一枚のハガキ

真夏の青い空と白い雲のようなハッキリくっきりした映画だった。厚手の大判光沢紙に太字マジックで「生きる」と書いたような。活きのいい作品だった。

夫、森川定造(六平直政)の戦死の知らせを受けて友子(大竹しのぶ)が、黙々と菜っ葉を切ったり薪を割ったり怒りだかなんだか、やるせない思いを溜めている様子から、舅の勇吉(柄本明)の定造の弟と結婚してくれという頼みをおとなしく聴いた後、「あんた、なぜ死んだーっ!!!」と叫ぶまで。溜めと爆発的出力の演出及び演技のおかげで涙が飛び出た。びっくりしたな、もう(笑)。
終始、ユーモラスなところが、とてもよかった。

松山啓太(豊川悦司)/泉屋吉五郎(大杉漣)/森川チヨ(倍賞美津子)/啓太の伯父(津川雅彦)/啓太の妻(川上麻衣子)

監督:新藤兼人
(四国文映社 2012/07/08 自由民権記念館)

グスコーブドリの伝記

ものすごく魅力的な失敗作のような。絵の美しさやキャラクターのユニークさはよいし、音楽は手風琴や笛の音色がこの作品の雰囲気にピッタリ。(キャラクターごとのテーマを徹底したのはやりすぎかな?)
「失敗作」かどうかは作り手にしかわからないことなので、失敗作と言い切るのは間違いだと思うけれど・・・。
たとえば、冒頭のグスコー一家の団らんの場面。セリフや笑い声が不自然で、いかにも冷害の前の幸せな一時を描くためという感じがする。あるいは冷害で父と母が子どもを残して相次いで森へ行ってしまったのは自発的姥捨てなのかもしれないが、あの描写では突然両親が出て行ったのは、なぜなのかまったくわからない。両親という食いぶちが減ったおかげで、ブドリは生き延びることが出来たのだとすれば、誰か(何か)の犠牲のうえに私たちは成り立っているという宮沢賢治的テーマにつながるんだけど。あとでブドリが両親に生かされたと悟る場面があれば、わかりやすいのに。しかし、作り手が、家族団らんのシーンは不自然でよい、両親が出て行ったのは、なぜだかわからなくてよい、とそういうつもりで作ったのであれば、作り手にとっての失敗作とは言えない。今、二つ例を挙げたけれど、大体この調子だったと思う。

残念なのは、この映画の肝が伝わってこない点だ。「誰かのためになりたい、たとえ命を投げ出しても」なんて思ってもない観客にも、ブドリの「みんなのためなら、ぼくはどうなったって構いはしない」という気持ちを理解はできる程度に共鳴させるのが感動させるということのはずなんだけど。セリフで言わせてしまうなんて。
命を救うために命を掛けなければならない場面は、現実にあると思う。例えば、昨年の福島第一原発事故の現場で働いた人たちにどんな葛藤があったのか想像してしまう。その中にブドリがいたら(?)。
「海猿」シリーズは、命を掛ける話だからまだ共感が得られやすいのかもしれない。「ブドリ」は命を投げ出す話だから作り手としても難しかったのかな?

ともあれ、私にとっては魅力的な作品で、もしかしたらまた観に行くかも。

監督:杉井ギサブロー
(2012/07/07 TOHOシネマズ高知4)

スノーホワイト

おしまいになるにつれてつまらなくなる。
(予告編『メリダとおそろしの森』を面白そうだと思って見ていたら、メリダが戦いだして辟易した。見ていても戦いは疲れる。)
スノーホワイト(クリステン・スチュワート)も無理に戦わなくてもよかったのに。戦うんだったら負ければよかった。やはり、ラヴェンナ女王(シャーリーズ・セロン)様にはかないませんでした~(え~ん)、となれば面白かった。
狩人エリック(クリス・ヘムズワース)と幼なじみウィリアム(サム・クラフリン)との三角関係になっていっても戦いよりはよかったのに。ああ、つまらない(え~ん)。私が泣くわ。
だけど、ビジュアルはとてもよかった。開花と同時に実がなっている林檎だか桜だかの木も不思議な感じがしたし、黄金の鏡人間みたいなのが溶けるみたいなのはよく思いつくなぁ。白馬に乗ったスノーホワイトが一軍に追いかけられる遠景も美しい。黒い森の造形もかなり面白かった。弱い心が恐ろしいものを見せるって、これ本当。夏になると目の端に入ったものが何でも蜘蛛に見えてドキンとする。スノーホワイトに林檎を差し出すウィリアムが美しい~。化粧や照明で俳優は美しくなるんやね~。ウィリアムの表情がちょっと怖くて、その白い肌と真っ赤の林檎の対比も効いていた。

SNOW WHITE AND THE HUNTSMAN
監督:ルパート・サンダーズ
(2012/06/30 TOHOシネマズ高知5)

アメイジング・スパイダーマン

面白かった。一つ一つのエピソードが消化不良な感じはするけど、力を持つ者には責任があるというポイントは外してなかったと思うし、お馬鹿なというか若気の至りのピーター・パーカー(アンドリュー・ガーフィールド)が成長していく物語として楽しめた。また、スパイダーマンに市民が協力するところがあって、人々を一方的に助けにくる超人的ヒーローとはひと味違う展開が好ましく思えた。更に、父ちゃんのリチャード・パーカー(キャンベル・スコット)は殺されたのかどうなのか、黒幕っぽいオズボーンはどういう形で登場するのか、謎が残されていて次回作も観たくなる。

ピーターのベン伯父さん(マーティン・シーン)、メイ伯母さん(サリー・フィールド)が豪華キャスト!ガールフレンドのグウェン・ステイシー(エマ・ストーン)は、頭よさそうだし勇気もあるし、悲鳴をあげるだけのヒロインではなさそうだ。グウェンの父ちゃん、キャプテン・ステイシー(デニス・リアリー)は、アンドロイドとして生き返ってほしいような端正な容姿だった。ラダ博士(イルファン・カーン)は、生きているのか死んだのかよくわからなかったけれど、次回にも登場してほしい印象に残るお顔。
そして、なんと言っても今作は、カート・コナーズ博士(リス・エヴァンス)の魅力全開!
生々しい、妖しい・・・(^o^)。器の小ささが堪らない(いや~ん)。
そうそう、ピーターをいじめる坊主頭の男の子、タイプ、タイプ~。p(^_^)q ピーターより可愛いので困った(笑)。

THE AMAZING SPIDER-MAN
監督:マーク・ウェブ
(2012/06/30 TOHOシネマズ高知7)