心拍数２００を超えるとハルクとなって、自らを制御できぬまま怒り狂い破壊し、愛する人をも傷つけてしまう。そして、ハルクを増産して人間兵器としたいアメリカ軍にはとことん追われる。ブラジルに潜み、恋人の写真を傍らに緑の血を治療する方法を模索するブルース・バナー（エドワード・ノートン）が可哀想で可哀想で（涙）。やつれて陰りのある表情が痛々しく、しっかり鍛えられた身体が妙においしく（笑）、軍に見つかり逃亡するアクションも手に汗握らされ、エリザベス・ロス（リブ・タイラー）は可愛く、ブロンスキー（ティム・ロス）は怪しく、ロス将軍（ウィリアム・ハート）は深みのある悪役で、登場人物の心模様が丹念に描かれているため泣きそうになりながら「これは傑作だ！」と見ている間も心中叫んでいたのでありますが、やってしまいました。ラスト３０分の腰砕け。残念でなりません。

●ネタバレ感想

どうやらブロンスキーとハルクの対決がこの映画の売り物なんですね。それなら、ブルースが血液を中和する前にブロンスキーを暴れさせたらよかったのに。待ち望んだ血液の治療を取るか、ハルクとなって街を救うためブロンスキーと戦うかという葛藤の場面を入れるのです。で、辛うじてブロンスキーに勝ったものの、治療のための血清は戦いに紛れおじゃんになっていたということにすれば続編も作れるわけです。
一度、治っていたものをハルクとなれるかどうかも不確かなまま、あんな自殺行為をするなんて不自然で一気に白けてしまいました。

面白かったのはパンツ。前作の公開時には、ハルクになったとき（巨大化のゆえ）洋服は破れて裸なのにパンツだけはいているのは変だと話題になりました。
私は実はパンツも破れたのだけれど、映画の方便でパンツをはかせているのであって、実際はパンツもはいていないと解釈して見るのが正解！と吹聴したものでした。
ところが、今作ではパンツをはいているわけをしっかり描いておりまして、上記の私見に修正を加えることとします。すなわち、「初めてハルクになったときは巨大化は予期してなかったわけだから、その時に限って実際はパンツもはいていないと解釈して見るのが正解！」。

面白かったですー！起承転結、ハッキリくっきり。楽しかったし、シーフー老師とタイ・ランの親子（師弟）関係の問題なんかも描かれていてよかったです（オビ・ワンとダースベーダーを思い出しました）。景色も中国らしいし、カンフーも細かい動きまでアニメ化していたように思います。
稽古を積んだ最後の仕上げが自信を持つことというのは、カンフーだけに言えることじゃないし、伝えたいことが明確でいいですね。
キャラクターは、シーフー老師がよかったな。弟子に応じた稽古の付け方をするところ、指導者はこうでなくっちゃ（笑）。

うん。面白かったですよ〜。一点の曇りもない作品です。
宮崎駿監督は、世界の破滅も人類の繁栄も子供次第と考えているように思います。地球の未来は子供次第なんだから、子供には明るく元気に自由に育ってほしいと思っているんじゃないかな。まあ、誰でもそう思っているでしょうけど、宮崎監督の場合、明るく元気で自由な子供というときは「未来少年コナン」のコナンやジムシーが定番で、宗介のようないい子チャンにはちょっと弾けてもらいたいと思っているはず（？）。

「海水魚のはずのポニョを淡水に漬けて大丈夫ってどういうこと？」とツッコミを入れるような子供は、もうこの映画の対象ではないでしょう。うちの甥が園児だった頃、「大きくなったら何になりたい？」とたずねると「メロン！」と答えていました。そんなことから考えると、小さな子供には海水魚と淡水魚の区別なんて無問題。さらに言えば、生物の種や性別なども無問題。宗介が人に対すると同じレベルで魚を好きになってもＯＫだし、元魚の女の子を好きになってもイイ。同性の男の子を好きになってもいいはずです。これを自由と言わずして何と言いましょう。
おそらく、この作品は子供の観点からの自由を描いているのだと思います（？）。

この映画の趣旨からすると、ポニョは男の子でもよかった（あるいは宗介が女の子でもよかった）はずですが、なぜ、女の子か。それは宮崎監督が女性が好きだからなんですね〜。
自由奔放なポニョも、しっかり者の働き者のリサも、包容力のある海の女神も宮崎監督が持っている女性のイメージだろうと思います。

それにしても「走る」というのは、とても映画に適していますね。うねりのある海を、波頭を渡りながら大好きな宗介を追いかけて走るポニョにはワクワクしました。音楽も「ワルキューレの騎行」もどきで盛り上がるし（笑）。ポニョは元の名前をブリュンヒルデといったので、「ニーベルングの指輪」の話にどこか絡めてあるのかもしれませんね。