ロゴ
・映画情報→ ・上映中&予定 ・カレンダー ・グループ ・ピックアップ
・趣   味→ ・くりからもんもん ・鬼の対談 ・ベスト・キャラ ・かるかん
space
■鬼の対談>ドッグヴィル



 
Movie Junkyが、6月17日に県立美術館ホールで上映した『ドッグヴィル』を鑑賞直後に、みわさんと話し合った感想をまとめました。


 
■■覚悟して見たけれど■■
line

(お茶屋)
いや〜、おもしろかったー。3時間が、あっという間。
覚悟して臨んだけど、思ったより体力気力を消耗せんかったねえ。


(みわ)
そうですね。あいかわらず後味はよくないけど、思ったより疲れませんでしたね。
だいたい、思っていたとおりの展開やったし、これまでの映画とくらべて、そこが弱かったかな。それで、カンヌでも無冠だったんでしょうかね。


(お茶屋)
そうね。グレイスは、どうせギャングの娘か情婦やろうと察しはついたもんね。
だけど、おもしろさは、これまでの作品に負けてないで。
それに、エンド・クレジットがボウイの「ヤング・アメリカン」やったろ〜!
もう、イントロ聴いただけで、やりー!って感じやったで(笑)。
それにしても、親子ともども傲慢やったねー。


(みわ)
お父さんは、権力を持ったら人々を支配して、ろくでもない方向へ行きがちの人々を方向づけちゃらんといかんという考え方で、グレイスの方は、あの人たちは弱いんだからろくでもない方向へ行っても許しちゃらないかんという考え方で、親子で議論しよったけど、どっちもどっちやろー(笑)。


 
■■心の平安■■
line

(お茶屋)
それにしても人を許すというのは、心の平安を保つにはえいね。
グレイスは、虐待されていても心の平安は保たれちょったろう?


(みわ)
そうですね。
虐待されて怒ったり、戦ったりしたら、もっとボロボロになっていたかもしれませんね。
でも、人を許すとかいうたら、その人より上に立っているような感じですね。


(お茶屋)
あ、なるほど。


(みわ)
でも、誰でもそういうところありますよね。
理不尽な人がおったとしても、この人には何を言っても無駄やと思って、何も言わんこととか。


(お茶屋)
えー!?私は、それがないき、もう、いちいち腹を立てゆうで。瞬間湯沸器。


(みわ)
そうなんですか?そんなに見えんけど。
なんか、あんまり怒らんような感じやけど。


(お茶屋)
雲の上をふわふわ歩きゆみたいな感じ?よく言われるけど(笑)。
忍耐強いきねえ、あんまり表面に出んみたいながやけど、ちょっとしたことでもむかっ腹立てゆうき、確実に寿命は縮まっちゅうで。


(みわ)
それじゃ、翌日まで腹が立っていたりします?


(お茶屋)
それが、ようできたもんで、忘れるがよね〜。


(みわ)
それじゃ、結果的にグレイスと同じでストレスが溜まらんがじゃないですか?


(お茶屋)
それが、溜まるがよぉ。次から次へと四六時中、腹の立てっぱなしやき!(笑)



  [うえ↑]
 
■■逃げることもできたのに■■
line

(みわ)
グレイスは、逃げることもできたのに、どうして逃げんかったがやろう。
首にドアベルを付けられて、あれはやかましいでしょう(くすくす)。
私やったら布でも詰めるのに(笑)。
どうして逃げんのかと思ったら、お父さんとあんな話してたんですね。


(お茶屋)
もう、意地になっちょったがやろうね。


(みわ)
虐待を受け続けるか、父親に捕まるか、どちらが嫌やったかというと父親に捕まる方が、より嫌と(笑)。
虐待を受けるのが嫌で逃げたら父親に負けたことになるから、逃げなかったんでしょうね。かなり頑固者ですね。お父さんに言われたとおり(笑)。


(お茶屋)
しかし、最後に町を燃やして、あれ、私、気持ちよかったなー(笑)。
もっとやったれー!と。映画やし(笑)。
だって、あんなに虐待されて、許されんでねえ。
町の人は、かなり悪いことをしよったと思わん?それでも許さないかんろうか?


(みわ)
いや、あそこまで許したらいかんでしょう(笑)。


(お茶屋)
そうでねえ!(ほっ)
もう、私でも皆殺しにしちゅうで。実際、そんなことしたら犯罪やき、やらんけど。
私が思うにヒトラーもあんな感じやったろうね〜。


(みわ)
狂った感じがということですか?


(お茶屋)
というか、グレイスは、町の人は悪い、まわりに害を及ぼすだけ、だったら害を及ぼす前に皆殺しという論理やったわけやけど、ヒトラーも同じような考え方でユダヤ人を虐殺したんじゃないかな〜と。


(みわ)
あ、なるほど。


(お茶屋)
まあ、グレイスが、焼き討ち皆殺しした時点で、彼女も弱い人になったわけやけど。



 
■■井の中の蛙■■
line

(お茶屋)
私はトムが理解できんのよね〜。
グレイスみたいな人って現実にもおりそうな感じやけど、トムみたいな人っておる?


(みわ)
いるんじゃないでしょうかね。
田舎で小さな夢を持って生きている人。
インテリやって言われて、自分でもちょっと頭いいと思っていて、皆を教化するのが自分の務めと思っている人。


(お茶屋)
う〜ん、頭、いいんですかね〜?


(みわ)
悪いでしょう(笑)。←即答
表面上だけで薄っぺらいし。


(お茶屋)
はははは、やっぱりぃ?

(みわ)
でも、自分で頭いいと思うのも無理ないですね。町には、チェッカーでいつも負けているベンみたいな人しかおらんわけやし。町の外へも出たことなくて、グレイスが来るまでよそ者は来んかったわけやし。井の中の蛙ですね。


(お茶屋)
アホな役やったでねえ。
グレイスのことを愛しているって、愛じゃないろー(笑)。
結局、欲望の対象でしかなかったんじゃないの?
ベタニーファンの私でも好きになれんかったわ。


(みわ)
グレイスを自分の計画に利用しよったわけやしねえ。トムも傲慢かも。
でも、グレイスはトムのことを好きだったと思いますよ。
トムが、救ってくれたわけやし、彼だけしか味方がおらんかったし。
まあ、おしまいの方では、グレイスに愛想をつかされていましたが(笑)。


(お茶屋)
う〜ん、トムはあまりにも自分のことをわかってないでね。主観でしか見てなくて、客観的に自分を見てないというか。ここまで自分をわかってない人っておるのかねえ。


(みわ)
おるでしょう。むしろ、そういう人の方が多いんじゃないですか?
わかってないな〜と思う人、いっぱいいますよ。


(お茶屋)
う〜ん、そうか〜。



 
■■中庸が肝心■■
line

(お茶屋)
グレイスは、しかし極端から極端へ行ってしまいましたね。


(みわ)
お父さんも「勉強しすぎたようだ。」って言いよったし。


(お茶屋)
社会の荒波にもまれて本当の苦労を身をもって知っちょったら、あんなにはならかんかったろうね。


(みわ)
ギャングのボスのお嬢様で苦労知らずで育ってますからね。頭の中だけで考えていたから、極端から極端へ行ってしまったんでしょうね。
トムもお父さんの年金で働かずに暮せて、小説家になりたいと夢を見ゆう人やき、頭でっかちなんですよね。
ギャングのお父さんの方が、世間を見ている分、まっとうかも(笑)。


(お茶屋)
この映画を見て、何事も中庸が肝心と思うたで。



 
■■隣は何をする人ぞ■■
line

(みわ)
だけど、見えないだけで隣で何やってるかわからないもんですね。
あの白線のセットで思ったことですが。


(お茶屋)
そうやね〜、西洋だと石で作った家やき、隣の様子がわからんかもね〜。
江戸時代の長屋なんか筒抜けらしかったもんね。


(みわ)
あ、でもドッグヴィルは、板葺きの貧しい家でしょ。
そしたら、ひょっとしたらわかってた?


(お茶屋)
板葺きやったらわかっちょったかもしれんね。
江戸時代の長屋は、見て見ぬ振り、聞いて聞かぬ振りでプライバシーを尊重しよったらしいで。


(みわ)
ドッグヴィルも小さい町やし、みんなわかっていたかもしれませんね。
あ、そうそう、もしかして気がつきませんでしたか?
あの白線から頭が出ていたの。


(お茶屋)
えー!?気がつかん。どこで?


(みわ)
グレイスにおじさんがいけないことをしているとき、グレイスの頭が白線から外に出ていました。


(お茶屋)
はははは!よう、気がついたねー。そしたら、グレイスの頭が壁を突き破っちょったわけか!


(みわ)
カットが変わったら、部屋の中へちゃんと戻っちょったけど(笑)。



  [うえ↑]
 
■■アメリカ3部作■■
line

(お茶屋)
この映画は、ラース・フォン・トリアー監督のアメリカ3部作の第1作目らしいがやけど。


(みわ)
ああ、それでエンド・クレジットが、アメリカの人たちなんですね。


(お茶屋)
イラク国民をフセインから解放して民主主義をとかいうて、結局、焼け野原に瓦礫の山で、なんかグレイスの傲慢と重なるところがあるけど(笑)。

(みわ)
そうですね。
なんか、トリアー監督は、アメリカに悪意でもあるんですか(笑)。
3部作ということは、次もあるんですか?


(お茶屋)
なんか、ニコール・キッドマンに出演依頼したけど断られたとか。もう懲り懲りやったかもね。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のビョークも撮影中から折り合いが悪かったらしいし、主役をとことん追い詰めるらしいで。
クロエ・セヴィニーって『ブラウン・バニー』に出ちょった人、あの人はトリアーの次回作に出るそうなけど、セヴィニーはマゾやって言われゆらしいで。


(みわ)
そしたらトリアーはサド?(笑)


(お茶屋)
うん、サドで飛行機嫌い(笑)。
この映画もデンマークで撮影したらしいで。


(みわ)
よく俳優がデンマークまで来てくれましたね。



 
■■トリアー監督の楽しみ■■
line

(お茶屋)
トリアー監督は、挑戦的やって言われゆけど、これについてはどう思います?


(みわ)
う〜ん、限界がどこか試しゆような感じはありますね。
『奇跡の海』でも主人公が、どこまで神を信じれるか、主人公を追い詰めているし。
『ダンサー・イン・ザ・ダーク』でも、これでもかと主人公を追い詰めて、果ては絞首刑まで見せるし。
多分、主人公がどこまで耐えれるか試しているのと同時に、観客にもどこまで耐えれるか、『奇跡の海』でも、これでも神は存在すると思うのかと試しているような。
『ドッグヴィル』では、グレイスがなすがままにされるのを、どこまで許すのか、許せるのか、観客に投げかけているというか。
観客に嫌がらせしてるんじゃないですかね(笑)。
主人公がとことん痛めつけられるところや、絞首刑を見せたりして、観客が嫌がる顔を想像して喜んでるんじゃないですか。
そうやったら、本当にサドですね(笑)。


(お茶屋)
やはり、トリアーはサドだったと(笑)。


(みわ)
クローネンバーグとは、また異なる変態ですね。
ラース・フォン・トリアーは、人の嫌がる顔をみて喜ぶ悪趣味なオヤジだった!ということで(笑)。

2004/7/18up

  [うえ↑]

ホームサイトマップサイト内検索リンク自由|byお茶屋(連絡先)