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パーマネント野ばら
『女の子ものがたり』変奏曲
監督:吉田大八/日本/2010年/100分

ひなびた田舎の景色が絵になっている。曇り空の海の色が美しい。なおこ(菅野美穂)とカシマ(江口洋介)のシーンが非現実的で、理科室、トンネル、テーブルのビール瓶とコップなど独特の静けさがイイ。映像としての魅力があるうえ、なおこの幼なじみ、みっちゃん(小池栄子)、ともちゃん(池脇千鶴)の地に足がついた感じや、下ネタ話ばかりしているおばちゃんたちも実はなおこを見守っていたという優しさや、自由(?)な男たち(宇崎竜童、加藤虎之助、山本浩司)など人物の魅力もあるし、ちょっとした愛しい(?)エピソードがあふれている。恋に狂う女たちの話としても面白いし、田舎で貧乏しながら生きる話としてもたくましいし、なおこの恋物語としても切ないけれど、私は大人(母)になる話として観た。

秘密の恋人カシマに「あんた、大人だろ」と言われるなおこは、高校生のときの気分のままだ。大人にならなきゃと思っているし、もも(畠山紬)の母親としてちゃんとしなくちゃという思いもあると思う。だけど、なおこはうたた寝しているみたいに、ふわふわと生きている。
なおこの母親まさ子(夏木マリ)は、うたた寝こそ出来ない(爆睡か不眠のどちらかって気がする;;;)が、若かりし頃は欲望に忠実で娘(なおこ)より男優先だったと思う。娘の抗議の視線を受け止めることができず「なんで、その目は」と封じ込めてしまう。そんな彼女が娘に「わたしがいるからね」と励まされて、「こりゃ、どっちが親かわからん」と反省して母親の自覚ができたのだと思う。親の勤めを果たすことが出来れば、たいていは大人としても大丈夫なような気がする。ゴミ屋敷のカップルの散髪に行くのは、大人の中でも立派な部類ではなかろうか。
なおこも、ある意味、娘(もも)より男優先だ。うたた寝から覚めるときは来るのか。カシマとの関係にどんな結末が待っているのか。「あんた、放っておくと、どっか行っちゃいそうだから、結婚するか。」とプロポーズされているから、なおこには、しっかりしなきゃという気持ちと、助けてほしい気持ちがあるんだよね。

TOHOシネマズ高知6 2010/5/26
 
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