恋の罪

園子温監督作品は、登場人物の性質や考えを誇張して描いているのがとても面白い。『恋の罪』も信じられないくらい無垢な菊池いずみ(神楽坂恵)が全裸で「試食いかがですか?おいしいですよ。」と連呼するところや、尾沢志津(大方斐紗子)と尾沢美津子(冨樫真)母子の毒々しい遣り取りに、いささか引きつつも面白がれたのは、「そんな人いないけどいる(人を裏返したり、まぜくり返したりし、底の方を取り出したりしている)」感じがするからだろう。

何も知らないいずみ(イブ)に知恵の実を与える美津子(ヘビ)。その二人のドラマを日常から観ている吉田和子(水野美紀)。そんな作品だったように思うが、これまで観た園作品と比べて迫ってくる力がないように思う。作り手の情熱が感じられない。詩と言葉と体験の講釈や、ゴミ袋を持ったまま収集車を追いかける主婦のエピソードなど作意が前面に出てきてしまった気がする。言い換えれば、私にとって『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』は、作品の勢いによって小難しい作意を目くらましされていたということだろうか。

監督:園子温
(2012/03/10 あたご劇場)

「恋の罪」への2件のフィードバック

  1. お茶屋さん、こんにちは。
    本日付の拙サイトの更新で、
    こちらの頁をいつもの直リンクに拝借したので、
    報告とお礼に参上しました。

    「作り手の情熱が感じられない」「作意が前面に出てきてしまった」
    共になかなか手厳しい指摘ですが、言い換えれば、の後が凄い!
    これまでの作品のほうが
    「勢いによって小難しい作意を目くらましされていた」
    に過ぎないってんだから、痛烈だ!(笑) いやはや感心!

    どうもありがとうございました。

  2. あはは、痛烈でしたか(笑)。
    そんなつもりはなかったのですが。
    リンク、サンキューです。
    女性好きの園監督、次はどんなキャラクターを登場させるのでしょう?楽しみですね(?)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です