幻影師アイゼンハイム

欺されて爽快。
映画も手品も欺されて嬉しいお茶屋にピッタリ。
警部(ポール・ジアマッティ)、あなたもそうですね。真相が閃いて「やられた!」と振り返る嬉しそうな顔。その顔を見て私も心の底から嬉しくなった。

平民アイゼンハイム(エドワード・ノートン)と貴族ソフィ(ジェシカ・ビール)の身分違いの恋は、悲恋に終わるのが当たり前で、いと浪漫ちっく。警部の平民魂にも共感できる。
悪者皇太子(ルーファス・シーウェル)は冤罪なんだけど、それまで散々悪いことをしているから、同情の余地がなく、これまた爽快。
人を欺くならこの映画をお手本にしよう(^o^)!

THE ILLUSIONIST
監督:ニール・バーガー
(シネマ・サンライズ 2012/02/26 蛸蔵)

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

首相まで務めた母マーガレット(メリル・ストリープ)の老いと病に、涙目の娘キャロル(オリヴィア・コールマン)は何思う。見所はメリル・ストリープだけだろうと思っていたら、意識の混濁の境界線が上手く描かれていて思いのほか面白かった!自分が呆けつつあるのを自覚できているというのがにゃんとも!
格差社会創設(又は増強)の立役者の一人で、UK映画で良く言われたことがない人物ってことで浮かんだ感想は、「庶民の出だったの。知らなかった。」「紅一点だったのか。知らなかった。」「鉄の女は弱きをくじく。」など。
衣装の青、青。若手俳優から中高年俳優への移行に違和感なし。若手俳優、よかったよ。

デニス(ジム・ブロードベント)
若マーガレット(アレクサンドラ・ローチ)
若デニス(ハリー・ロイド)

THE IRON LADY 監督:フィリダ・ロイド
(2012/03/17 TOHOシネマズ高知3)

幕末太陽傳

居残り佐平次(フランキー堺)が、走る走る走る。遊郭の廊下を右へ左へ、階段を上へ下へ。そして、ラストシーンが素晴らしい!狭苦しい墓場から脱出して、海を左に画面の奥へ奥へ、タッタカターっとみるみる小さくなっていく。「まだまだ生きるんでい!」とうセリフも最高だ。痛快さに一滴涙が混じっているのがいい。声が割れて聴き取りづらかったけれど、きれいな映像で観れて本当によかった!

おそめ(左佐知子)
こはる(南田洋子)
高杉晋作(石原裕次郎)

監督:川島雄三
(2012/03/17 あたご劇場)

恋の罪

園子温監督作品は、登場人物の性質や考えを誇張して描いているのがとても面白い。『恋の罪』も信じられないくらい無垢な菊池いずみ(神楽坂恵)が全裸で「試食いかがですか?おいしいですよ。」と連呼するところや、尾沢志津(大方斐紗子)と尾沢美津子(冨樫真)母子の毒々しい遣り取りに、いささか引きつつも面白がれたのは、「そんな人いないけどいる(人を裏返したり、まぜくり返したりし、底の方を取り出したりしている)」感じがするからだろう。

何も知らないいずみ(イブ)に知恵の実を与える美津子(ヘビ)。その二人のドラマを日常から観ている吉田和子(水野美紀)。そんな作品だったように思うが、これまで観た園作品と比べて迫ってくる力がないように思う。作り手の情熱が感じられない。詩と言葉と体験の講釈や、ゴミ袋を持ったまま収集車を追いかける主婦のエピソードなど作意が前面に出てきてしまった気がする。言い換えれば、私にとって『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『ヒミズ』は、作品の勢いによって小難しい作意を目くらましされていたということだろうか。

監督:園子温
(2012/03/10 あたご劇場)