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エレファント
緩慢な絶望
Elephant
監督、脚本、編集:ガズ・ヴァン・サント|撮影監督:ハリス・サヴィデス|音響デザイン:レスリー・シャッツ(2003年/アメリカ/カラー/1時間21分/スタンダード)
アレックス:アレックス・フロスト|エリック:エリック・デューレン|ジョン:ジョン・ロビンソン|ジョンの父:ティモシー・ボトムズ

ガス・ヴァン・サントは、ここ数年『グッド・ウィル・ハンティング』や『小説家を見つけたら』など商業映画づいていていましたが、ようやく『ドラッグストア・カウボーイ』や『マイ・プライベート・アイダホ』の頃の詩的な映像表現に立ち戻ってくれました(拍手)。
流れる雲、どこからともなく聞こえてくるピアノの音、これだよ、これ!これでこそガス・ヴァン・サント!と快哉をあげるより前に、客席からスタンダードサイズのスクリーンを見た途端(つまり映画が始まるより前)、思わずガッツポーズだったんですけど(笑)。
今回、特筆すべきは、音でしょう。ありとあらゆる音が、普段聞こえるように、あるいは聴覚神経の働き如何によって増幅するように又は遠くに聞こえるように映画の中で表現されています。う〜ん、これは正しく詩人の感性でもって表現された音であると思います。

それにしても、なぜ、アレックスは、あんな事件を起こしたのでしょうか。いじめられていたからか、彼女もいなくてスポーツにも熱中できず、イーライのカメラみたいに得意なものがなかったからでしょうか。あんなに上手に「エリーゼのために」が弾けるのに?あるいは「月光」をうまく弾けなかったから?それとも両親と意思疎通できないから?簡単に銃が手に入るから?テレビゲームの影響?哀しいから?寂しいから?退屈だから?一人だったらできないけど、エリックがいたから?
結局、映画を観ても答えはわかりません。
ただし、登場人物の背後を付いて行くカメラが捉える背中は、どの背中も小さくて頼りなげだということはわかりました。

(『チョコレート』でヒース・レジャーが、「父さんは僕を憎んでいた。でも、僕は愛していた。」と言ったとき、『エデンの東』で父親に泣いてすがったジェームズ・ディーンの演技が古くさく思えたように、『エレファント』を観て、『理由なき反抗』の高校生はつらいな〜と(笑)。いや・・・あの・・・、全然別な映画だということはわかっていますが、そう思っちゃったんですよね〜(汗)。映画の表現の幅は、広がったものですね〜。)

『エレファント』は、コロンバイン高校の銃乱射事件に基づいて作られた作品ですから、観終わった後に名状し難いやりきれなさが残ります。しかしながら、時がたつにつれ作品の美しさの印象が強くなってきました。なんだか、哀しい美しさですねぇ。
シネマLTG 県民文化ホール(グリーン) 2004/8/27


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