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麦の穂をゆらす風
ロマンチストはリアリスト

この映画を観るのは2回目です。2回目も同じことを思いました。理想や目標を見失うととんでもないことになると。

およそ理想を求める人はロマンチストではないでしょうか。「想像してみて。天国も地獄も国境もないと。争いもなく皆平和に暮していると。僕を夢想家と思うかもしれないけれど、僕だけじゃない。君も加わって皆が想えば世界は一つになれるんだ。」
ジョン・レノン自身が「僕を夢想家(dreamer)と思うかもしれないけれど」と言っているように、理想を求める人は夢追い人でロマンチストだと思います。だけど、理想を実現したいと思うのは、現実を知っているからこそなのです。
この映画の脚本家ポール・ラヴァティは、「理想家やねぇ。」とか「ロマンチストやねぇ!」とか言われたことがあるのじゃないでしょうか。そして、そう言われるたびに「僕は現実主義者だ。」と言い返したかったのではないでしょうか。

まるで目の前で出来事が起こり、人物が実在しているようなリアリティにぐいぐいと引き込まれ、それゆえにズズーーーンと深く重い感動を覚え、しばらく席を立てませんが、愚かな人間を断罪しない、そして、絶望とは無縁の作品です。

 

●ネタバレ感想

 

何のために戦うのか
デミアン(キリアン・マーフィー)は、処刑される前夜、「誰と戦うかは簡単にわかるが、何のために戦うかは容易にはわからない。今、ようやくわかった。」というようなことを言います。ということは、それまでは何のために戦っているのかわかってなかったということでして(汗)。
要するにそれまでは、イギリスの支配下から脱するために戦っていたのでしょう。ところが、ようやく英軍を追い出したと思ったら、今度は身内のアイルランド人が英軍と同じようなことをしだしてので、何のために英軍を追い出したかわからなくなって、よぉーく考えてみたら、「そうだ!子どもを飢えさせないためにこそ戦うのだ」と気がついた、ということだと思います。

何のために戦うのかを映画の始めからわかっていたのは、デミアンにとって父のような存在だったダン(リーアム・カニンガム)でしょう。アイルランド共和国裁判所の判決で高利貸が有罪になったとき、テディ(ポードリック・ディレーニー)は高利貸の拘束を解き、その資金で対英国戦の武器を調達しようとしますが、何のために戦うのかわかっていたダンはテディに反対します。
テディは、何のために戦うのかわかってなかったです。彼は英国支配から脱して自治が認められさえすればよかったのです。自治といっても英国に成り代わってアイルランド人を支配する立場になっただけのように描かれていましたけど。テディよ、それでよかったのか!?

兄と弟の逆転劇
テディは、独立戦争を戦うリーダー格として登場し、デミアンからすると尊敬すべき兄でした。実際、拷問に耐え抜いたり、地主に対峙するときなんかカッコイイ。一方、弟のデミアンは、独立戦争から逃げ出してロンドンの病院で医師になろうとしていたくらい争いが嫌いで弱々しいです。それでも、兄の身代わりになろうとしたりして勇気と判断力と愛情がある可愛い弟です。それが、先の裁判のあたりから兄と弟の道は別れていくのです。

ひ弱だったデミアンも色々経験してテディと対等になりました。「条約批准は間違っている」と言うデミアンに「お前は夢想家だ」と言うテディ。それを受けて「僕は現実主義者だ。兄貴こそ現実を見ろ!」と返します。
内戦になったら敵味方(涙)。
医師であるデミアンは、栄養失調の子どもを診ているので、英国支配を脱しても変わらぬ庶民の貧しさをなんとかせねばと思うようになります。現実を見ているデミアンの方に分があるような感じになってきて、ついにラストではデミアンが立派に見えて、テディがとても小さく見えます。
デミアンは理想をつかまえたし、立派になったからどうでもいいけど・・・・・(?)、理想を見失い道を誤まったテディが哀れで哀れで(涙)。

デミアンの妻シネード(オーラ・フィッツジェラルド)に遺書を届けるテディ。シネードに二度と顔を見せないでと言われます。これはデミアンが幼なじみのクリスを処刑したとき、クリスの母親から言われたセリフに重なります。いったい、いつまで同じことを繰り返すのか。仲間同士で殺し合う。それほど私たちってバカなのか。天を仰ぎたくなりますね。

3回目の感想

シネマ・サンライズ 高知県立美術館ホール 2007/3/15
 
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