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■ひきだしバレエ(ダンス)覚書>Kバレエ・カンパニー「海賊」(2007)


Kバレエ・カンパニーの「海賊」、高知と香川の公演を観てきました。素晴らしかったー!特に高知公演。初めて観たのが高知だったせいかもしれませんが、舞台が輝いておりました。主演のみなさんだけでなく、群舞のみなさんを含めて踊りがよかったです。特に女性ダンサーは、柔らかくきれいな踊りで浜辺で踊るギリシャの少女たちからして魅せられました。キャスト等は下の表をご覧ください。

●踊りと演技

踊りで一番気に入ったのはグルナーラ(荒井祐子)。たおやかで色っぽい〜〜。匂いのある踊りなんですよぉ。奴隷市場で競りに掛けられるところなど、再三、床に片膝と片手をついて打ち伏す場面があるのですが、思わず助けてあげたくなると同時に妙にそそられるのですねぇ。パシャを拒否する仕草も「おやめください」って、たおやか〜。艶めかしいとまではいきませんが、可憐な色香があるのです。やっぱり「海賊」はこうでなくっちゃ。「海賊」って私の男心をくすぐるなぁ(笑)。
ちなみに松岡梨絵さんのグルナーラは、「もう、やめてっ」「触らないでってばっ」というふうに、拒絶反応が現代的でした。あとメドーラ(松岡梨絵)が、コンラッドと遭遇するシーンは、一目会ったその日から恋の花咲くお二人さんの感じがよく出ていました。踊りは上手ですね〜。

次はもちろんアリ(橋本直樹)。重力を感じさせない跳躍力。なんと軽々と高く飛ぶことでしょう。しかもマネージュって言うのですか?ジュテをしながら舞台に大きく円を描くの。キレとスピードがあるものだから、上手の端の端から飛び始めて円が大きい大きい。香川県民ホールの舞台が大きいので、アリは香川の方がより興奮させてくれました。
それにしてもこのアリは、根暗で抑圧された感じがしますね〜。って、もともと主人を立てて、命令には絶対服従の人だから、そういうものかもしれませんが、何か言いたいことがあるのに言わない感じがします。(比較:ゼレンスキーの昨年12月のアリは、なんか偉そうでした。ルジマトフのDVDのアリは、無心で清らかそうでした。)

メドーラ(吉田都)はとても優しかったです。コンラッドとの出会いも慎み深い感じでした。でも、第一幕の市場では彼女を競り合うお金持たちがロリコンに思えるくらい少女に見えました;;;。パンフレットでは都さんはインタビューに答えて「メドーラという女性はエキゾティックで若々しくセクシーで、今まで私が踊ったことがない匂いの役柄だと言える。それに動きの一つ一つが大きくてダイナミックな熊川さんの振付も私はまだ慣れてないところがあるので、とにかく自分としては、今までの吉田都の殻を破って頑張らねばと思っています。」と言っておりました。それを読んでいたので「う〜ん」という感じて観ていたのですが、第二幕の有名なパ・ド・トロワではみごとにエキゾティックで若々しく、かつ、大人の女性の美しさがありました。アダージョでは本当にうっとり(涙出た)。コーダでは会場は大興奮(手拍子出た;;;)。ワタクシもすっかり熱くなりました(手拍子はしませんでした)。

ランケデム(輪島拓也)の踊りは、ちょっと硬めでしょうか。香川の方が調子がよさそうでした。金持ちには、すっごく愛想がよくて、海賊や女奴隷たちには邪険。なんか嫌なヤツ〜(笑)。海賊はともかく女奴隷は商品だから、もうちょっと優しく扱ってもよさそうに思いますが、一番キャラクターが立っていたと思います。
高知のビルバント(ドゥー・ハイ)は、こじんまりしているけどシャープできれいな踊りでよかったです。香川のビルバント(ビャンバ・バットボルト)は、荒々しさがあって海賊らしかったかな。
コンラッド(スチュアート・キャシディ)は、存在感がありますね。その存在感を生かして、私はキャシディさんのビルバントを観てみたいなぁ。熊川版はビルバントがかなりワルですから、ダースベーダーくらいの存在感がほしいんですよ〜。

あとは物乞い(小林絹恵)が、柔らかい〜。可愛い〜。アクロバットな振付が楽しい〜。
有名なパ・ド・トロワの前のパ・ド・トロワ(神戸里奈、前田真由子、副智美)、チャーミング〜。ただし、高知でも香川でも第3ヴァリエーションが、もう一つだと思いました。なぜかと考えるに、第3は音楽のスケールが大きいのです。だから、スケールの大きい踊りじゃないと、音楽負けしてしまいます。女性のパ・ド・トロワですからね〜。第3を踊る人はちと損だという気がします。

●演出、美術、結末について

熊川さんの演出は大変よいと思います。
幕が開いて紗幕(地中海(?)を行く船の絵)の向うに揺れる男たち。いかにも船に乗った感じで左右に揺れているのがイイ!暗転して次に現れたのは船を襲う船。チャンチャンバラバラの後、金銀財宝や積荷を奪う海賊です。奪ったかと思えば嵐に遭遇。どぼん、どぼんと溺れる者あり、マストは折れ、瞬く間に難破船となりました。と短いプロローグに詰め込みました〜。オーケストラの演奏もいいから、すごく盛り上がりワクワクしました。海賊船のほかにもう一隻船を出すところが大盤振る舞い(笑)。第二幕でも小舟で洞窟に入っていく場面があるのが、ぜいたく〜。この演出で第二幕第一場は洞窟であるとハッキリわかります。船、合計三隻!

第一幕第二場の奴隷市場を競りにしたのも面白かったし、コンラッドが金持ちに化けて競りに紛れ込んでいるのもグッドアイデアだと思います。
市場の場面は、物乞いの踊り、コンラッド、アリ、ビルバントの3人の踊り、アリとランケデムの踊りが挿入されていました。女衆のお臍を出した艶めかしい踊りはあっさり目にして、男衆の出番を多くしたようです。楽しかったので異議なし。

おしいのは、第二幕第二場のパシャのハーレムです。舞台の装置は地味ですし、背景の照明を落としているため空間に広がりがありません。夢の娘たちの衣装もウエストから下が切れ切れになっていて、あまり美しく見えなかったし、振付もフォーメーションも印象に残るものがありませんでした。
それに終盤になってあのような悲劇は、能天気娯楽バレエにふさわしくないような気がします。エピローグの二人の船出を手放しでよろこべず、苦いものが残るもの。
これまでの「海賊」は、筋もキャラクターも結構いい加減だけど楽しい作品でしたが、熊川版はキッチリ方を付けたために最後になって苦味が残るという感じです。高知で観終わったときは、結末を変えてほしいとさえ思いました。
でも今は、カーテンコールが苦味を吹き飛ばしてくれるから熊川版は熊川版でよしと思うようになりました。

ツアーの途中、熊川さんが怪我で降板したのは残念でしたが、初めてKバレエ・カンパニーの舞台を観て、よいバレエ団だと思いましたし、機会があれば是非また観に行きたいと思いました。がんばれ、Kバレエ!

 
■「海賊」全2幕

音楽:アドルフ・アダンほか|原振付:マリウス・プティパ|改訂台本、再振付、演出:熊川哲也|美術、衣装:ヨランダ・ソナベント、レズリー・トラヴァース|指揮:福田一雄|演奏:シアターオーケストラトーキョー
6月7日(木)高知県立県民文化ホール、6月9日(土)香川県県民ホール
登場人物 6月7日(木) 6月9日(土)
メドーラ 松岡梨絵 吉田都
コンラッド スチュアート・キャシディ
アリ 橋本直樹
グルナーラ 荒井祐子 松岡梨絵
ランケデム 輪島拓也
ビルバント ドゥー・ハイ ビャンバ・バットボルト
海賊の男たち ビャンバ・バットボルト、田中一也 ドゥー・ハイ、ニコライ・ヴィユウジャーニン
物乞い 小林絹恵、アレクサンドル・ブーベル 小林絹恵、小林由明
パ・ド・トロワ 第1ヴァリエーション:神戸里奈、第2ヴァリエーション:前田真由子、第3ヴァリエーション:副智美 第1ヴァリエーション:東野泰子、第2ヴァリエーション:樋口ゆり、第3ヴァリエーション:長田佳世
鉄砲の踊り 浅川紫織、鶴谷美穂、木島彩矢花、ビャンバ・バットボルト、田中一也 中島郁美、沖山朋子、山崎亜子、ドゥー・ハイ、ニコライ・ヴィユウジャーニン
ギリシャの少女たち/海賊の男たち/パシャの夢の中の娘たち/トルコ軍/市場の住人たち/女奴隷たち/金持たち Kバレエ・カンパニー


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