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アフター・ウエディング
孤独が身にしみる

主要人物が3人と少ないにも関わらず、大変濃密な心模様が描かれていました。親子、恋人、夫婦という関係性や、過去、現在、未来について、あるいは愛別離苦、共生という状況など、どれを取り出しても語れそうですが、私は「ヨルゲン(ロルフ・ラッセゴード)vsヤコブ(マッツ・ミケルセン)」で行ってみようかと(笑)。

その前に人間、鹿、猫などの目の度アップや、植物の綿毛(種子)をとらえた映像について。
度々映し出される目や植物は何を意味しているのでしょうか。わかりませんが、「目は口ほどに物を言わない」のような気がしました。どんなに苦しいときでも目だけのアップは、ただ単に綺麗なだけで鹿の剥製の目やお目覚めの猫の目と同じのような気がします。もう一度観たら印象は変るかもしれませんが。
植物の綿毛は、子孫繁栄にとどまらない人間が存在する限りエンドレスな様々な営みを表しているのでしょうか。わからんなぁ。

●以下、もちろんネタバレ〜

内面の美しさや深さが顔に表れているヘレネ(シセ・バベット・クヌッセン)は魅力的な女性です。若い頃はこれほど深くも静かでもなかったろうと思いますが、きっと娘のアナ(スティーネ・フィッシャー・クリステンセン)より自我のある女性だったろうと想像します。
彼女のかつての恋人ヤコブは自己中心的です。相手を思い遣る心が身についていません。自分の意思をうまく伝えることが不得手だし、すぐ感情的になります。だから、仮に孤児院への資金援助の話があったとしても、交渉ごとはうまく運ばなかったかもしれません。また、永続的な人間関係を築くのも難しいかもしれません。そのくせ、ヘレネがインドに帰ってくるのを長いこと待っていました。彼女はもう帰らないと言えるくらい時が経っても忘れることが出来ませんでした。新たな一歩を踏み出すことが出来きない不器用な人です。成熟しないまま、どんどん年を取りました。よく言えば、いつまでも若いです。←う〜ん、褒め言葉ではないですねぇ(汗)。

一方、ヤコブと別れたヘレネがデンマークへ帰国後、結婚したヨルゲンは善き夫であり、子どもたちにとっては善き父であります。しかも、莫大な資産があるので、彼が亡くなっても遺族は生活に困らないでしょう。それでも、彼は不充分だと思っていて、自分亡き後、妻と子の心の支えになる人物を傍らに遺そうとします(涙)。そのために必死になります。しかし、そんな彼も他人には、それほどの思い遣りを示しはしないでしょう。仕事では鬼にも蛇にもなったでしょう。駆け引きも上手いはずです。良かれと思えば嘘をつきとおす肝も据わっています。もしかしたら、ヘレネがアナを妊娠中、実父であるヤコブを探しだしておきながら、双方に伏せていたかもしれません。彼は成熟しています。ただし、悟りを開くまでには至っていません。

さて、「ヨルゲンvsヤコブ」、軍配はどちらに!?
ヨルゲンはいいとして、ヤコブには今後も試練が訪れると思います。
傷心のアナとヘレネに一時頼りにされて、二人には自分が必要なんだと錯覚してしまったヤコブ、あなたは若い。アナとヘレネにとってヨルゲンの代わりになれる人はいないのです。彼女らにとって、心の支えとなるものを遺そうとしたヨルゲンの思い遣りは涙が出るほど嬉しいに違いありません。でも、実際ヤコブが心の支えとなり得るかというと別問題です。二人は、ヤコブなしでもヨルゲンの死を乗り越えて行けるんじゃないでしょうか。
ヤコブは、インドで我が子のようにして育てた男の子がいたのですが、デンマークで暮らすに当たって「いっしょに来ないか?」と訊ねます。彼としては男の子が可愛くてたまらない。男の子から必要とされているという実感が彼にとっての救いでもあるのです。でも、男の子の方では、彼を父親のようには思っていませんでした。「インドに残る」と言うのです。
そのときのヤコブの表情・・・・・。孤独が身にしみます。

「ヨルゲンvsヤコブ」、そりゃ、悟りは開いてなくても成熟しているヨルゲンの方がつきあいやすいですよね。だけど、どうもスザンネ・ビア監督はヤコブに軍配をあげているんじゃないでしょうか?だって、ヨルゲン、殺しちゃってるもん。判官びいきとでも申しましょうか。ヤコブには、もっと修行する機会をあげなくちゃということではないでしょうか?私もどちらかというとヤコブタイプなので、ヤコブよ、共に頑張りましょうぞ!って感じ。
『ある愛の風景』は観ていませんが、「兄vs弟」という対立軸がありそうというか比較対照ができそうですね。ビア監督、異なるタイプの男性の間で相当ゆれた経験ありと見た!(笑)

シネマ・サンライズ 高知県立美術館ホール 2008/1/29
 
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