小心者で自分勝手で見栄っ張りな
『ギター弾きの恋』
男は才能よね。私も昔々、どうってことない同級生の男の子が、ポロロロローンとピアノを弾くのを聴いた瞬間、目がハート型になったもん。うんうん。
エメットのように温かい優しい音色でギターを弾けるなら、それは女に不自由はしないでしょう。
だけど、ピストルでネズミを撃って楽しいの?列車が通るのを見るのが趣味?そんなの一人でやってよね。

(今、思い出したけど『ダイナー』でレコードのB面の曲を当てっこしたり、結婚するのに彼女がフットボールの選手の名前を全部言えなけりゃダメだとか(フットボールじゃなかったっけ?)、男って子供っぽいこだわりがあるよねぇ。女にもないってわけじゃないけど・・・むにゅむにゅ・・・。)

で、エメットの一番可愛くて笑えるところは、尊敬しているギターリストに対する畏怖の念です。ホントですかね、そのギターリストの演奏を聴いて2度も失心したというのは。私も失心するほどの演奏を聴いてみたいよ(笑)。って、ガンズ・アンド・ローゼズのイジーのギターを生で聴いて、失心しそうにはなったけど。いや、その大音響にですが(笑)。

それで、エメットは、芸術家には自由が必要、女に縛られるわけにはいけないのだと、数々の女性を泣かせてきましたが、ついに彼の方が泣くときが来ました!これって、これって、男性をも号泣させたフェリーニの『道』じゃあ、ないですか!

それにしても、芸術家たる者は、このような精神的打撃を肥やしにして自らの芸術を高め得るものであって、打撃に屈して筆を折る(いや、演奏を捨てる)というのは、エメットがそれだけ小者だということです。
しかしながら、私はこの小者を愛さずにはいられない。小者ゆえに愛すといってもいいかもしれません。
最後のギターの音色には、一度の傷心で消え去って行ったギター弾きのもろさが、ガラス細工のように輝いています。儚く懐かしい、そんなギターの音色です。

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