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■かるかん>恋愛寫眞|過去のない男
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恋愛寫眞
僕がプロのカメラマンになれた理由
監督:堤幸彦|脚本:緒川薫
誠人:松田龍平|静流:広末涼子|小池栄子

う〜ん、松田龍平、顔がお父さんにそっくりですね。広末涼子、この人の目力はやはり大したものです。この二人の魅力で退屈せずに見ることが出来ました。
プロを目指すカメラマン誠人は、恋人の静流に写真を教えます。二人で応募した雑誌のコンテストに静流だけが入賞したことに嫉妬した誠人は、いっしょにいられなくなり(皮肉にも静流は、誠人といっしょにいたいから写真を撮るようになったのに)一旦は別れます。いろいろあって、誠人は亡くなった静流の目で世界を見、彼の中にいる静流といっしょに写真を撮っていくことを決意したというお話。
お話の骨組は、なかなかしっかりしているとは思いますが、誠人のナレーションがどうして英語なのか疑問だし、表面的なこと(映像の見た目)は描けているけれど、人物の心の中は描き様がいかにも薄っぺらく感じられ大変残念でした。


●ネタバレ感想
特にダンサーを志してにニューヨークに来ている女性(小池栄子)が、自分の努力が報われず、存在も認められないキビシイ現実から、仕事を認められた静流に嫉妬して彼女を殺したという部分を全く生かせてないことに、もったいないというか、歯がゆさを覚えました。
この女性の嫉妬は、誠人が静流に覚えた嫉妬と通じるものがあるので、この才能を認められない者の悲哀をうまく描くと作品に奥行きが加わったと思うのです。しかも、誠人の方は、劣等感を乗越え成功に至るわけですから、嫉妬のあまり殺人を犯した女性との対比にもなり得たと思います。
ところが、この作り手は、そういう人間の心の動きには全く関心がなかったと見えて、この女性の狂気の部分をクローズアップして見せました。これが見事にこの映画を壊していましたね。このシーンは、ホラーになっていました。
小池栄子は、すごくよかったんですよ。人を殺す狂気の表現もよかったのですが、通常のシーンも非常によかったんです。まばたきの多さから何か神経にさわっている様子が伝わってきて、微妙な演技の出来る人なのですね。感心しました。
それなのに作り手は、見た目の面白さしか頭になかったのか、ホラー演技の方を選択してしまったのです。演技力がある俳優を得ても、作り手の志向が人間の心を描くことになければ、こんなに薄っぺらい作品になってしまうのだと思いました。
もっとも、作り手が目指していたのは、気軽に見られて、おしゃれでちょっと笑える綺麗な映画でしょうから、私からこのように言われる筋合いなどないのでしょうが。

気に入らないついでにもう一つ。「他人を殺したとしても自分の人生はそう変わらないが、自分が死んだら大きく変わる。(だから、殺されるより殺せ。)」というような台詞がありました。これは襲われて正当防衛するときの理屈として誠人がニューヨークで友人から教えられたことです。
この台詞は、真の一面を突いています。映画の台詞になってもよいと思います。しかし、この台詞を登場人物に言わせるなら、それ相当の覚悟を持って殺す方と殺される方を等分に描くべきだと思います。それをしてないのだから、この台詞を重大に受け止めている者から、薄っぺらいうえに考えなしだと言われるのは当然でしょう。

高知松竹3 2003/06/15


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過去のない男
しあわせって何だっけと思ったら
Mies vailla menneisyytta(The Man without a Past)
製作、監督、脚本:アキ・カウリスマキ
男:マルック・ペルトラ|イルマ:カティ・オウティネン|ハンニバル:タハティ(フィンランド語で星)

いや〜、しみじみしました〜。しあわせってお金じゃない。そりゃ確かに少しはいるけど。コンテナの家で怪我人を看護する。病院に連れて行った方がいいかなと心配する。そんなお金があるかどうかわからないように見える一家が、当たり前のように過去のない男を居候させている。夫婦仲もよさそうで、子どももしっかり育っている。こういうのを見ていると、しあわせになりますね〜。働いた後、お風呂に入って身奇麗にして飲みに行く。一杯のビールの美味さ、伝わってきますね〜。
世話してもらったコンテナを掃除する。いらないものを燃やして、ホコリを水で流し出し、住みよい我が家にする。気持ちいいですね〜。空は青空。庭の隅に何か植えたと思ったら、突然雨が降り出す。水遣りの手間が省けたか(笑)。
職安の職員の横柄なこと。カウリスマキの映画で役所の人間が善く描かれた試しはありません。その反面、金の亡者のあの男、ロケンロールのライブを企画した本人にまで、そうとは知らず入場料を取ろうとするあの男は、なぜか憎めません。なぜだろう(笑)。
銀行強盗に入った男。彼の身の上話は、他人事じゃないと思う人が今の日本には大勢いるでしょう。一発の銃声が伝える悲しみ、憤り。世の中は本当に理不尽です。元従業員に給料と謝罪の言葉が届けられたことが、せめてもの救いでしょうか(涙)。
そして、恋です、恋(笑)。←なぜ、笑う(笑)。
恋も善き哉、幸せ哉。初恋だという女と、過去がないのだから、やっぱり初恋の男。でもね、初恋かどうかにかかわらず、恋愛初期症状のときめきは皆同じと思いたい。
しあわせって何だっけ。それは無理して笑わないこと。カウリスマキ作品ではおなじみの、無表情な登場人物のかすかな笑いを見ていてそう思ったことでした。

シネマLTG 県民文化ホール(グリーン) 2003/06/18


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