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青の炎
青春の青は、怒りと哀しみ
監督:蜷川幸雄|挿入歌:THE POST WAR DREAM
櫛森秀一:二宮和也|福原紀子:松浦亜弥|遥香:鈴木杏|
母:秋吉久美子|刑事:中村梅雀|曾根隆司:山本寛斎

観るつもりではなかったのですが、諸般の事情により(笑)最終日に観てきました。大変見応えのある映画で、観てよかったです。

まず第一に出ずっぱりの二宮和也がいいですね〜。彼一人でも映画を引っ張っていける演技力があります。 松浦亜弥もいいし、鈴木杏はもちろん、秋吉久美子がちゃんと母親役を出来るのに感心。それに、山本寛斎!!!なんか似てるな〜と思っていたら、本当に山本寛斎でした。もう、最大級のびっくり。存在感のみならず、堂に入った役者ぶりでした。その他の役者では、竹中直人は浮いているし、美術の先生はもう少し抑えた方がよかったと思いますが、これはまあ、重箱の隅をつついているようなものです。

お話は、主人公が母と妹を守るため、酒乱の義父を殺すというもので、青い怒りと哀しみが伝わってきて、よく出来ているがゆえに遣りきれなさが胸に残ります。

●ネタバレ感想
冒頭の学校の様子は、にぎやかでエネルギーが満ち溢れていて、まさに若いという感じでした。本来なら主人公秀一もそうであったろうにと思うと彼がかわいそう。彼はエネルギーのありったけで身の内に怒りの炎を燃えあがらせているのです。やがて、その炎は消えていくのですが・・・・。
秀一が、どれだけ母や妹を思っていたかや、淡い恋というよりも魂の救いだった紀子との一時や、30年後の君はいないということを思うと、哀しみでいっぱいになります。また、それを詩情のある撮り方、聞かせ方をしているのですね〜。うまい。

もう一つ感動したところは、秀一の友達が刑事に嘘の証言をしたことや、紀子が裁判になっても嘘の証言をすると言うところです。いい友達じゃん(涙)。
紀子はいいことを言いましたね。人を殺すのは絶対にしてはいけない悪いこと。でも、殺してしまうには、そうせざるを得ない訳があるのだろうと。(殺すのはいけないが、殺したくなる気持ちはわかるってことですよね。)まさに、この映画で秀一を見ていて思うことです。
それと、離婚した義父が居候しにやってきたのは、癌で余命幾ばくもなく、実の娘に会いたいがためという設定はよかったです。殺されるにふさわしい醜怪な人物だと思われた義父が、同情に値する人物だったというのは、殺されるにふさわしい人物などいないと言っていることになります。(義父が秀一に向って「妹とべたべたしやがって」と言ったことが、伏線となって効いています。自分が入る隙がないのが寂しかったのでしょうね。)

おしまいに。紀子のキャラクターは一貫性がありますね。けっこう、深いところで人の気持ちを受け止めることが出来るのだけれど、ずかずかと深入りはしません。「おれ、人を殺したんだ。」という秀一に「そう。」と言って肩に頭をのせるだけだし、最後も秀一が自殺するとわかっても止めはしません。なぜ、こうなるのかという答えのない疑問を発して、どうしていいかわからないけど、とにかく気に入らないのだという異議申立ての目。青の炎を燃えあがらせた、あのような目が出来るのは若いうちだけです。

高知東宝3 2003/04/11

間借り人の映画日誌『青の炎』をめぐる往復書簡編集採録も、ぜひ、お読みください。


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