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ジャーヘッド
待つ戦争
JARHEAD
監督:サム・メンデス|原作:アンソニー・スオフォード(2005年/アメリカ/123分)
アンソニー・スオフォード:ジェイク・ギレンホール|アレン・トロイ:ピーター・サースガード|クリス・クーパー|サイクス三等曹長:ジェイミー・フォックス

感動はしなかったけど、頭を刺激されて、おもしろかったです。
監督のサム・メンデスは、『アメリカン・ビューティー』『ロード・トゥ・パーディション』で確かな演出力を見せてくれたうえに、この作品では『フルメタル・ジャケット』『地獄の黙示録』『ディア・ハンター』を引用したりして、真っ当な映画ファンだったのね。ようやく私も気付きました。
彼の場合、「真っ当な」というところがミソです。映画狂の監督が、自作にのめり込んで、ややもすると破綻含みの(しかし、魅力的な)作品を作るのに対して、『ジャーヘッド』は狂いのない大人の演出です。うますぎて可愛げがないな〜(笑)。もっと壊れろ〜(笑)。

それにしても、「待つ戦争」に驚かされました。考えてみれば、戦争に「待機」は付きものです。兵士は命令を待つ。そして、待つ間何をするか。臨戦態勢のときは武者震いをしているかもしれませんが、待機時間が長い場合には……、オナニーです。乱痴気騒ぎもあります。気が触れそうにもなります。でも、やっぱりオナニー(笑)。というか、妻や恋人の浮気を心配したり、頭の中はセックスでいっぱいです。
兵士が行った性的虐待についてのニュースは最近もありましたが、思考することを制限される環境下においては、頭に浮かぶのはセックスだ、ということだと思います。
とにかく、この映画で初めて、戦争が待つものであることに気付かされました。

「武器を持っていると使いたくなるものだ。」これは中学生のとき、ある先生から聴いた言葉です。「そうかもね」と思っていましたが、実感としてわかったのは、この映画を見ている最中でした。
銃をぶっ放し、命中する「か・い・か・ん……」。それを味わいたい。ちょっと考えると、何のために屈辱的な訓練に耐えてきたのかとも思えるけれど、そんなことを考えなくても快感を味わいたいでしょう。
『セーラー服と機関銃』の薬師丸ひろ子もぶっ放すだけで快感だったわけではなくて、何かを破壊すること、溜めていたものを放出することが快感なわけです。
『地獄の黙示録』でヘリが、逃げ惑うベトナム人を追いかけるところなど、「行けー!やってしまえ!」という妙な昂揚感を味わったのは私だけではないと思います。訓練された兵士でもないのにこれですから、武器を持たせたら大抵の人がやっちゃいたくなるのではないでしょうか。

主人公が体験した戦争は、何十万人という軍隊を送り込んで、何ヶ月も待ち続けたあげく、銃を発射することなく数日でけりがつきました。(こんな戦争映画を初めて見ました。)
しかし、そんな戦争ばかりではありません。これまで見てきた映画のような戦争体験をした人や、誰の想像も及ばない体験をした人もいるでしょう。この映画は、そこのところも短い場面でちゃんと描いています。
「どんな戦争も○○でない。……どんな戦争も○○だ。」という主人公のモノローグは、この映画を集約していると思います。戦争体験は人それぞれですが、戦争自体はアホらしく無益・無意味だし、戦場に赴いた者はあらゆる意味で無傷ではいられないということではないでしょうか。

主人公は、戦後は見えない銃を持っています。
それがどういうことなのか(心の傷と言うのは簡単なのですが)、イマイチわからないので、考えてみなければと思っています。
戦友トロイは、除隊してもジャーヘッドのままでした。本当には復員できなかったのですね。トロイにしろ、中南米から移住してきた人たちにしろ、怒りを持ってしかるべき人たちが、軍隊に生き甲斐を見出すというのは、哀しいことです。

TOHOシネマズ高知1 2006/2/18
 
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