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■かるかん>ゆれる|トゥモロー・ワールド
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ゆれる
弟、大揺れ
脚本、監督:西川美和(2006年/日本/119分)
早川猛:オダギリジョー|早川稔:香川照之|川端智恵子:真木よう子

幾重にもおもしろい!
つり橋から女性(真木よう子)が転落死。兄(香川照之)が殺したのか、事故か。目撃者は弟(オダギリジョー)のみ。真相は!?という点から見ても面白いし、兄弟の愛情(確執)という点から見ても面白いです。また、人の心ほど不確なものはないという心理的な面から見ても抜群の面白さ。人間の実存に迫る掘り下げがあると思いました。
演出に過不足なし。音楽もよかった。オダギリジョーも香川照之もベストアクトの1本になったと思います。

●ネタバレ感想

<真相は藪の中>
私は小学生の頃、幼友達と二人だけで稲刈りをしていて、鎌で幾針も縫うけがをさせたことがあります。しかし、この出来事が当初からよくわからないのです。怪我をしたのは右足の内側です。お互い向かい合っていて少し離れていましたので、私が怪我をさせたとなると友達は普通にしゃがむのではなく、右足を伸ばした格好で稲を刈っていたことになります。事実はそういうことだと思います。二人だけだったんだから、犯人は私以外にいません。でも、私としては、友達の足に鎌を振り下ろしたような気もするし(足だとわかったうえで切ったような気がするのが自分自身、怖いところ;;;;)、確かにそれは稲だったような気もします。友達も当時は何も言わなかったので、カマイタチではないかと言った大人の声も耳にしました。自分で自分を切った説もあったような(そりゃないでしょう)。
とまあ、友達には大変申し訳なかった出来事でしたが、当事者でもよくわからない出来事というのはあるものです。これは恐ろしさのあまり、記憶の塗り替えや消去をしてしまったからでしょうか。

そういうわけで、稔(兄)に鎌をかけられたことを知った猛(弟)が、「兄は智恵子を突き落とした」と記憶を塗り替えることはあるだろうし、反対に昔のフィルムを見て兄が優しかったことを思い出した弟が、「兄は智恵子を助けようとした」と記憶を塗り替える可能性もあると思います。記憶はいろんなことに左右されるのね。
要するに本当に何が起こったのか、猛自身、わからなくなっているかもしれないのです。だから、観る人によってどのような解釈も可能です。
しかーし、私が観ていて思ったのは、「兄は智恵子を突き落とした」でした。それは、猛がつり橋に戻って、何も見なかった風をして稔に話し掛けたときに思いました。事故を目撃したのなら、ありのままを話せばいいのです。稔が突き落としたのを見たから、見なかったふりをしたのだと思います。私は彼が兄の犯罪を庇うつもりなのだと思いました。

<抉るように打つべし>
この映画では、兄弟の確執を「家を守る者」対「家を飛び出した者」としているところも一つの見所にしていました。父(伊武雅刀)と伯父(蟹江敬三)も「家を守る者」対「家を飛び出した者」だし。
家を逃げ出した猛は、頑固親父を我慢して家を守る兄に引け目を感じているし、尊敬もしています。優しい兄に愛情も感じています。
だから、兄を庇おうと奔走する猛を「やっぱりお兄ちゃん思いやね〜」と私は思っておりました。猛自身もそう思っていたことでしょう。
ところが、いやー、この映画、抉るように打ってきますねー。
面会室で稔の言ったこと「お前は俺を信じてなんかいない。最初から智恵子を殺したと思っている。お前は自分のために俺を犯罪者にしたくないんだ。」、これは図星!猛は、最初から兄が智恵子を突き落としたと思っていました。「犯罪者の家族になりたくないから奔走している」は、言い過ぎのような気がしますが、そんな気持ちが一滴もなかったかというと、そうではないでしょう。図星を指されたから、怒りが爆発したのです。
それにしても、事件前は微妙に距離感がある二人でしたが、この面会室では激突でした。この瞬間、二人に距離はなかったのですね〜。

<悪いヤツ>
しかし、弟、悪いヤツや〜!って、証言のことを言っているのではありません。どこで悪いヤツと感じたかと言いますと、冒頭、母の一周忌に出発するシーンで恋人にキスをしたときです。あれって、「行ってくるよ」のキスじゃないでしょ。「だまれ」のキス。しかも、相手は愛情のキスと思うであろうとわかったうえでのキス。
さらにですね〜、場面変わって「舌を出せよ」と来たもんだ。この征服欲、なんなんでしょー。(オダギリジョーだから許される、・・・・みたいな(笑)。)なかなかに悪魔的ですね。
だけど、智恵子が自分の写真集を持っているのを見て、本気の彼女にちょっと罪悪感を感じたりするのは悪魔としてはまだまだかな(笑)。それに、ガソリンスタンドで智恵子とわかったとき、サングラスで目を隠すのは、彼女をふっきれてないから?若いときに本気で好きだったから?う〜ん、面倒くさいから(心の準備が出来てなかったから)逃げたってことか(笑)。
それにしても、つり橋事件で落ちた智恵子を助けに行かず兄のところへ行くなんて、観ているときは「智恵子よりお兄ちゃんを選んだか、兄弟愛やの〜」と思っていましたが、あの選択をする過程で彼の頭を駆け巡った思考を想像すると怖いかもしれません。(まあ、智恵子を助けるも何も絶望的な状態というのが映画の前提なんでしょうけれども。)

<ラストのその後>
稔のあの笑顔は、次の瞬間には掻き消えただろうと思います。でも、クレジットに掛かる歌が「うちへ帰ろう」と歌っていたので、いっしょに家へ帰ったんじゃないかな。
稔が智恵子を殺したのであれば、猛の証言は嘘ではないわけですが・・・・。
稔の立場で考えると、これまた色々パターンがあって長くなるのでやめておきます。
もし、私が稔なら、目の前でバスが止まって扉が開いたら、惰性で乗ってしまうかもです(笑)。

TOHOシネマズ高知3 2006/12/2
 
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トゥモロー・ワールド
映像は抜群
CHILDREN OF MEN
監督:アルフォンソ・キュアロン(2006年/アメリカ、イギリス/109分)
セオ・ファロン:クライヴ・オーウェン|ジュリアン・テイラー:ジュリアン・ムーア|ジャスパー・パルマー:マイケル・ケイン

よくわからない映画でした。お話に大きな欠陥があると思います。
でも、映像に力があります。「えーーー!?これをワンカットで撮るかーーー!!!」という撮り方の面と、美術さんの仕事かな(?)映っているものに何もかも現実味がありました。この映像パワーは、スクリーンで観てよかったです。
そうなると、とほほなストーリーが益々憎いねー(笑)。

人類が原因不明の不妊症になってから18年。19年目にしてやっと授かった子どもを、政府やテロリスト集団の追っ手を逃れ、戦闘の最中をかいくぐり、英国外へ脱出せしめるというお話は単純明快なようでいて、なぜ、子どもを政府やテロリストに任せちゃおけんのか、また、いまや暮せるのは英国しかないという風に移民が押し寄せているのに国外に子どもを育てるにふさわしい場所があるのか、それらがまったく不明のままで、「???」に終始した作品でありました。これでは命がけで母子を脱出させようとする主人公に感情移入できるわけないですよね。(例外:ジャスパー絶命のシーン)
う〜ん、待てよ。主人公の従兄で政府高官という人物を見ていると、政府に任せちゃおけんというのはわかるなぁ(笑)。それにしても、なぜ、テロリスト集団が仲間割れしているのか不明。
まあ、もう、お話はどうでもいいです(笑)。

ワンシーン、ワンカットの撮影にも増して素晴らしいと思ったのが美術です。まるで灰をかぶったようなロンドン。ダブルデッカーは、おんぼろ。駅の構内は落書きだらけ。微妙に近未来な街にリアリティがあります。冒頭の爆発シーンは、臨場感があってドキリとしました。雰囲気も厭世的と申しましょうか、だる〜い感じがよく出ていました。この辺は、クライヴ・オーウェンの演技も物を言ってたかも。
方やジャスパーの隠れ家は、暖色で居心地がよさそうで素敵でした。ジャスパーって風貌がジョン・レノンみたいって、ちょっと思いました。
テロリストが、捕まえたセオの目隠しを解く場所もよかったです。新聞紙を張り詰めたおしゃれ(?)な小部屋。
鹿が出てきた廃墟もいい感じ。
おしまいの戦闘シーンもなかなかのものでした。
霧の中のボートにブイもよかったけどねー。

TOHOシネマズ高知1 2006/12/2
 
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