Kバレエ「カルメン」

いや~、熊ちゃん、カッコいいわー!本当にキレッキレの踊りだった。ドン・ホセは、真面目で実直。それがカルメンに骨抜きにされて情けないことになる人物なので、カッコいいのは困ったもんだ(笑)。エスカミーリョをやればよかったのにぃ。と言っても、ちゃんと物語として成立する人物にはなっていて、二幕のカルメンへの束縛ぶり、独占ぶり、ちょっと他の男性と話しただけで拳銃を持ち出す悋気ぶりが、情けないと言うより偉そうでねー(むかむか(笑))。そりゃ、カルメンでなくても愛想が尽きるわって感じになっていた(わはは)。

カルメンは、登場したとき、やっぱエロかった(笑)。それなのに可愛さもある。踊り上手い!西洋人ぽい~と思ってオペラグラスを覗いたら、メイクめちゃうま、もう日本人に見えないよ。と思って休憩時間に配役表を見たら、ロベルタ・マルケスだった!ああ、そうだったそうだった、忘れてたけどそうだった。

いやいやそれが、他のソリストもソリスト以外のダンサーも皆、踊りが上手くて綺麗で~~。日本人が西洋人を演じているときの違和感が感じられず、驚きながら感心して見ていた。前からレベル高いと思っていたけど、更に高くなったんじゃないだろうか。
それに熊川哲也は振付の才能もあったのね(知らなかった。)スライディング振付、おもしろ~い!足を後ろに蹴るのも可愛い。両手を左右に振るのも。浮遊感のあるリフトも、ちゃんと入れてるし、本当に盛りだくさん。色んなことをやってくれて全編見せ場な感じだ。
ただし、全編見せ場だと目玉の場面の印象が薄くなってしまうから注意が必要だと思う。

目玉は、第一幕第一場(タバコ工場前広場)では、カルメンのハバネラと、カルメンが捕縛されてホセが連行する縄のパ・ド・ドゥ、第二場(居酒屋)ではエスカミーリョのソロ、第二幕第一場(野営地)はミカエラのソロ、第二場(闘牛場前)はカルメンとドン・ホセの追いかけっこだと思う。他にも工場前での兵隊さんたちの群舞、工場の女同士のバトル、居酒屋に場面転換するとき、幕前での酔っぱらい踊り、野営地に現れたエスカミーリョとドン・ホセのにらみ合い、闘牛場前のお祭り踊り(カルメンの友だちのソロ、道化師の踊り、闘牛士の踊り)と本当に見所がいっぱいだった。
もちろん、ドン・ホセが踊るところはいっぱいあったと思うけれど、印象に残るソロがないのが辛い。闘牛場前に至るまでに、ドン・ホセの苦しみたっぷりのソロが是非ほしい。そうすれば、踊りの楽しさだけではなく物語としての感動が強くなると思う。

それから、いつもながら舞台美術と衣装がイイ!!!
装置はシンプル、寸法のバランスを不思議な感じに崩している、マチエールが堅牢、乾燥、温暖。装置と衣装と照明でひとつの舞台として統一感があった。
おしまいの闘牛場前の場は、いきなりカッと照りつける照明、向こうの壁と手前の闘牛場という大胆な装置、上手から下手へ続く壁のラインがデ・キリコの絵のような遠近を崩したような感じ、手前の闘牛場の汚し具合、衣装の色の洪水(あれだけ色を使っても統一感があって美しいと感じられるのは装置がシンプルだからだろうなぁ)と、幕切れの殺しの異化効果を狙っている感ありありなんだけど、カルメンもドン・ホセも舞台から消えるというすごい演出もあって、なかなかの衝撃度だった。

カルメン(ロベルタ・マルケス)
ドン・ホセ(熊川哲也)
ミカエラ(佐々部佳代)・・・ドン・ホセを思う踊り、本当にいじらしい気持ちにさせられた。素晴らしい。
エスカミーリョ(遅沢佑介)・・・・カッコいい!
モラレス(伊坂文月)
スニガ(スチュアート・キャシディ)
フラスキータ(浅野真由香)
メルセデス(井上とも美)
ダンカイロ(ニコライ・ヴィユウジャーニン)・・・・切れよく可愛い♥。
レメンダード(兼城将)

(2014/11/01 高松市 アルファあなぶきホール)

大谷康子弦楽四重奏団~古典からラテンまで~

とても楽しかった!
大谷さんのおしゃべり、愉快ゆかい(^_^)。
グリーンホールでの演奏会だからと、緑のドレス(^o^)。女性陣のドレスに「色が若干かぶってますけど」と思ったが、そういうわけだったのか!男性陣もネクタイに緑色が入っているそうで(笑)。

圧巻はベートーヴェン。エアコンが効きすぎで鳥肌が立っていたのが、一気に体温上昇。すっかり血行がよくなった。
そして、第一部のしめのショスタコーヴィチ!「不協和音でしょうからねぇ」と何となく敬遠していたショスタコさんだったが、この音楽は次から次へと映像が浮かぶ。それに思いのほかちゃんとした音楽だった!美しいとさえ思った。(昔ラジオでよく放送された神経を逆なでするような現代音楽とはまったく違っていた。ショスタコさんを現代音楽といっしょくたにしていたことを反省。食わず嫌いはよくないねー。)

第二部のあまちゃんのテーマ曲も嬉しかったし、アンコールで客席後方から大谷さんが現れて、モンティのチャールダーシュを弾きながら客席にくまなく音を届けていたのが超楽しかった。

大谷康子(第一バイオリン)
福留史紘(第二バイオリン)
青木篤子(ビオラ)
西谷牧人(チェロ)

モーツァルト:セレナーデ第13番ト長調K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
ハイドン:弦楽四重奏曲第77番ニ短調作品76ー3「皇帝」
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番ハ長調作品59ー3「ラズモフスキー第3番」第4楽章
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番ヘ長調作品96「アメリカ」
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番作品110
ピアソラ:リベルタンゴ
その他、「あまちゃん」のオープニングテーマなど
アンコールはモンティのチャールダーシュ
(2013/09/21 県民文化ホール(グリーン))

シアターホリックの夕ごはん会「零れ落ちる女たち」

アルコールがあったらちょっとした「お客(宴会)」になりそうな雰囲気というか、アットホームな感じがまさに「夕ごはん会」だったので、とても気楽にすごせた。ごはんが終わってデザートまで出てコーヒーで一服して・・・という頃合いに前方から呼びかけられて、自己紹介を始めた人がいると思ったら、それが朗読劇の始まりだった。導入部、うまい。

働く気もなく自宅もなく女性の間をフラフラしているシンイチと、4人の女性の物語。ユキ先輩や姉のようなサチコが「やめときな」と言うのに、モエコちゃんはシンイチに夢中で、私も「もう~、やめちょき(呆)」と最初は思ったのであったが、モエコちゃんはそんなシンイチでも充分幸せそうで、「う~む、本人がいいなら傍でとやかく言うことないか」と思い至り、私の周りでモエコちゃんみたいな人が現れても「何も言うまい」と決意した。そういえば、瀬戸内寂聴さんも「放っておけ」と言ってたことだし。いや~、なんかタメになる劇だなぁ。

ところどころ笑えるところがあって(「カレー麻婆めん」、それはないろう(笑))、カジュアルな登場人物のカジュアルな恋愛模様をカジュアルに描いていると思った。役者さんがみんな上手なので、本人が心情をいちいちナレーションするのをもっと減しても思っていることは伝わる気がした。落語が好きなのでト書きは最小限にと思うのかもしれない。場面状況(どしゃ降り)を「ザー」「ザー」と役者さんに言わせたのは、うまいト書き表現で面白かった。

作・演出:松島寛和
(2013/09/20 サホエリカフェ・アルモンテ)

モスクワ・フィルハーモニー交響楽団

マリインスキーやボリショイのバレエ公演で、ロシアの楽団は音が大きいとは思っていたけれど、これほどとは(笑)。
オードブル的「ルスランとリュドミラ」序曲は、まだほんの序の口だった。音の大きさより速いねーと(笑)。速く弾く曲なんだろうけど。実は思ったより音が小さくて席がよくなかったのかしらと思ったくらいだった。

清塚信也
ピアノ協奏曲は、『さよなら、ドビュッシー』で好演していた清塚信也が臙脂色のスーツで登場。「やぁやぁ、どうもどうも」という乗りでヤンキーとも吉本新喜劇とも取れるような感じだ。(←要するに横山やすし!)椅子が低かったらしく、長いこと調節している間にも客席に向かって「どもども、ちょっと(スンマセン)」みたいな気遣いをしていて、明らかにこれまで見てきたクラシックの人種と違う(笑)。クラシックと言ったって音楽でしょう、楽しくやりましょうというクラシックに囚われない姿勢を感じた。それは演奏にも現れていて、聴きながら「面白いとしか言いようがない」と思っていた。ジャズっぽいと感じたところがあったし、オーケストラと合ってないというか「オケの人やりにくいんじゃ・・・」と感じたところも2カ所くらいあったが、それで破綻しているわけではない。オケと一体となるところも掛け合うところもちゃんとあり聴き応えがあるのだ。終わったらブラボーの声がいくつもあがった。
アンコールが、これまたビックリで、ジャズが始まったかと思ったらさにあらず。何十曲ものクラシックの名曲のサビの部分を次から次へと違和感なくつないで行き(中にはミッキー・マウスのマーチもあった)、ところどころでお客さんから笑い声がもれ(何せ聞いたことあるばかりの曲)、今さっき聴いたばかりのピアノ協奏曲のフレーズに掛かったときには私も思わず声をあげて笑ってしまった。この日、もらったチラシに「清塚信也ピアノリサイタル【K’z Piano Show 2013】笑得るクラシック」があったが、確かにこの人のコンサートは笑えるに違いない。
休憩時間にSさんを見つけて話しかけたらユニークだと連発していた。アンコールの曲について、ああいう曲があるのかとたずねると彼が自分でアレンジしたのだろう、ジャズが好きなのではとのことだった。協奏曲の本編でもジャズっぽいところがあったというと、独奏の部分は演者の好きに弾いてよいとのことだった。Sさんは前から県民文化ホールのピアノは、新規の際に弾き込んでないから音が悪いと言っていたのだが、この日も「季節が(湿気の多い)今でしょう、あれだけ弾いても音が(鳴らない)。可哀想ですね。」とピアノが可哀想と繰り返していた。

本気を出したラッパ系
プログラム最後の交響曲。なんか、まるごと聞いたことある~。いったいどこで聞いたのだろう。それはともかく、ラッパ系、笛系が凄かった。茹でダコのように真っ赤になっているのが二階席からでもわかる。クラシックって思い出したように主題を繰り返す。1回目では唯々凄いと思ったが、2回目は何だか可笑しくなって笑いかけた。でも、3回目以降は、これだからオーケストラは苦手なのだよ(室内楽が好き)と、ラッパ系の人の血管より自分の頭痛が心配になってきた。しかし、交響曲とはよくしたもので、第2楽章(ゆったり~)、第3楽章(ピチカート、ピチカート(^o^))と雷の後の慈雨(また雨か(笑))みたいな救いがあって助かった。
それにしても管楽器が、これほど前面に出るとオケとしてのバランスはどうなんだろう?そう思っていたら、アンコールはチェロやバイオリンの独奏があったりで弦楽器が気持ちよく、ここでバランスを取ったか(笑)という感じだった。
全体として、バレエにしてもオーケストラにしても私はロシアの垢抜けなさというか、土着的(三枚目的)なところが好きだと改めて思った。


指揮:ユーリ・シーモノフ
ピアノ:清塚信也

グリンカ:歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23
 --ピアノ・アンコール--
名曲サビ・メドレー
 ----休   憩----
チャイコフスキー:交響曲第4番ヘ短調Op.36
 ----アンコール----
チャイコフスキー:弦楽カルテット曲 アンダンテ
チャイコフスキー:「白鳥の湖」より ロシア舞曲
チャイコフスキー:「眠れる森の美女」より ワルツ

(2013/06/25 県民文化ホール・オレンジ)