『リプリー』の深さ
ラストシーンのネタをばらしております。
ご注意ください。
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表面的なおもしろさで最後まで見せるパワーはあるのですが、
主人公トムの心の暗闇を描き切れているのは
ラストシーンだけではないでしょうか。
あのラストシーンには胸をえぐられました。
同性愛者である自らの存在を否定してきたために、
自分が何者であるかわからなくなっているトム。
同性愛者であることを含めて自分を
肯定してくれる人が、やっと現れたというのに、
その人をも殺めて、偽りの自分を守ろうとしたのです。
ピーターが自分の美点を並べてくれたことに感謝しつつも、
それらを肯定していくと、自分が同性愛者であることも
認めなければならなくなる。だから殺したということでしょうか。
(それにしては、ディッキーには同性愛者として
積極的なアプローチをしていたので、一貫性がないのですが。)
私は経験上、自己嫌悪とか劣等感というものは、
この世で最も悪い負の感情だと常々思っております。
自己否定が原因の悲劇という点では、やはり『リプリー』の
ラストは深いものがあると思います。
で、あまりの絶望的なラストに暗くなりかけましたが、
やっぱ、トムは殺人者ですからね。
そうそう、幸せになっちゃいかんのですよ。
そう思ったら気が軽くなりました。
殺人の罰としては『太陽がいっぱい』より『リプリー』の
方が断然重いです。
でもって映画の美しさという点では、
断然『太陽がいっぱい』ですね。