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個人的影響


映画の影響とは恐ろしいもので、衆議院議長の土井たか子さんが法学部に進学したのは『若き日のリンカーン』に感激したためだとか、ジョディ・フォスター狂いの青年が『タクシードライバー』をまねて大統領を狙撃しただの、最近では『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』に毒されて恋人の血をすすった人もいましたね。かくいう私もいろいろ影響を受けております。

まずは、中学生の頃、学校の廊下でやったジェリー・ルイス歩き。膝を伸ばしたまま大股で歩き、角を曲がるときはバイクで曲がるときのように上半身をおおげさに倒して曲がる。知らない人が見たら萩本欽一だと思うかもしれないが、あれは断固ジェリー・ルイスだったのだ。(『アリゾナドリーム』でジョニー・デップのおじさんをやってた人。)その頃テレビで彼とディーン・マーチンのコンビによる底抜けシリーズをよくやっており、大いに笑わせてもらったので敬意を表したのであった。ディーン・マーチンが二枚目でジェリー・ルイスが三枚目。ルイスが面倒を起こすのにマーチンが付き合う。切っても切れないコンビネーション、というわけ。

次は『風と共に去りぬ』でおなじみのビビアン・リー 。ポートレイトを見ても彼女の片方の眉は糸でつりあげたようになっている。それが悲劇的で美しかったのでさっそく真似をした。しかし、両方の眉を上げるのは簡単だが、片方だけとなると難しい。片方上げたつもりでも、つられてもう一方も上がってしまうのだ。そこで私は山羊座生まれの地道な努力家という特性を発揮して練習に練習を重ねた。甲斐あって片眉をつりあげることが出来るようになり、今では多くの男性に悲劇的で美しいとささやかれるまでになった、というのは嘘である。(前半はほんとう!)

雑誌などの広告にシドニー・シェルダン作、オーソン・ウェルズ朗読の「追跡」を聴いて英語をマスターしようというのがあるが、私はそのレコードを持っている。それはジョディ・フォスターが『白い家の少女』の中でスペイン語だかポルトガル語だか知らないがレコードで学んでいたのを真似たのである。だから「追跡」はレコードでなくてはならなかった。扱いが簡単でもカセットテープなど邪道なのだ。ところで、山羊座が地道な努力家というのは真っ赤な嘘だ。もし本当なら、今ごろ私は英語なんかペラペラのはずだもんね。

『スケアクロウ』では短気で疑り深いが憎めないマックス (ジーン・ハックマン)が大好きだ。でも、初めて見た中学生の頃はひょうきんで争いが嫌いで繊細すぎて精神錯乱に陥ってしまったライオネル(アル・パチーノ)の方がちょっと見もよくて好きだった。ライオネルは時々放心状態になって宙を見るような瞳になる。『タクシードライバー』のトラビス(デ・ニーロ)はコップの水に落とした錠剤があぶくを出して溶けていくのを放心したように見つめていた。私が現在仕事中にもよくぼんやりしているのは、この二人を真似しすぎた後遺症だ。何も考えず、あるいは何かを考えてぼんやりするのはとても気持ちがよい。図書館の静かな閲覧室で緑にしたたる雨をいつまでもながめるなんてのが最高ですね。でもって、図書館にはコートにえりまき姿のモノクロ天使がたたずんでいたりするのだ。

『都会のアリス』の主人公の青年は日々虚しく風景写真ばかり撮りながら旅をしている。(旅行記者だったっけ。)彼に生きる力が湧いたとき初めて人物を撮る。それがこぶのようにくっついて旅をしてきた少女アリス。重要な小道具のポラロイドカメラが欲しくなり買ってしまった。『シェルタリング・スカイ』ではキット(デボラ・ウィンガー)が被っていた赤いベレーが印象的で帽子屋に飛び込んだ。壁一面額縁というのが外国映画ではよくあって「ようし、あれやってみよう」と額縁を集め始めたり、映画の影響で散財することも多い。

修学旅行で上京し国会議事堂を目の前にしたとき、ゴジラが出てきはしないかと一刻も早く立ち去りたかった漫画家の山岸凉子さん。日本の山並みを見ているとゴジラが来そうで怖いと言ったアメリカ人留学生。山でバカでかいシダが密生しているところを通るときは、やっぱり恐竜が心配。胃痛がすると、もしやエイリアンではとおののく。映画の見すぎと言われたことはあるが、新聞沙汰になるような影響はなく、人生を左右するような大きな影響もない。もっとよく考えたら結構深く影響されているかもしれないけどね。

(1995年7月号)


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