アルコールとバレエ

バレエ公演に行くと、幕間にシャンパンやワインなどいただくのはよろしいですね。ワタクシ、そんなことはほとんどしたことがないペットボトルのお茶派なのですが(笑)。

ところで、アルコールが似合うバレエDVDというのがありまして。
その名を「エッセンシャル・バレエ/ロシア・バレエのスターたち」といいます。
前半はロンドンのコヴェントガーデン王立劇場、後半はモスクワの赤の広場(特設ステージのよる野外コンサート)のライブ録画となっております。
コヴェントガーデンのものは、今は亡きダイアナ妃の御前公演で、なんとなく冬向き。赤の広場の公演は野外ですから夏向きでビールなんか飲みながら見ると楽しいだろうなーと思います。

日本でも毎年、軽井沢かどっかで野外のバレエ公演があるらしいですが、赤の広場の公演はどうなんでしょー?毎年かどうかはわかりません。
しかーし、このお客さんのこなれ具合!指笛は鳴らすは、ヒューヒュー言うは、絶対アルコール入ってるね(笑)。

特設ステージに通常のオーケストラピットは設けられていません。ステージ上に壇を設けその上で演奏しています。
オーケストラの壇(オケ壇)は人の背丈より高いかな?(それほどではないか?)指揮者はダンサーを背にするわけですから大変です(?)。
それに、にわか舞台ですから、ジャンプするたびに着地音が激しいです。

おもしろいのは、オケ壇の真ん中に隠しカメラがあることです。このカメラの足元アングルで、前景にステージがあって、ステージの前方にダンサーがいて、ダンサーの向こうに観客がいて、そのまた向こうに青空が広がっているのが気持ちいい~!
時間が経つにつれて空の色が変わり、暮れなずんでいく様子も、なんともいえない風情があります。
観客席の後方から舞台を向いたカメラもあって、赤の広場をぐるり写してくれたりしてとても綺麗です。

このDVDの野外公演が大好きでもう何度見たことか。
でも、まだアルコール付きでは見てないので、夏も終わりの今夜あたりやってみますかね(笑)。

パリ・オペラ座DVD「白鳥の湖」

ヌレエフ版です。
まず、演奏が遅いのにビックリ。でも、ゆっくりだったのは序曲だけかな?すぐに「音楽がよいと飽きないなぁ」とチャイコフスキーに感謝(笑)。

ヌレエフの振り付けは、ステップが細かくて、おそらく生で見ると群舞は足音なんかしてせわしない印象があると思われますが、DVDだとそういう印象は緩和されます。フォーメーションなども美しく変化して、映像の撮り方もよろしく上々でありました。
しかし、何と言っても一番の特徴は、家庭教師(実はロットバルト)でありまして、王子を精神的に支配している様子が悪魔的でなかなかよろしうございました。カール・パケットを初めてカッコイイと思ったし。やっぱり悪魔は美形に限る(笑)。
それにしても、ロットバルトの動機がよくわかりません。オデットを白鳥に変え、王子が彼女と出会うようにしむけたうえ、偽オデット(オディール)で騙し、二人の仲を裂くとは。何か王子に恨みでも???王子をおもちゃにしているの?永遠の愛などないと言いたかったのでしょうか?

パリ・オペラ座の舞台は、いつも美術や衣装が洗練されていて見事だと思います。ヌレエフ版では、セットがあっさりしていましたが、衣装は流石。色彩の統一感や豪華な質感などはいつもどおりでした。

踊りはちょっと物足りなさが残りました。ロシア・スタイルに慣れたせいでしょうか。どこがどう違うかわからないのに、違うんですよね~。ロシア系は全身を極限まで(余裕を持って)使っているような感じがするんです。群舞に至るまで。
ちょっとコンディションが悪いまま見てしまったのがいけなかったのかなぁ。2幕あたりからダレちゃって(^_^;。改めてゆっくり見直したいと思います。

ジーザス・クライスト・スーパースター

昨晩、遅い時間に見始めたので眠くならないかしらと思いましが、ぜんぜん。
おもしろかったー!感動しました。
おまけのメイキングは、まだ見てないのですが、パッケージによりますと2000年のブロードウエイのリバイバル上演をベースに映画化したとのことで、まるっきり映画でした。舞台公演を撮影したものと勘違いして買った私は粗忽者。でも、カメラが舞台に乗り込んでいったという感じなので、映画と言えども演出も演技も舞台のものです。
1973年(ノーマン・ジュイソン監督)の作品が大好きなので、どうしてもそれと比較していまいますが、何が違うかって、俳優がみんなマッチョ(笑)。73年版は、みんなガリガリだったけど、こちらは見事にムキムキです。
イエスはテッド・ニーリーよりもグレン・カーターの方が声量、声質ともに豊かで幅があり、高音の伸びに余裕があります。でも、お顔が明るすぎ。
ユダはカール・アンダーソンよりジョローム・プラドンが魅力的。なかなか色っぽい御仁でして。少し鼻にかかった声も色っぽい。
マリアはイヴォンヌ・エリマンはおとなしめでしたが、こちらの名前がまだわかりませんが、結構激しいです。マリアとユダはこちらの火花バッチバチの方が断然面白いです。
ピラトーは、73年版でも『最後の誘惑』(マーティン・スコセッシ監督)でも演じた俳優が、繊細そうに見える体型でいかにも霊感が強そうな感じでしたので、私にはピラトーはそういうものだという刷り込みがあったのです。そんなところへ、こちらのマッチョなピラトーは・・・・、あの体型で「こんな夢を見た~」と涙ながらに歌われても(^_^;。そのギャップのいいのでしょうか???
俳優は皆さん舞台向けの濃い演技でしたが、オペラですから~。ぐいぐい引き込まれました。
それと、一にも二にもユダ=ジェローム・プラドンですね。パッケージの「キリスト最後の7日間。裏切り者ユダの魂の叫びを聞け!」には、うんうんとうなずくばかり。
舞台の演出ではあまり目を引くところがなかったのですが、ユダの首に巻かれていたロープが、いつの間にかイエスの手を縛っているという流れがよかったです。
また、イエスの鞭打ちのところ。鞭を打つ格好で次々と赤い絵の具をなすりつけていくのですが、音がつきますから本当に打たれているみたいで、身体が赤く染まっていくのが「血だわ~」でして、痛々しかったです。『パッション』(メル・ギブソン監督)を思い出してしまいました。
このDVDには大満足ですが、観ながら73年版の演出は素晴らしいと改めて思うシーンがいくつもありました。
特に映画の撮影に砂漠に訪れた浮き浮き気分の若者たちの表情が、撮影後、ロケバスに乗り込むとき、どんなに変わっているかというのが、また面白いんですよね~。
73年版、また観たくなりました。

舞踊公演>2月大阪松竹座

2月13日に観た玉三郎、菊之助、海老蔵の舞踊公演の感想です。
●連獅子
歌舞伎と言えば連獅子というくらい、二匹の獅子が紅白のたてがみをぐるぐる振り回す様(毛振りと言うらしい)は一般化したイメージだが、ちゃんと観たのはこれが初めてだ。
次のような三部構成となった舞踊で、とても面白く3の部分では感動した。
1 狂言師の右近と左近が手獅子を持って踊る
2 法華僧と浄土僧のコミカルな遣り取り
3 親獅子と子獅子の舞
3の部分は、親獅子が子獅子を谷に落とし、子獅子が這い上がるという物語で、疲れた子獅子が谷底で休憩中、そうとは知らない親獅子がどうしたものかと心配する場面がある。この場面は俳優によって様々な演じ方があるのではないかと思う。
海老蔵の親獅子は、大変な心配のしようであった。子供の力量の見定めができていないせいか、性急であり、もう死んでしまったかとすぐに思ったようで、嘆きようが深い。この親獅子は若く、おそらく初めての子供なのだろう。若い親獅子の真に迫った嘆きように思わずもらい泣きしてしまった。
もし、團十郎が親獅子なら、子獅子(海老蔵)を多少の心配はしながらも「そのうち猛烈な勢いで駆け上がってくるぞ。」と余裕で待っているのではないかと想像すると面白い。ぜひ、團十郎、海老蔵親子で観てみたい。
連獅子のフィナーレは、待ってましたの毛振りだ。
海老蔵は始めから猛烈な勢いで振り回していた。最後までこの勢いが続くのかというと、続く。おそらく始めから終わりまでスピードを落とさず回し続けるというのが海老蔵が自分に課した任務だ。がむしゃらで美しいとは言い難いけれど、海老蔵らしく熱いオーラを発していた。
子獅子の右近くんは大変賢い。初めはゆっくり振り回し、おしまいになるほどスピードを上げていく。だから、最後になるにしたがい、どんどん盛り上がっていく。振り方もたてがみが円を描くようで美しい。
毛振りの場面ではどちらが親かわからないなどと言われていたらしいが、海老蔵はちゃんと親に見えたし、右近くんは子に見えた。若い親獅子が観れてよかったと思う。
京鹿子娘二人道成寺と長唄については、また今度。