|
■かるかん>セントアンナの奇跡 |
|
[←もどる] [すすむ→] |
セントアンナの奇跡 餅は餅屋に |
監督:スパイク・リー/アメリカ、イタリア/2008年/163分 |
決して出来の良い作品ではないと思う。最後はうまくまとめたものの、ほとんどのエピソードが消化不良のような気がする。軍隊内での黒人差別、神様を信じる黒人兵と見えないものが見える少年の交流、パルチザン仲間の裏切り、「眠れる男」の意味、キリスト教徒同士の戦争、ナチス内の厭戦将校。あっちこっちでつまみ食いしたみたいで、旨いものを食べたという気がしない。しかも、細部の描写などひどいものだと思う。退却命令が出た後、最前線に取り残された黒人兵トレイン(オマー・ベンソン・ミラー)が怪我をした少年アンジェロ(ルイジ・ロ・カーショ)を助け、他の3人の仲間とセントアンナに赴くのだが、その道中アンジェロはテクテク歩いているし、立派に立ちションもできる。ところがセントアンナに着くと介抱が必要なまでに衰弱している。
「眠れる男」とはセントアンナの伝説で、村に有事がある際は目を覚まして村人を守るのだそうな。セントアンナ大虐殺の生き残りであるヘクター(ラズ・アロンソ)は、その眠れる男を知っていると言う。それはおそらくセントアンナに押し寄せたドイツ軍と戦って死んでいった仲間たちトレイン、スタンプス、ビショップのことだろう。作り手は、眠れる男がいる山と黒人兵の横顔のシルエットを重ねることによって、「眠れる男」は黒人だと示したのだと思う。
イタリアに派兵される前、内地(アリゾナだったっけ?)にいたヘクターたちは、かき氷を買いに店に入るが店主に追い出される。店には敵国のドイツ人もいたし、お国を守る兵隊さんだから売ってやれと取りなす人もいたが、店主は銃を突きつけ追い出し、子どもに「これが黒人の扱い方だ」と教える。これはもう、サボテンも火を噴く怒りの場面だった。 このように差別される者の怒りと悲しみを描くときの演出力は冴えている。そして、『インサイド・マン』で披露されたスパイク・リーのニューヨーク愛は、シドニー・ルメットの跡継ぎになれるほどだ。私はニューヨークに住む人々(黒人に限らない)の喜怒哀楽をスパイク・リーの演出でもっと観たいと思った。 シネマ・サンライズ 高知県立美術館ホール 2010/2/16 |
[うえ↑] |
|ホーム|サイトマップ|サイト内検索|リンク自由|byお茶屋(連絡先)| |