ロゴ
・映画情報→ ・上映中&予定 ・カレンダー ・グループ ・ピックアップ
・趣   味→ ・くりからもんもん ・鬼の対談 ・ベスト・キャラ ・かるかん
space
■かるかん>キル・ビル|スイート・シックスティーン
[←もどる] [すすむ→]



   
 
キル・ビル
タランティーノ、恨み節、タラシテーノ
Kill Bill
監督、脚本:クエンティン・タランティーノ(2003年 アメリカ 1時間53分)
ウマ・サーマン|ルーシー・リュー|デイヴィッド・キャラダイン|ダリル・ハンナ|千葉真一|栗山千明

ははは、ははははははは、ははははは。笑えます。
お金をかけて安っぽいB級ねらうなんて、タラちゃん、すごい贅沢〜。
それにしても、このしっとり感はなんなのでしょう。『ジャッキー・ブラウン』はカラッとしてたのに、えらい湿気ですな〜(笑)。
いや、しかし上手い。ゆったりと時間を使っているところがいいですね。ブライド(ウマ・サーマン)の復讐劇なのですが、一人に時間をかけ、たっぷり復讐しているのでゆったり感が出るのでしょうか。よくわかりませんが。私はこのたっぷり、ゆったり感が気に入りました。
ウマ・サーマンはもちろん、ルーシー・リューがよかったです。彼女が「タタタタタ」と目にも止まらぬ速さで走って・・・・というところがあるのですが、あれ、本人が走ったの?すごい敏捷ですね。カッコよかったです。

高知松竹2 2003/10/25


  [うえ↑]



   
 
スイート・シックスティーン
母との距離は三千里、愛しき16歳
SWEET SIXTEEN
監督:ケン・ローチ|脚本:ポール・ラヴァティ(2002年 イギリス・ドイツ・スペイン 106分)
リアム:マーティン・コムストン|ピンボール:ウィリアム・ルアン|シャンテル(姉):アンマリー・フルトン|スーザン:ミッシェル・アバークロンビー|ジーン(母):ミッシェル・クルター|スタン:ガリー・マコーマック|ラブ(祖父):トミー・マッキー|カラム(甥):カラム・マッカリーズ

うううう、ケン・ローチ、またしても傑作です。傑作ゆえにラストシーンが、つらかった〜。
先日見た『シティ・オブ・ゴッド』の登場人物と私との間には、心の距離があったので、登場人物がいかに悲惨な状況にあろうとも割合平静でいられました。ところが、こちらの映画では、私の心は主人公のリアムのそばにあったので、非常につらかったのであります。

この映画では、もうすぐ16歳の少年リアムとその母と姉、そして、親友ピンボールとの関係が、イギリスの地方の町を背景に生き生きと繊細に描かれています。(祖父との関係は、けっこう笑えます(汗)。『おばあちゃんの家』を見て感動した人には、この映画のこの爺をぜひ、ご覧いただきたいな〜。)
15歳といえば親が疎ましく思えるお年頃ですが、リアムの場合は、母と離れて養護施設で育ったせいか、母親が恋しくてたまらないのです。彼のまぶたの母は、麻薬の売人スタンに脅され言いなりになっている弱い人。「スタンから母ちゃんを守らなければっ」と思いつつ、「母ちゃんと姉ちゃんと甥っ子カラムと、みんなでいっしょに暮らすんだっ」と奮闘しているリアムが頼もしくて可愛くて涙ぐましいです。

リアムとピンボールとはいっしょにタバコを売ったり女の子を眺めたり。二人は、麻薬を売って危ない橋を渡っても実にくったくなく、いかに悲惨な状況で生活していても、いっしょにいると笑いが絶えない少年同士だったのです。リアムは図太いところがあるけど、ピンボールは線が細くてね〜。それでも、リアムがこてんぱんにのされているのを見たら、迷わず助けにすっ飛んで行く「まぶだち」なのです。それが、あんなことになって・・・・、胸がかきむしられる思いがしましたわ。
そのうえ更に、まぶたの母の実態を知るわけでして(涙)。このお母さんは、悪人ではないのです。リアムが思っていたとは別の意味で弱い人であって、お母さんも可哀相な人なのです。でも、もっとリアムが可哀相。う〜ん、リアムには麻薬の売人という悪い仕事をしていても、子どもの純粋性というか溌剌として黄金の輝きがあったのですが、その輝きが失われて行くのが胸に痛いし、ラストの余韻は尋常ではありませんでした。
姉のシャンテルのことについては書きませんが、シャンテルは観客にとっても救いの女神です。

それにしても、話の背景が緻密に描かれているのは、特筆したいところです。英語を話しているはずなのに英語に聞こえないところとか。失業と麻薬とで荒んでいる様子とか、姉のシャンテルが社会福祉制度の恩恵を受けているらしいところとか。あと、さすがイギリス、人殺しの道具は銃ではなくてナイフです。アメリカとはちがうのねん。
あんまり麻薬の売買が盛んに行われているので、私はだんだん公然の秘密のような気がしてきていましたが、売っているのが見つかって「彼女には子どもがいるのよ!そんな人にまで売っていいと思ってるの!」とリアムが非難されたときは、「ああ、リアムは姉に麻薬を売っているも同然なんだ。すんごく悪いことをしているんだ。」と目が覚めました。こういうふうに抜かりのない脚本、素晴らしいです。

おしまいに。
この映画は、リアムが16歳になった朝のどんよりした空の下、灰色の波打ち際で終わります。はじめにも書きましたが、つらいラストシーンです。
それにもかかわらず、「スイート・シックスティーン」とはどういうことでしょうか。「ビター(苦い)」「ハード(つらい)」「へヴィー(苦しい)」16歳の少年に対して「スイート(甘い、優しい、楽しい、美しい)」とは皮肉でしょうか。
うんにゃ、ケン・ローチは、金持ちや政治家などに皮肉を言うことはあっても、つらい思いをしている少年には言わないと思います。ここは、やはりリアムのつらく苦しい姿が、本当に美しく愛しいと言いたいのだと思います。「君は精一杯やった。誕生日、おめでとう。スイート・シックスティーンだよ。」

シネマ・サンライズ 高知県民文化ホール(グリーン) 2003/10/25


  [うえ↑]
ホームサイトマップサイト内検索リンク自由|byお茶屋(連絡先)