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■かるかん>嗤う伊右衛門|ミステリアス ピカソ 天才の秘密
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嗤う伊右衛門
「なんじゃ、なんじゃ」
監督:蜷川幸雄|原作:京極夏彦|脚本:筒井ともみ(2003年 日本 2時間8分)
伊右衛門:唐沢寿明|お岩:小雪|伊藤喜兵衛:椎名桔平|直助:池内博之|又市:香川照之|宅悦:六平直政

おもしろかったです。お岩のキャラクターがすごくいいです。顔に瑕があるからといって「なめたらいかんぜよ」という自尊心の強さと、「結婚など出来ぬわ」という投げやりなもろさを併せ持ち、直情径行なところが子どもっぽい純粋さを思わせ、愛しては激しく、身を引いては潔く、伊右衛門への思いの深さはいじらしい、たいへん魅力的なキャラクターです。
顔に瑕があっても美しく見えるのは、演じた小雪の佇まいや表情がいいからでしょう。『ラスト・サムライ』とは全く違う役柄で、こんな役も出来るのかと驚きました。
唐沢寿明の伊右衛門は、充血した目とやつれた感じがよかったです。目といえば、直助役の池内博之。この人の目が暗闇で鋭く光を放っていました。すごい眼力です。

お話は今までの四谷怪談とは違って、相愛の伊右衛門とお岩を喜兵衛が邪魔をするというもので、私は原作を読んでないので新鮮でした。二人の思いがダイレクトに伝わってきて、なかなかの恋愛映画でした。
ただし、さっぱりわからなくて残念なところもありました。おそらく原作は、エピソードが豊富で人間関係が複雑なのでしょう。それをうまく脚色できてないのではないかと思います。


●ネタバレ感想
台詞がよく聴き取れなかったので私の勘違いかもしれませんが、終盤の山場で伊右衛門が喜兵衛に、「母への思いゆえに・・・」と言うところがあるのですが、なぜ、ここで喜兵衛の母への思いを云々するのでしょう?喜兵衛ってマザコンだったの?突然、母の話が出てきて目が点になりました。
それから伊右衛門が又市に「岩は私の・・・・・」と言いかけたのを又市が「わかっています。それ以上言いなさるな。」と制するのですが、「わからんぞーーーー!!!!言ってくれーーー!」と胸内で叫んだのは私だけでしょうか?その時なぜか、私はお岩は伊右衛門の娘なのか(うっそー!)と思ってしまったのですが、自分でもそう思ったわけがわかりません。
また、ささいなことですが、伊右衛門は再婚した相手に「二つの選択肢がある」と言っていたのに、突然、斬り殺したのはなぜ?
ラストシーンで民谷家の遠縁の若者が伊右衛門の家にやって来ますが、いったい何をしに来たの?

このように疑問だらけなのですが、伊右衛門とお岩の愛においては筋が通った映画だったので、私はたいへん満足しました。

あたご劇場 2004/2/11


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ミステリアス ピカソ 天才の秘密
天才に怖いものなし
MYSTERE PICASSO
監督:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー|撮影:クロード・ルノワール|音楽:ジョルジュ・オーリック(1956年 カラー・パート白黒 スタンダード+シネマスコープ フランス 1時間20分)
パブロ・ピカソ|アンリ・ジョルジュ・クルーゾー|クロード・ルノワール

4月からのピカソ展(ジャクリーヌ・コレクション)のプレイベントとして開催された、日比野克彦さんのピカソ・トーク+映画の上映会へ行って来ました。満席の大盛況。日比野さんのトークも映画もたいへん面白かったです。
自称「ピカソの前座」の日比野さんは、うじきつよしに似ていました、なんてことはどうでもよくて。ピカソ・トークというよりワークショップ(創作工房、体験講座)のようで、日比野さんが絵を描く様子をプロジェクターを通して映写したり、紙を曲げたり切ったり動かしたり、お客さんの協力を得て影絵を作ったり、実演しながら創造するとはどういうことか、ピカソは何を考えながら絵を描いていたのか、そういう話をしてくれました。

映画は、ためらいなく描かれる1本の線から始まります。一筆書きのようにスルスルと簡単に一枚の絵が出来あがります。私はこの映画を見るまではピカソを天才と思ったことはありませんでした。好きでもありませんでした。ピカソの絵は、力強くゆるぎないので、全勝優勝を続ける横綱のように可愛げがない(笑)。ガラス細工のように繊細な輝きを放つゴッホの絵がよほど好きでした。しかし、この映画を見てしまったからには、好きでなくても天才と言わざるを得ません。天才は悩まないのです。嬉々としてどんどん描きつづけます。おーーーっと、ここらあたりで止めておけばいいものを、という時点を通りすぎてもどんどん描き進んで行きます。だから、絵が過剰になって、ついには壊れて行く。それでも、まだまだ描き続けます。こういう創作の過程を見せてもらうと、私は何てビクビクしながら絵を描いていたのかと思います。ここをこう描けばバランスがよくなるとか、自分の絵を自分の思いどおりに描きたいというのは、凡人の限界でした。ああしたいとか、こう描きたいとか、そんな思いからも自由なピカソの辞書には、「試行錯誤」という文字はないでしょう。まさに日比野さんがおっしゃっていたとおり、ここをこんなふうに描けば次はどうなるだろう、こんなふうに描いたら次はこうしたくなっちゃったというふうに(行き当たりばったりで)描いているように思えます。1本の線をためらいなく描ける、一筆書きのように簡単に描けるというのは、熟練すれば誰でも出来ることかもしれません。しかし、前に描いたものを気にせず(創造したものを壊すなどという意識的な言葉はふさわしくありません。)、常に先へ先へと筆を進めて行く自由な精神は、なかなか持ち合わせることが出来ないのではないでしょうか。その点、子どもはみな天才かも。

ピカソが絵を描くところを見せるという単純な映画ながら、たくさんの工夫がされているところもよかったです。
誰もいないのに、キュッキュッキューというペンの音とともに線が延びていって絵が出来あがるのをどうやって撮影したんだろうと思っていると、描いている絵の裏側から撮影している様子を種明かししてくれたり。(このとき、ピカソの表情が映るので楽しそうなのがわかる。パンツ一丁の姿で描いているのもわかる。インクが一升瓶に入っているのもわかる。)
映画的魔術により、あっという間に描きあがったかのように見える油絵については、「5時間かかった」とちゃんと一言あったり、枝のような単純な線から出来あがっていく作品を今度はフィルムの逆回しで始まりの線だけにしたり、牛と闘牛士の絵では、それらしい音楽など。他にもいろいろな工夫がされていました。
そして、おしまいには、ピカソの大きなサイン。この映画へのピカソのサインなんですね〜。
ピカソも映画もすばらしかったと思います。

日比野克彦さんのHP

高知県立美術館、高知新聞社、RKC高知放送 県立美術館ホール 2004/2/13


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