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■かるかん>歓びを歌にのせて|カポーティ
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歓びを歌にのせて
集って歌えば、そこは天国

予想外にと言っては失礼ですが、面白かったし感動しました。
なんと言っても主人公ダニエル・ダレウス(ミカエル・ニュクビスト)が魅力的でして、女性にモテモテというのが肯けます。子どもの頃から音楽の才能があり、その道一筋。世界的指揮者として恋をする暇もなく働いてきているので、世間ずれしていないのです。純粋なまま大人になって、他人の痛みに敏感な繊細さを合わせ持つ、ごっつい顔のおじさんてラブリ〜(笑)。

この「箱入りおじさん」が、病気のため第一線を退き、田舎で素朴な人と触れ合ううち「箱から出る」喜びを知るという話なら想定内だったのですが、それだけではなかったのですねぇ。
ダニエルといっしょに楽しく歌ううち、登場人物のそれぞれが箱から出たり鎖を断ち切ったり。自由になるのがダニエルだけじゃないところが面白かったのです。
デブと言われ続けて35年。積年の鬱憤を爆発させた人。勇気を奮い起こしてDV夫から逃げ出した人(ヘレン・ヒョホルム)。コチコチの牧師であるためセックスも儀式のような夫(ニコラス・ファルク)と念願かなって燃えた人。
他にも、こんな人いるいる!のアーネ(レナート・ヤーケル)、明るく優しくグラマスなレナ(フリーダ・ハルグレン)とか、キャラクターが揃っていました。
しかし、北欧の人は我慢強いですね〜。35年とか、それほど我慢しちゃいかんろう!自分の本当の声で歌う(=自由の翼を得る)ことで初めて飛べたということでしょうか。

それにしてもスウェーデン人は、よっぽとキリスト教に抑圧されているのですね(?)。ベルイマン監督もキリスト教の呪縛を嫌っていた(『ファニーとアレクサンデル』)ように思いますが、この作品の脚本家であり監督であるケイ・ポラックも神を否定しないまでも、教会がいかに人心を束縛するかハッキリと台詞にしています。
あそこまで台詞にしなくても、教会から人が去り、ダニエルの元に集まることで充分教会批判、若しくは理想の教会像の提示になっていると思います。(野暮な演出も取ってつけたような展開も、この映画の場合、味になっているので無問題ではありますが。)

朝日新聞高知総局 高知県立美術館ホール 2007/4/14
 
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カポーティ
作家よりも殺人鬼

う〜ん、イマイチかなあ。もっと濃い心理的葛藤を描いた作品かと思っていました。というか心理的葛藤はあるのですが、全然可哀想じゃないんだもの。>カポーティ
カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)よりも殺人鬼ペリー(クリフトン・コリンズ・Jr)の方が可哀想で魅力的で・・・・・、もっと彼のことを知りたいので「冷血」を読みたくなりました。
処刑前にペリーは、自分を逮捕したアルヴィン(クリス・クーパー)に握手を求めるんですよ(涙)。

この映画を見ると、作家って冷血じゃないと務まらないことがわかります。「(ペリーを)助けられなかった」と言うカポーティに親友ネル(キャサリン・キーナー)の電話の声は冷たいです。「助けたくなかったんでしょ」(図星)。
ネルも作家だからねー。冷血なのよ(笑)。

この嘘つきナルシストの言葉は、いつも捻りがあって、文字どおりに受け取ってはいけないと思います。そのへん、ネルなんかはよくわかっていて、「ペリーと僕は例えて言えば、同じ家に住んでいたのに僕は表から彼は裏から出たという関係」とカポーティが珍しく本心を言ったにも関わらず、「あら、それはどういう意味かしら」と考えをめぐらそうとしています。
ただし、ペリーとの面会時のカポーティは、たくらみがあったにせよ(必要に迫られて嘘をついたり、突き放したりしたけれど)、他のどんな時よりも真摯であったと思います。

朝日新聞高知総局 高知県立美術館ホール 2007/4/14
 
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