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■ひきだし>バレエ(ダンス)覚書>ノートルダム・ド・パリ |
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牧阿佐美バレエ団の「ノートルダム・ド・パリ」を見てきました。24日の日本人キャストの踊りを楽しみにしていたのですが、森田健太郎(カジモド)は早い段階から出演しないことになっていたし、フェビュスを踊る予定だった菊地研は群舞に回ってどれが彼だかわからなかったし、残念でした。(キャスト等は、下の表をご覧ください。) お話は、醜く虐げられカジモドが、エスメラルダによって初めて人の情けを知るけれど、エスメラルダはフェビュスを殺した罪(実は二人に横恋慕したフロロが犯人)で処刑され、真実を知ったカジモドは、彼の主人であり育ての親でもあるフロロを殺すという涙涙の悲劇です。そのはずなのですが、公演全体としては、悲劇的な盛り上がりに欠けているため、たいした感動はなく誠に残念でした。 しか〜し、収穫はありました。ノートルダムの司教代理フロロ役の小嶋直也、カッコイー!踊りに切れがあって美しいです〜。エスメラルダのタンバリンの音が耳にこだまして煩悩に苦しむ様子とか、カジモドを完全に支配している様子、フェビュスへの嫉妬に燃える様子、そして、エスメラルダを意のままにしようと邪悪なパワーを発する様子など入魂の演技です。特に邪悪なパワーは、これ、ぜったい黒魔術をやってるねというくらい。 司教代理という堅い職業なもので、禁欲的に直立不動でいることが多いのですが、その微動だにしない彼の身の回りに渦巻く煩悩が見えるかのよう。見事な悪役ぶりでした。 それに、カーテンコールのときも普通に挨拶するだけなのにカッコイイんですよ〜。どうして!? もう一つの収穫は、二つの場面です。 一つは23日(夜)の一幕の終りの方、エスメラルダ(ラカッラ)とフェビュス(ドゥガラー)の踊りにフロロ(ペッシュ)がところどころで割り込むという3人の踊りの場面。 フェビュスはその前の場面で裸になっていて、エスメラルダはこの場面で服を剥ぎ取られ裸になり、裸の二人が踊るのにフロロが嫉妬するのはむべなるかなといった感じなのですが、ここでのラカッラが滅法エロチックなんです〜。踊りがしなやかで色っぽくて、それにフロロが割り込んで行くものだから、エロチックなうえにスリリングでなんだかドキドキしながら見ていました。 もう一つは二幕の初めの方、エスメラルダ(ラカッラ)とカジモド(ベランガール)の二人の踊り。 美しいエスメラルダの前で自分の醜さが身にしみるといった感じのカジモドが、彼女の優しさに束の間、自分の醜さを忘れ二人いっしょに踊ります。踊り疲れたエスメラルダが横になると、カジモドは優しく優しくゆりかごのように彼女をゆすって、彼女は安心して眠ります。そして、カジモドにとって夢のひとときは終わるのです。 この場面がね〜、よかったですね〜。眠りについたエスメラルダの後ろに立ったカジモドは、せむしに戻り、右肩が硬直し、膝は曲がります。この一連の動作と同時に、照明が彼だけを照らし、暗闇と静寂の中でただ独りの姿が浮き上がるのです(涙)。 ラカッラは、踊りがしなやかで綺麗でとてもよかったのですが、エスメラルダがどういうキャラクターかはよくわかりませんでした。初登場場面では、フロロを挑発するかのような色気のある踊りでカルメンみたいに男を翻弄する女かと思えば、フェビュスとの踊りでは、はじめ花も恥らう乙女的な踊りだったし。 ベランガールは、純粋そうでたいへん可愛らしいカジモドでした。もっと醜く、もっと可哀相だったらよかったと思います。 ペッシュは、冷たいフロロでした。上手に踊っているのですが、なんだか味気ない感じがしました。 ドゥガラーも上手だけど、兵隊の隊長であるフェビュスがどういうキャラクターかはよくわかりませんでした。ジプシー女たちと戯れる場面があるので(この場面で裸になる)、けっこう軟派なキャラクターなのかもしれませんが、ドゥガラーはとても品行方正に見えたので、お戯れのシーンに違和感がありました。 上野水香は、やさしく可愛らしいエスメラルダでした。あんまり色気はなくて、踊りも発展途上という感じです。噂どおりの抜群のプロポーションなので、あとは美しく踊れるように精進してほしいと思います。 群舞は、二幕の処刑前の踊りがよかったな〜。上手から下手へ数人ずつが次々と踊って行くのが、スピード感があり、それぞれ色んな技が振りつけられていて迫力がありました。 音楽は『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』などのモーリス・ジャールなのですが、「ノートルダム・ド・パリ」は初めて聴いただけでは耳なじみする音楽ではありませんでした。暗く重厚なので、明るく軽く華やいだ音楽が恋しくなります。だから、「ノートルダム・ド・パリ」の後に「デューク・エリントン・バレエ」を上演するのは、よい企画かもしれません。「デューク・エリントン・バレエ」も見たかったな〜。 2003/08 |
■ローラン・プティの世界「ノートルダム・ド・パリ」 音楽:モールス・ジャール|衣裳:イヴ・サン・ローラン|振付:ローラン・プティ|装置:ルネ・アリオ Bunkamuraオーチャードホール |
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登場人物 | 8月23日(土)夜 | 8月24日(日)昼 |
カジモド | ジェレミー・ベランガール | ジェレミー・ベランガール |
エスメラルダ | ルシア・ラカッラ | 上野水香 |
フロロ | バンジャマン・ペッシュ | 小嶋直也 |
フェビュス | アルタンフヤグ・ドゥガラー | アルタンフヤグ・ドゥガラー |
その他 | 牧阿佐美バレエ団 | 牧阿佐美バレエ団 |
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