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GO
世界を広げるのだ!拳とシェイクスピアの青春
監督:行定勲|脚本:宮藤官九郎|原作:金城一紀
杉原:窪塚洋介|桜井:柴咲コウ|ジョンイル:細山田隆人|
タワケ先輩:山本太郎|母(道子):大竹しのぶ|父(秀吉):山崎努

拳で壁を突き破ろうとすると痛い。痛いと知りつつ世界を広げるために壁を破るのだ。しかし、壁を破ろうとしなくても、在日朝鮮人又は在日韓国人というだけで、それは痛いことなのだ。息を潜めてじっとしていても踏みつけられるから。それは在日の人々だけではなく、差別を受けている者はみんなそう。
あ、いけない。これは差別についての映画じゃなくて、青春映画なのだった。

冒頭の杉原は、手負いの獣だ。本人はブレイクしたといっているが、ああいうのを見て人は「切れた」という。私も何も知らずに見たら「切れた」というかもしれないが、なぜ、「切れた」のか考えもしないのって踏みつける側に回っているってことだ。
あ、いけない、いけない。これは差別についての映画じゃなくて、瑞々しいロックで繊細な青春映画なのだった。


杉原だけじゃなく、ジョンイルも拳を持っている。杉原が先生に殴られているとき、民族学校の教室で勇を鼓して言ったことや、地下鉄のホームで脅えている女子生徒をかばったことでわかる。固い拳に柔らかい心。杉原ならずとも尊敬する。
杉原は「すっごいことって何だったんだろう」と一生思いつづけるにちがいない。私もそれが気になって気になって、突然去って二度と会えないという感覚を分けてもらっている。

拳の塊のようなタワケ先輩。彼にもシェイクスピア的一幕があった。指紋押捺のときのエピソードだ。ドストエフスキー的一幕って気もするけど。

というわけで、この映画は、恋愛も家族の愛情も友情もたっぷりの青春映画だ。ある高校生の生き方の物語でもある。彼の生き方は、おそらく彼にしか出来ないもので、世の中、杉原のように世界を切り開いて行ける者ばかりではないだろう。また、皆がみんな杉原のようになる必要はないとも思う。
ただ、青春映画というものが、傷ついた若者がいかにして傷をいやすか、あるいは傷がいえないままにいかにして立ち上がり生きていくか、そのような姿を描いたものであるならば、『GO』は青春映画の王道を行っているといえるし、すごぶる健全であると思う。
そして、そのような青春像と対極にある『ラブ&ポップ』の、外界と主人公の間に薄い皮膜があって、生きている実感に乏しく、傷ついているのに自分の傷の深さを自覚できていない高校生を思い出し、今、どちらの若者が多いのだろうと考え込んでしまう。

高知東映 2001/10/27


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スウィート・ノベンバー
期間限定、わけありラブストーリー
SweetNovenmber
監督:パット・オコナー
サラ:シャーリーズ・セロン|ネルソン:キアヌ・リーブス

すばらしい・・・・予告編でした。シャーリーズ・セロンのまぶしい笑顔とキアヌ・リーブスのぬれた瞳、そして、エンヤの歌の相乗効果で、もしかしたら心にしみる恋愛映画かも・・・と夢を見させてくれました。
そして、本編はというと、あんまり心にはしみなかったな〜。リアリティもなければ夢もあまりないという中途半端なところに止まって残念でした。
しかしながら、シャーリーズ・セロンは溌剌とした姿が美しく、やつれた顔も魅力的で、よかった、よかった。キアヌは、闘うクリエイターは無理してる感じがしましたが、シャーリーズに骨抜きにされてからは水を得た魚で、よかった、よかった。

高知松竹3 2001/10/27


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