セロ弾きのゴーシュ
宮沢賢治の話はとても面白い。ユーモラスでリズムがあって優しい。ゴーシュが楽長に叱られているとき、「みんなはきのどくそうにして、わざとじぶんの譜をのぞきこんだり、じぶんの楽器をはじいてみたりしてい」るので、なんか涙が出そうになる。猫がおどろいて目と額からパチパチ火花をちらしながら、かざぐるまのようにクルクルまわったり(笑)。いろんな動物の台詞回しに可笑しくなって笑い出しそうになる。ぷんすかしていたゴーシュが、おだやかになるまでを描いて行間たっぷり。「インドのとらがり」、聴いてみたい!(youtubeにあるよ。)
そして、物語にピッタリの絵が素晴らしい。この絵本は茂田井武の最後の作品で、そのときの編集者の話によると表紙を描き直してもらったそうだ。病床の茂田井さんに書き直しをお願いするのは本当に心苦しかったけれど、快く描き直してくださったとのこと、雑誌で読んだことがある。初め表紙として描かれた絵は、絵本の11ページにある。このエピソードを思い出すたび、編集者の仕事って重要だと思う。
あとがきは「指輪物語」の翻訳者でもある瀬田貞二で、茂田井武について来歴や性格などを愛情を込めて綴っている。あとがきを含めて宝物のような一冊だ。
星座を見つけよう
理科の教科書に描かれた北斗七星が小さかったものだから、長いこと昴を北斗七星だと思っていた。だから、本当の北斗七星を知ったときは、驚いた驚いた。北斗七星、大っきい!北斗七星とセットでカシオペア座も見つけたと思う。
それから雑誌の付録の星図盤を参考に白鳥座と蠍座を見つけた。冬の三つ星はとても目立つので、なんだろうと調べたらオリオン座だった。というふうに、それくらいしか知らなかったけれど、星座占いでおなじみの黄道十二宮やギリシャ神話でおなじみのアンドロメダ座などどれだろう思っていた。
そして、いいかげん大人になってから本屋さんで「星座を見つけよう」に出会った。この絵本は本当に楽しい。一時期は、寝床でよく見ていた。星図は、春夏秋冬のそれぞれに北と南の空があるのはもちろん、「じっさいに空をながめたときのようす」と「同じ星を線でむすんで星座をしめしたもの」の二種類が用意されている。だから、前者のページで星座を見つけられると、実際の空でも容易に星座を見つけられるのだ。バス停から自宅までの帰り道で、星座を見つけていった。いるか座があることもこの本で知って見つけた。いるか座、かわいい〜。
自家用車で通勤を始めてからは、星空を眺めることはほとんどなくなったけれど、たまにこの絵本を開くのは楽しい。ハレー彗星、百武彗星、ヘール・ボップ彗星は見たし、信号で停車中に火球を見たこともある。ブラックホールとか国立科学博物館の霧箱とか宇宙ってわけがわからないのに面白いなぁ。
やっぱりおおかみ
3才から小学校初級むきの絵本で、1973年の初版時に適齢だった妹が借りてきたものだったか。そのときの面白さが忘れられず、高校生のとき友だちに勧めて「さびしすぎる」という感想をちょうだいしたことも懐かしい。
子ども向きの絵本なのに真正面から孤独を描いていて寂しいというのも道理なんだけれど、それだけじゃなくて「自分は自分(でしかない)」という自己確立というか開き直りというか、孤独でも生きていけるし、生きねばならぬというメッセージが健全で爽快なのだ。
そして、なによりユーモラスなのが気に入っている。こどものおおかみの寂しさや強がりを吹きだしのセリフにしているところが、やっぱり面白い。