、いったい何をやっているのかい?」
「できるだけ小さい声で話してほしいね」と、彼は答えた。「ぼくの耳はすばらしくいいのさ。(略)」
(第3巻P270、小林司、東山あかね訳)

ワトソンは「ささやいた」と書いているのに、それでも大きすぎるっちゅうの(笑)。ワトソンは「むっ」としたに違いないの(笑)。この遣り取りは笑えるはずのところだと思うけどなぁ。
ともあれ、この全集の売りは買いだ。全巻揃えようと思う。

「シャーロック・ホームズ全集 河出文庫」への3件のフィードバック

  1. 「アヘンチンキ」って懐かしい響き~(^^)
    なんか私程度の一般ファンに向いた本?みたい~。
    全部買っても読めそーな気がしてきました(わくわく)

    お茶屋さんだったら、引用されてる阿片窟の会話
    どんな風に書きますか?(優しすぎないバージョンだと)

  2. ちょうど昨夜、録画しておいたBBCシャーロックを見たところです!
    ワトソンが知人(患者でもある)を阿片窟まで迎えに行って、
    思いがけずホームズに遭遇する場面、ちゃんと再現してましたねー。
    メアリのエピソードはびっくりでしたが、
    無軌道な変質者に振り回されるのが大好きな
    ワトソンのMな資質が強調されていて最高でした。
    アクが強くて笑えるシャーロック&ワトソンに
    これでしばらく会えないかと思うと残念。
    1年間に3本なんて言わず、もうちょっと増量してほしいです~。

  3.  >ムーマさん
    この全集は、イイと思いますよ~。オックスフォード大学出版部による注釈と解説、そして訳者のあとがきがお値打ちです。バスカヴィルの訳者あとがきでは、ドイル卿が裸にされています(^_^;。中学高校生にも気軽に楽しんでほしいから注釈等は単行本の内容より簡略化されているとのことで、さらに深く読んでみたくなったら単行本へと誘っていました。

    >(優しすぎないバージョンだと)

    考えてみたんですけど・・・、BBCの二人が思い浮かぶばかりで・・・(笑)。それだけで笑える。というわけで訳の方はサッパリです。
    m(_’_)m

     >TAOさん
    そーなんですよ、BBCのそのシーンを見てなんという作品だっけーとカンニング(検索)しまして(笑)。

    >ワトソンのMな資質が強調されていて最高でした。

    デスよね!これまで、ひどいめにあわされているなぁと可哀想に思っていたのですが、もうやめます。今後は、ジョン、よかったねーと(^Q^)。
    シリーズの間が2年も空くって拷問ですよね。明らかに「つづく」で終わっているのに。ヤツらはSです(笑)。

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