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暗闇愛好家  ムービー・リポート



今年の夏は夏というにふさわしく、青い空に白い雲、雨が降らずば気温も下がらず、ああ・・・・太陽がいっぱいだ。暗闇愛好家は映画館へ批難するのであった。それにしても今年は豊作、めでたいな〜。




◎アダムス・ファミリー2、愛の風景、トゥルー・ロマンス、○めぐり逢えたら、クールランニング、◎秋菊の物語、◎友だちのうちはどこ?、そして人生はつづく、ミセス・ダウト、○カリートの道、怖がる人々、ピアノ・レッスン、イン・ザ・スープ、◎少年機関車に乗る、フィラデルフィア、ヨーロッパ・ヨーロッパ 僕を愛した二つの国、◎リトル・ブッダ、父の祈りを、わかれ路、オルランド、天使にラブソングを2、張り込みプラス、春にして君を想う、◎サテリコン、フィオリーレ、800RUNNERS、デモリションマン



うれしがって、おもしろかったのをピックアップしてみました。○印は好きな映画、◎印はもう、この映画となら心中してもいい!(ホンマか?)

リトル・ブッダ(ベルナルド・ベルトルッチ監督)

シッダールタは生まれてすぐ歩き、歩いた跡には花が咲き、森の木々は頭を垂れる。シアトルの港を見下ろす丘の上、ヒュルンヒュルンと飛んできて「あっ」という間に家が建つ。あと、菩提樹の下で悟りを開いたシッダールタに襲いかかる欲望だか悪魔だかの象徴(悪夢のような海と空)。これらのシーンを見て、ベルトルッチがスピルバーグしてるー!となんだか快い笑いがふつふつとおなかの底から湧いてくるのであった。インタビューなどで「仏教に興味があった」「あらゆる世代の子供に見てほしい」などとすましているけど、黒澤明が『八月の狂詩曲』で原爆の目を作ったように、ベルトルッチもよっぽどSFXを使ってみたかったんだと思うよ。映画としてはラマ僧に貰った絵本を物語るインドの部分が美しく生き生きしている。高僧の生まれ変わりという子供、ジェシーのいるシアトルの部分も青く静かでまずまず。でも、生まれ変わりの話に懐疑的だったジェシーの父親がブータンへ行く気になったのは説得力に欠けるし、高僧の生まれ変わり候補が急に増えたのも変。ブータンへ行ってからは話が理屈っぽくなった。全般的に脚本が甘いな〜。しかし、ベルトルッチはベルトルッチなのだ。映画に酔わせてくれる監督はそういない。今回はフルーツポンチ味で、アルコール度は確かに低い。それでも3時間があっという間の楽しさ美しさだった。阪本龍一の音楽がでしゃばらず映像にぴったりで心地よかった。


暗殺のオペラ/ルナ/1900年/暗殺の森/ラストエンペラー/シェルタリング・スカイ

それは高校2年、土曜日の昼下がり、放課後の教室での出来事だった。宿題をしていたのか、お昼を食べてダベッていたのか忘れたが、友達が「ジェームズ・ディーンのくちびるは官能的だ」と言った。するともう一人の友達も「そうだね」と言って同意した。えーっ?官能的?何やらいんびな響き。どうして二人ともそんな言葉を知ってるのー?これが忘れもしない「官能」という言葉との出会いであった。先日、『ディーバ』のパンフレットを読み返すと、精神的な官能性を感じると河原晶子が書いていた。テネシー・ウィリアムズも映画が好きだったらしくて、小説に映画を見ることの官能性をいささかえぐいがとてもうまく表現している。まあ、言葉の解釈はいろいろあるでしょうが、ベルトルッチの映画=官能的と言いたかったわけ。映像は吸い付くようにぬめらかで、ひんやりとしているけれど冷たすぎず、時間の流れが穏やかで、その気持ちのよさたるや月の光を浴びながら波にたゆたうクラゲの気分だ。(『シェルタリング・スカイ』は胸が痛すぎるけどね。)


ラスト・タンゴ・イン・パリ/殺し

ところが、上の2本に関しては悲しいかな、つまらんかった〜。友人Aの言うことにゃ、『暗殺のオペラ』も『ルナ』もあんまりおもしろくなかったそうで。(何たることよ、ベルトルッチの映画で私が一番好きな『暗殺のオペラ』を十数年来の親友にかくも悪し様に言われようとは・・・・うるうる。尼寺へ行きます。)要するにビデオで見たのがいけなかった。と私は言いたい。ベルトルッチはスクリーンで見てこそベルトルッチなのだ。



●二匹目のどじょうを審査する。

天使にラブソングを2(ビル・デューク監督)
前作で知り合った尼さんの頼みでデロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)は再び尼僧の出で立ちで高校生に音楽を教えることになる。これが絵に描いたようなスポ根もので、やる気のない落ちこぼれ高校生に音楽のハートを教え、コンクールで優勝し、閉鎖されようとしていた学園も無事存続。まあ、言ってしまえば先は見え見えなんだけど、歌はいいわ踊りはあるわで、エンドタイトルまでとても楽しく気持ちよく見られた。母親に歌では生活できないとコンクール行きを禁じられた歌手志望の女の子、リタ・ワトスン(ロウリン・ヒル)が可愛いのなんの。「作家になれるかなんてきくな。君が書くことが好きで書き続けたなら、君は既に作家なのだ。」デロリスがかつて母から貰ったリルケの言葉をリタに贈る。まさかリルケが出てくるとは思わなかった。


張り込み  プラス(ジョン・バダム監督)
R・ドレイファスとE・エステベスのコンビが息もぴったりでおかしい!前作みたいにハンサムな犯罪者が出ていないのは残念だけど、女検事が傑作だった。犯罪界の大物を裁判にかけようとしているが証人が殺し屋に狙われている。逃げ出した証人が友人夫婦のところに来るだろうと踏んで、その夫婦の隣家で女検事を交えて張り込みをするというストーリー。みんな声を上げて笑っていた。『天使にラブソングを』も『張り込み』も更なる続編を作ってほしい。


メジャーリーグ2(デイヴィッド・S・ウォード監督)
選手からオーナー、アナウンサーにそのアシスタントまで前作のキャラクター健在。ただ、応援団がインディアンの格好を止めたのは残念。ネイティブ・アメリカンから抗議でもあったのかな?リック(C・シーン)が富と栄光を得たため野生児からやさ男に変身。ピッチングも骨抜きになる。そこからどう立ち直るかが今回の最大のポイントだったのに、ジェイク(T・ベレンジャー)に喝を入れられただけで簡単に元に戻って、あー、つまらん。もう、続編は結構よ。



●しぶい映画をチェックする。

父の祈りを(ジム・シェリダン監督)
『マイ・レフト・フット』の監督。冒頭のギルフォードの爆破シーンで否が応でも「はっ」とさせられ引き込まれる。ベルファストでの暴動シーンは臨場感たっぷりの迫力。最後までほとんどすきのない演出だった。IRAのテロリストと間違えられて逮捕され、裁判でも無罪。検察は無実と知りながらそれを放置した。驚いたことに一族十数名が有罪判決を受け、十数年の刑期を務めあげた。獄中にあっても希望を捨てず控訴の嘆願書を書き、やがて病気で衰弱していく父親を見て、反発していた放蕩息子が心を入れ替え再審請求を決意する。同じ監獄に入れられた親子関係が主軸なのだが、再審に臨む人々の冤罪に苦しんだ顔を見ると怒りが込み上げてきた。実話を映画化した監督の思うつぼだったわけね。


わかれ路(マーク・ライデル監督)
『黄昏』『フォー・ザ・ボーイズ』の監督だから見に行った。こんな地味な映画に客席が埋まっているのを見て驚いた。多分、女性はリチャード・ギアを見に、男性はシャロン・ストーンに何かを期待してきたのでしょう。『天国の日々』『ジャック・サマースビー』に続いてR・ギアの自然な演技に感心。妻(ストーン)と愛人(ロリータ・ダヴィドヴィッチ)の間で、どちらを選ぶか迷いに迷う情けない男を好演している。「悩める男を見て何がおもしろい」というアクション指向の方にはお勧めできないけど、凝った結末の短編小説がお好きな方には行けるかも。「彼女に決めた!な〜にを迷っていたのだろう」という喜びの後に来る出来事に、詩的な映像のせいもあってこの世の無常を感じさせられた。ライデル監督は信じるに足る。味わい深い映画だ。



●日本映画を斬る!

『超能力者 未知への旅人』 警察に引っ張られたり、会社に利用されたり教祖にならないかと誘われたり、突然超能力者となった人に何が起こるか面白く見られた。東映は『ノストラダムス』も公開予定。ヤクザ路線をやめてこの路線に変えたのか。上岡龍太郎に怒られるゾ。

『RAMPO』 (奥山編)映像はきれい。乱歩の作品をアニメーション化したり、ポルノまがいのフィルムを映画中映画にしたり次から次へと興味を引く展開で退屈はせず。呼びもののサブリミナルなど感じず。見世物としてはおもしろいが感動は与えてくれず。

『女ざかり』 カット割り細かくテンポが速く、芝居臭さのない現実的な会話の演出よろし。吉永小百合扮する新聞記者が論説委員となって正義の健筆をふるい、政治家ともなあなあの男社会を鋭くつくかと思いきや、大物政治家に口を利いてもらい自らの窮地を脱するという拍子の抜けたもの。小百合さんは『細雪』以来の演技賞もの。
 
(1994年9月号)


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