ロゴ
・映画情報→ ・上映中&予定 ・カレンダー ・グループ ・ピックアップ
・趣   味→ ・くりからもんもん ・鬼の対談 ・ベスト・キャラ ・かるかん
space
[←もどる] [すすむ→]



 
暗闇愛好家 ムービーレポート


萌の朱雀

奈良の吉野の山の緑や畑やバス停、民家。井戸やかまど、ちゃぶ台。家族そろっての朝ご飯。ゆったりと流れる時間。昭和30年代生まれの私には懐かしい暮らしだ。いつまでもそんなに暮らしていけたらいいけれど、家族は離れ離れに暮らすことになる。田舎の暮らしを捨てざるをえない現実を批判するでなく、ある家族の十数年を淡々と描いただけで、自然の中で暮らすことの至福とそれを失うとことの寂しさが胸に染み込んでくる。『萌の朱雀』は観る人それぞれが様々な思いをめぐらせることになると思う。そして、観た人の胸には例外なく、吉野の山の緑が安らぎと一抹の寂しさを残すだろう。


リング/らせん

『らせん』は『リング』の続編だけど、それぞれ独立した1本の映画と言っていいほど趣が違う。『リング』は心霊によって再生する女の話、『らせん』はDNAによって再生する男女の話ともいえる。どっちが怖いかといいうと『リング』。なかなかのホラーぶりだ。でも、『らせん』は息子を失った男(佐藤浩市)が切なくてちょっとしたドラマになっている。どっちに軍配をあげるか、誰かといっしょに観て意見が分かれると、話が弾んでおもしろいと思う。




これはちょっとした拾い物です。今をときめくバレリーノ熊川哲也の「舞い」が観れるのです。滞空時間が長い!しかも彼、なかなかの役者です。キザな覆面DJ役も様になっているし、思いを伝えたいマジな演技もグー。羽田美智子もさわやかで、小気味のよい恋愛映画です。


ラブ&ポップ

ちまたで話題の援助交際とはいかなるものか。援助交際に関心のある人は、老いも若きも女も男もこの映画を観ればよろし。監督の趣味なのか、カメラアングルが凝っていてちょっとエッチ。主人公の女子高生は私には愚鈍に見えた。涙を見せたってとてもあいまいな涙。傷ついているんだったら心から泣け!(←大泣きせよとの意味ではない。)自分の傷の深さにも気が付かない愚鈍な十代。でも、怒るよりも同情すべきなんだろうな。何が彼女の感覚を麻痺させているのか。映画はそこまで描いてないけれど、外界と自分とのつながりが希薄で現実味をなくしている、主人公を覆う皮膜のようなものがよく描けていたと思う。


SADA

大林監督がまたしても笑わせてくれる。純愛映画には違いないけど、おかしいでっせ(笑)。映画的技巧に走りすぎ。やっぱ哀しさや切なさがないと純愛が引き立たないのではないでしょうか。黒木瞳が"ぶりっ子"映画に拍車をかけた。退屈しなかったです。


HANA−BI

97年ベネチア映画祭で金獅子賞を受賞したけれど、それほどの感動作ではなかった。『キッズリターン』の方がいい。『HANA−BI』は作りすぎという感じがする。でも、北野監督のスタイルは健在で、観るに値する映画であることは間違いない。クライマックスは駅での銃撃戦で、この場面が一番主人公に感情移入できて胸が痛かった。「死を意識してこそ自覚的に生きることができる」というのは、心ある作家は避けて通れないテーマで、ヨーロッパの映画祭向きだったのだなあ。




「愛する人のために犠牲になる」古くて涙もんのお話。とても丁寧に作ってある久々の大人の映画。しかし、「こんな時こういう行動はとらんだろう」という不自然なところが多々あり、ほころびが目立つ。特に主人公を追う立場にありながら主人公に同情する刑事の描き方があいまいなのが最大の欠点。欠点をあげればきりがないが、よいところもたくさんあるので「おしい」「もったいない」感が強い。『誘拐』といい『絆』といい、東宝は映画らしい映画を作る。


ジューンブライド 6月19日の花嫁

結婚式を前にして記憶喪失。記憶を取り戻したはいいけれど、それ以前にも2度も記憶を失っていた。おいおいおい、少女漫画でもそこまではしないよ(^^;。でも、これがミステリー仕立てで面白かったんです。しかも私が好きな斉藤由貴や南野陽子が出てるんだもん。それに椎名桔平がいいわーーー!椎名人気に乗れなかったわたくしも、ようやく桔平の良さがわかりました。いかにも安手のドラマですが、どうせ誰に期待されるわけじゃなし(笑)。私はこういうチープな映画の味方です。


PERFECT BLUE

「もう自分のことがわからない」「一秒前の私と今の私、どうして同じだとわかるの?」R指定の日本アニメ。以上の情報をチラシで得て劇場に馳せ参じたれば、なななななんと密度の高い、脚本のしっかりしたサイコサスペンスなんでしょう!かたずを飲んで観ていた高校生を始めとする満座の観客が、上映直後ほっとしたあまり漏らしたため息がどよめきとなって劇場に沸き上がりました。娯楽映画の一級品。こんな映画を子どものうちから観ていると、大人になってから楽しみがなくなるからね。大人になってから観ましょう。(生き延びてこそ「楽しみ」がある。)


以上、日本映画にしぼってのレポートでした。実はグリーナウェイの『枕草子』とジョン・ウーの『フェイス/オフ』が大変気に入ったので書きたかったのですが、書こうと思っているうちに締め切りを過ぎてしまいました。残念。
『大いなる遺産』いいですねえ!あんまりよくて 3回も観てしまいました。いろんなジャンルの音楽を効果的に使っていて陶酔させてくれます。PULPの曲もよかった〜。うるうる。

(1998年8月号)


  [うえ↑]



ホームサイトマップサイト内検索リンク自由|byお茶屋(連絡先)