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■かるかん>ノルウェイの森|最後の忠臣蔵
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ノルウェイの森
青い果実の喪失ファンタジー
監督:トラン・アン・ユン/日本/2010年/133分

村上春樹の小説で読んだことがあるのは「ノルウェイの森」だけだ。面白くて一気に読んだが、すぐに忘れた。映画の方も面白く観たが、登場人物がカリカリ梅のように青く、青いがゆえの懊悩が(私の大好きな分野であるにもかかわらず)どこかしら遠い絵空事のように感じられ、主人公ワタナベ(松山ケンイチ)の喪失の痛みは、美しい映像とゆったりとした時間の流れの中の風景みたいで、これはファンタージとして楽しむべき映画ではないかと思い至った。ただし、直子(菊地凛子)が原っぱで行ったり来たりしながらキズキ(高良健吾)とのことを打ち明ける場面は胸が痛かった。キズキは、わずかな登場シーンながら鋭敏で脆そうな感じがよく出ていた。菊地凛子も高良健吾も好きな俳優なので、いい仕事をしてくれて嬉しい。ワタナベが惹かれる緑(水原希子)については、精神的な磁力はあまり感じられなかったけれど、瑞々しく可愛い女の子がちょっと風変わりだとワタナベ君にとってはオアシスになったのだろうと納得できた。

登場人物で面白かったのは、百人斬りの永沢先輩(玉山鉄二)だ。やってるいることは最低ラインの俗物なのに、そうは見えなくて困る。人を斬って捨てる非道について、彼にはそれ相当の覚悟があるように見える。と言えば聞こえはいいが、自分が傷つかないように心を凍らせているだけなのかもしれない。(玉山鉄二がこれほどのカメレオン俳優だとは知らなくて嬉しい驚きだった。)一方、永沢先輩のように非情になりきれないワタナベは、惹かれている緑を差し置いて壊れかけた直子の面倒を見る気でいる。いったいいつまで見る気でいるのか、いつまで緑はお預けなのか、それとも三人で暮らすのか。直子が死なない場合のワタナベの人生は、より困難なものになっただろう。そう考えると直子の死は主人公にとって都合のよいものに思えた。また、レイコ(霧島れいか)とワタナベによるお互いの再生は、これまた主人公に都合のよい設定だった。
「ワタナベは永沢先輩と違って最期まで直子の傍にいた。だから、深く傷ついた。レイコという救いがあってよかった。」と感じさせてくれたらよかったのに、波がくだけ散る磯で嘆くワタナベを観て「熱演やなぁ」と感心するばかりであった。

TOHOシネマズ高知5 2010/12/12
 
[うえ↑]
   
最後の忠臣蔵
愛より忠義
監督:杉田成道/日本/2010年/133分

映画が終わって拍手する人がいた。なかなかの力作で見応えがあり、うるうるきた。
四十七士の一人である寺坂吉右衛門(佐藤浩市)は、大石内蔵助(片岡仁左衛門)から「生きて、討ち入りの真実を後世に伝え、浪士の遺族を支援せよ」と命を受け16年。彼が観た討ち入り後はどんなものだったか。四十七士の遺族の苦労は並大抵でないことがわかった。四十七士は忠臣の鑑という評価が高まるにつれ、討ち入りに参加しなかった者がどれほど肩身の狭い思いをしたかなど、新しい視点で忠臣蔵を観ることができて面白かった。
また、大石内蔵助が自分の死後の臣下の行く末にどれだけ心を砕き取り計らったか、その恩義をこうむった臣下の念がいかほどか、忠義がどうして生まれるのか描かれていたと思う。
更に、可音姫(桜庭ななみ)と家来瀬尾孫左衛門(役所広司)の関係が「春琴抄」みたいな・・・、じゃなくて「花嫁の父」みたいな本筋も感動的だった。
しかし、歌舞伎ではよくある「主君の子息の身代わりに我が子の首を差し出す家臣」並の、今の世の中からしたら目が点になるような理不尽さが、この時代劇にもあった。どれほど「花嫁の父」であろうと、娘より主君なのだ。

●ネタバレ感想

孫左衛門は三代続けて使えた大石家の当主内蔵助の頼みで、忘れ形見可音を育て、呉服屋の茶屋四郎次郎(笈田ヨシ)の跡取り修一郎(山本耕史)に嫁がせる。そして、使命を果たせたと、切腹して果てる。孫左衛門にとっては、吉良邸討ち入りで死ぬはずだった命であり、討ち入り前夜に内蔵助に渡した命であるので、16年遅れとはいえ主君の後を追えて本望だったろう。彼にとっての道理である。
だが、孫左衛門に育てられた可音はどう思うだろう。可音は孫左衛門に恋心を抱いていたが、諦めて茶屋に嫁いだのだ。「こんなことになるのなら嫁ぐのではなかった」と思いはしないだろうか。孫左衛門が可音の幸せを願うなら、可音に悲しい思いをさせたくないだろう。おいそれとは死ねないはずなのだ。可音からすれば孫左衛門の切腹は理不尽に思えるのではないか。それとも武家の姫として育てられたので、孫左衛門の自害を理解して耐えるのだろうか。

冒頭から最後まで、ところどころ人形浄瑠璃「曽根崎心中」の場面が差し挟まれる。彼方、愛に殉ずるお初と徳兵衛、此方、主君に殉ずる孫左衛門。お初、徳兵衛の方が理解できる。恩義を感じるから忠義が生まれるというのはわかったけれど、孫左衛門はゆう(安田成美)の誘いに応えて生きて何の不都合があろうかと思う。要するに孫左衛門の切腹が不満だったわけだが、いっしょに観た母は「切腹してよかった。ゆう様の誘いに乗ったらアウトやった。」と言っていた。う〜ん、それが歌舞伎、時代劇の正しい見方かもしれない。

TOHOシネマズ高知3 2010/12/19
 
[うえ↑]
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