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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
指導者にヴィジョンを!
監督:若松孝二/日本/2007年/190分

インターネットという道具はやはり凄い。エルサレム賞授賞式での村上春樹のスピーチ全文が有志により翻訳&アップされている。全文を読むとイスラエル批判にとどまっていないことがわかる。
「高く堅固な壁と卵があって、卵は壁にぶつかり割れる。そんな時に私は常に卵の側に立つ」
たとえ卵が間違っていてもだそうだ。
「いかなる理由にせよ、壁の側に立って作品を書く小説家がいたとしたら、そんな仕事に何の価値があるのでしょう?」とまで言っている。
壁というのは、ロケット弾や白リン弾のことでもあるけれど、システムでもあるそうな。
「壁は高く、強く、あまりにも冷たい。もし勝ち目があるのなら、自分自身と他者の生が唯一無二であり、かけがえのないものであることを信じ、存在をつなぎ合わせる事によって得られた暖かみによってもたらされなければなりません。」
要するに不都合なsystem(組織、制度、体制など)は、市民同士手を取り合って変えていくしかないということだと思う。 (引用は「村上春樹: 常に卵の側に」by増田さんから。)

この映画の感想を書こうと昨年の暮れから思い続けて数ヶ月。そうこうしている間に、村上春樹が総括してくれたみたい(笑)。
若松監督は卵の側に立ちこの映画を作った。卵が間違っていたこともちゃんと描いた。主だったメンバーは逮捕されたり国外へ活動の場を移したり。新にリーダーとなった者にはヴィジョンはないし、言うことに論理の飛躍があって「なんで、そーなるの!?」と観ていて頭を抱えた。森(地曵豪)の場合、運動から逃げ出した劣等感が、永田(並木愛枝)の場合、他の女性より優位に立ちたい一念が、リンチをするに至った心因のように描かれていたと思う。いずれにしても、集団が組織化されると、思想のいかんによらず権力を集中化する傾向があるように思われ、そうならないためには「存在をつなぎ合わせる事によって得られた暖かみ」を常に意識する必要があるのではないだろうか。そして、そうなってしまった連合赤軍について行けない遠山(坂井真紀)たちは、ついて行けない者同士手を取り合って、壁=system(具体的には森と永田及び彼らに追随する者という系統)に向かって立ち上がらねばならなかった。私たちが作った壁が、私たちを殺すことがあると村上春樹も先のスピーチで言っている。 殺したり殺されたりする前に手を取り合う、これが勇気の第一歩だと思う。

それにしても総括シーンは辛かった。私も席を立って逃げ出したかった。だけど、当事者に比べたら客席で観ている辛さなんて屁でもないと思い耐えた。
小学校四年の三学期、流感で学級閉鎖となった日、わけもわからず1日中テレビを見ていた。鉄球が山荘を壊す、その内側で何があったか知らなかったし知ろうともしなかった。母親たちの呼びかけに、若者たちが泣きながら銃を撃っていたと想像した者がいただろうか。テレビの前で「親への返答があれか」と舌打ちした人はいたかもしれない。若松監督は見事に卵の側に立った。

尻ぱたき隊 高知県立美術館ホール 2008/12/22
 
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