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クローンは故郷をめざす
怖くない怪談
監督:中嶋莞爾/日本/2008年/110分

絶え間ないせせらぎの音やしょうしょうとした霧、無音の宇宙空間など詩のような世界が広がっていた。
宇宙でのリスクの大きい仕事のため、記憶のバックアップ込みのクローンとして再生する保険を掛けていた耕平(及川光博)は、蘇ったときクローン1号としても2号としても同様に故郷をめざす。それは、故郷での根源的な記憶を辿らないことには、もとの完全な耕平にはなれないからのように思える。
クローンとしては不完全だった1号が廃屋となった故郷の家で死んでいる。その亡骸を見つけた2号は、どんな思いであったろう。私は幼い頃、事故で亡くした双子の弟とクローン1号を重ね合わせているのではないかと思った。耕平は自分の分身を何度亡くしたことになるのか。えーと、オリジナルの耕平を含めると・・・・、あ〜、オリジナルは含めなくていいのかな・・・・、ややこしいので数えないことにしよう(笑)。
というわけで、主人公を双子にした意味が効いていると思った。クローン2号は1号の亡骸を見つけたことにより、双子の弟の死を追体験し、これで耕平として安定できると思った。

今、公式サイトへストーリーの確認に行ったら、1号は自分の死体を弟だと思って故郷に運ぶとあってビックリ。私は空から降ってきた宇宙服の人物は、オリジナルの耕平の魂を具現化したものであって、1号とともに故郷をめざしているのだと思っていた。1号は記憶障害があるから(子どもと同じ)、自分にそっくりな人物が何者かもわからず、でも、とにかくいっしょに連れて行かなければと、ほとんど本能的に背負っていったと思っていた。だって、大気圏外から燃えもせず落ちてくるってあり得ないし・・・・。う〜む、はやり詩だ。この映画は詩として鑑賞すべきなんだ!と今さら考え直す気も起こらないので、観た当時の感想を続けるけど。

宇宙服の耕平(魂)は、いささか心許ない1号を2号が来るまで見守っていたと思った。そして、弟の死を追体験した2号に、まるで記憶の刻印のように(オリジナルが弟を亡くした際の傷痕と同じ)傷が手に浮んだとき、オリジナルの魂が入ったと思った。(オリジナルの魂が入ったから傷が浮かんだと思った。)
これでラスト近くに、故郷の家の庭先からガラス戸を閉めようとうする母親に、時空を超えた魂が「お母さん!」と呼んだとき、呼んだのは1号なのか2号なのかオリジナルなのか、それとも弟なのかわからなくなった。
思ったのは、死者は生者を見守り、時として思わず声を掛けると作り手が言っているようだということだ。
幼い子を亡くした母(石田えり)の嘆きを無音にしたのがよかった(涙)。

自由民権記念館 2009/9/11
 
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