面白かった!笑ったし、ちょっぴり泣けた。「あるある」という程度にリアルで、「そうこなくちゃ」というくらいにファンタジー。実に気持ちよく、見終わって元気になった。
アパレル業界で働いている滝川由紀子(香里奈)が、長年の友だちから恋人に転じた森本蒼太(向井理)に圧力鍋を贈られたときは私もガッカリだった。それが、いつもの食堂をムーディに電飾し、手作りヨットを贈られた日には、すみません、齢50のワタクシもうっとり~(笑)。断然、鍋よりキラキラ☆ヨットだ!と思って気がついた。ああ、男性諸君も大変だなぁと。(鍋がいいときもあるし~。)
いくつも年が離れた後輩(林遣都)に恋しちゃった小坂容子(吉瀬美智子)も面白かったし(コメディリリーフやね)、働く女性に仕事を奪われる危機意識があるのか反発激しい今井(要潤)と対決する武田聖子(麻生久美子)が、夫ヒロ君(上地雄輔)の優しさに涙する気持ちもよくわかる。女性上司といえば、天海祐希のように男性にも引けを取らない体格の人が思い浮かぶが、現実には小柄な女性上司も存在するわけで、麻生久美子の可憐さがうまく活かされた配役だと思った。聖子のパートは、出産か仕事かという葛藤もあったし、彼女の男性上司の頭の低さとか、女性の部下と抱き合って涙ぐむところとか厚みがあった。
最も感動したのは、離婚して大奮闘のシングルマザー平井孝子(板谷由夏)と息子のキャッチボールのシーン。父親のいる子と同じようにしてやりたいという思いから、父親役までこなそうと頑張る孝子。息子がキャッチボールできるように必至だ。いつしか遊びの範囲を超えて特訓になっていき、ついに息子は音を上げ「ボールが見えない」と泣きそうになっている。気づくと、あたりは薄暗い。「ごめんね。」と謝って息子を抱きしめる。孝子は友だちから「頑張りすぎだよ」と言われて「頑張りたいのよ、頑張らせてよ」と返していた。息子は母の頑張りをよくわかっており、幼いのにとても気を遣っている。そんな二人を夕闇が包む。母は後ろ姿で、息子はその陰で、二人の表情は見えない。
劣等感いっぱいの百貨店の職員安西博子(加藤ローサ)もよかったし、昔で言うところのオールドミス、かつ、仕事が出来る女性光山晴美(壇れい)もよかった。
この映画を外国の女性が観たらどう思うだろう。ぜひ、観てもらいたいと思った。
監督:深川栄洋
(2012/06/16 TOHOシネマズ高知1)