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戦場でワルツを
「バシールとワルツを」のバシールってアイドルみたいなもんだって?
監督:アリ・フォルマン/イスラエル、フランス、ドイツ、アメリカ/2008年/90分|原題:WALTZ WITH BASHIR

冒頭、ギラギラ目を光らせた犬の群が暴走する場面が最も恐ろしかった。夜の海を独りで逃げるのも怖かった。生き残った兵士が後ろめたい気持ちを募らせるのは、特攻隊員の体験談や原爆を生き延びた『父と暮らせば』の主人公と同じだと思った。光と影の色調やバーの壁にボブ・ディランの写真が貼ってあったり車の窓ガラスに映った装甲車が流れていったりと細かいところの描き込みなど絵画的な美しさにも魅せられた。

このアニメでは、戦争にかり出された兵士たちの戦後数十年経っても続く苦しみ(嫌な記憶は忘れたり、書き換えられたりすること)が描かれている。また、当時の彼らが、敵地に入ったというだけで恐怖に駆られて銃を乱射した結果、民間人が犠牲になった様子も描かれているので、自ずと侵攻された側の苦しみもわかる。戦車で移動する際、平気で車や建物を壊して行く様子が客観的に描かれていて、作り手は侵攻された側の視点も相当に意識していると思う。つまり敵味方のどちらの立場に立っても、戦争というのはろくなことがないことが描かれている。更に、レバノンのファランヘ党がパレスチナ難民を虐殺するのを、イスラエルが黙認したことを告発するという内容にもなっていて驚いた。

淀川長治さんが「映画は学校」「必要なことはすべて映画から学んだ」というようなことを言っていたと思うけれど、私もこの映画から少々の知識を得た。イスラム教徒ばかりだと思っていたレバノンにキリスト教徒で組織されたファランヘ党という親イスラエルの政党があって、党首(?)バシールが大統領(?)になったとたん何者かに暗殺されたとは。これで多分内戦状態になったのではないかと思うけれど、ファランヘ党は内戦を勝ち抜くためイスラエルに味方して欲しくてパレスチナ難民を虐殺したのだろうか?そこのところがよくわからなくてモヤモヤするし、ファランヘ党がキリスト教徒ということはアラブ人じゃないってこと???アラブ人だけどキリスト教徒???というのも気になる。少しばかり知識を得たために疑問が増えた(たはは)。

疑問といえば、この映画の主人公アリは、結局パレスチナ難民虐殺の場にいたのかどうか。泣き叫ぶパレスチナの女性が押し寄せてくる。アリは彼女たちに対峙して息を切らせている。この場面は実際にあったことではなくて、アリが記憶の書き換えをしてしまったということなのだろうか。命令とはいえ黙認することで虐殺に荷担してしまった罪悪感が見せたイメージなのか。アリは記憶を取り戻す旅路に出たはずなのに、記憶は戻らないままなのか、書き換えられてしまったのか、それともあれが取り戻した記憶なのか、やっぱり本人にもよくわからないのではないだろうか。ただ、パレスチナ難民の虐殺は確かにあった。「その証拠がこれだ」ということで、ラストは実写にしたのではないだろうか。

それにしても最大の驚きは台詞の中とはいえディヴィッド・ボウイが出てきたことだ。暗殺されたバシールが男性に対してもセックスアピールがあったとかどうとか。アイドルみたいなもんという例えにボウイが出てきたんだけど、もっとメジャーなアイドルはたくさんいるだろうに、なぜ、ボウイなのか。ボウイ好きとしては思わず「そこんとこ詳しく!」と思ってしまった(笑)。

シネマ・サンライズ 高知県立美術館ホール 2010/3/11
 
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