イップ・マン 葉問

さわやか~。
イップ・マン(ドニー・イェン)は立派だと思った。拳法の達人というだけでなく、何のための拳法なのか、技だけでは年を取ったときどうなるか、弟子を導く姿がよい。中国人を虫けらのように扱い、その拳法をバカにしている英国人ボクサーと闘い勝利するが、「今勝ったからと言って中国拳法がボクシングに勝るわけではない、その逆もまた然り。ただ、人間として対等であることをわかってほしくて戦った。」という。悪徳師匠の総元締め風にホン師匠(サモ・ハン・キンポー)が登場するが、それは拳法界の秩序を維持するためであり、ホンも英国人に上前をはねられながら侮辱に耐えていた。しっかりした娯楽作だけど、英国統治下の香港で中国人が如何に耐えたかが印象に残る。この映画の前編とも言える『イップ・マン序章』では、イップ・マンが日本軍に拳法を教えることを拒否したエピソードがあるらしいので、支配される側の誇りと気骨を描いた二部作なのではないだろうか。
ほとんど完璧といっていい人物像は鼻につくことがあるが、イップ・マンの場合はこんな人がいてほしいと心から思った。
葉問2 監督:ウィルソン・イップ
(2011/10/21 沖縄 桜坂劇場)

ソウル・キッチン

友だちは韓国映画だと思い、私はニューヨークが舞台と思い込んでいた。ドイツがこんなに人種のるつぼだったとは。
なんだかぼやけた映画だと思って観ていたけれど、催淫スパイスの効いたパーティあたりから可笑しくなって、観終わってからは大らかな映画を観たと不思議と満足感があった。おそらく、兄イリアス(モーリッツ・ブライブトロイ)、雇用人ルチア(アンナ・ベデルケ)、船を造っているおじいさんやバンドマンなどを分け隔てなく受け入れる主人公ジノス・カザンザキス(アダム・ボウスドウコス)の大らかな人柄がよかったのだと思う。また、彼らの集うレストラン、ソウル・キッチンが居心地がよさそうだったのもよかった。更に、包丁一本、さらしに巻かずに懐に入れてさすらう料理人シェイン・ヴァイス(ビロル・ユーネル)が、ウィスキー(?)をラッパ飲みしながら調理した皿も、教えてもらったジノスの皿も、どのお皿も美味しそうだったのもよかった。(気合いを入れて撮っていたと思う。)ジノスはギリシャ系の移民で、アメリカ発祥のソウルフルな音楽が好きで、ぎっくり腰をトルコ系移民の先生に治してもらう。彼の恋人ナディーン・クルーガー(フェリーネ・ロッガン)は中国人と浮気するし、これだけでも国際色豊かだ。うとうとしなかったら、もっと色んな国際色に気がついたかもしれない。ジノスにとって最も愛着のあるものはソウル・キッチンだが、私にとって愛着のあるものってなんだろう。そんなことを思いながら映画館を後にした。
投資家(ウド・キア)
SOUL KITCHEN 監督:ファティ・アキン
(2011/11/03 あたご劇場)

ステキな金縛り

いや~、じゅうぶん笑わせてもらった(^Q^)。142分は若干長いと思ったが、これだけ役者を使えば長くもなるか(?)。喜劇で大仰なアクションをされたとき、それが笑いや滑稽味につながらない場合「わざとらしい」と感じてしまう。その点、小佐野徹(中井貴一)、サイコー!!!安倍つくつく(市村正親)もよかった。
宝生エミ(深津絵里)
更科六兵衛(西田敏行)
監督:三谷幸喜
(2011/10/30 TOHOシネマズ高知7)

アジョシ

ウォン・ビン、かっちょいいーーー!!!憂いのある瞳がいいわ~。今後もウォン・ビンは、どんどん走ってもらいませう。可哀想な役柄ばっかり与えちゃって(願)。
これでもか、っちゅうくらい憎たらしい性悪兄弟(マンソク:兄(キム・ヒウォン)、ジョンソク:弟(キム・ソンオ))だから、退治するのに血祭り結構。多少のえぐみは我慢の範疇。白黒ハッキリの始末のつけ方は、いっそスッキリするかもね。だけど、この映画はやはり、寄る辺ない少女ソミ(キム・セロン)と無口なおじさんテシク(ウォン・ビン)の有機交流電灯が密かに明滅し合う様に心を惹かれ、少女とおじさんの不幸合戦みたいな境遇に胸が詰まり、おしまいには涙の防波堤が決壊することとなっているのがいいのだ。
(もう一人のアジョシ:ソミが万引きしたのを見逃す駄菓子屋のおじさんは、殺伐とした街で唯一ほっとするキャラクターだった。)
兄弟のカッチョイイ手下(タナヨン・ウォンタラクン)
THE MAN FROM NOWHERE 監督:イ・ジョンボム
(2011/10/29 TOHOシネマズ高知3)