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ラスト、コーション
裸のつきあい、本気は怖い

大河の流れに身を任せ、たっぷりと濃密な時間を過ごせたような気がします。久々に映画を観たという感慨に浸れました。
抗日女性工作員チアチー(タン・ウエェイ)と、日本の傀儡政府の特務機関長イー(トニー・レオン)の恋愛映画と言ってしまえば簡単ですが、恋愛映画の甘美さは皆無。(大学生時代のチアチーとクァン(ワン・リーホン)の相思相愛風味が微笑ましかったくらい。)チアチーとイーの性愛シーンは、壮絶で痛かったです。本気と本気のぶつかり合い。どちらも攻めの行為なもので(汗)。二人は本気になればなるほど、相手を優しく受け止めるなんてことは出来ないのです(涙)。

イー長官は、他のご夫人方とのアバンチュール(?)においては、優しくなれたかもしれません。でも、それはうわべの優しさ。冷酷非道に職務をこなし、抗日分子に暗殺される危険に身をさらし、誰にも頼れず誰をも信じられず、孤立しているこの状況において本心をさらけ出せば、恐怖の裏返しに攻撃的になって、あのような悲痛な性愛シーンになるのも無理はないと思います。
一方、チアチーの方では、工作員とばれないよう常に緊張を強いられた状態で、失敗すれば自死しろと命令されている捨て駒。母には死なれ、イギリスにいる父は再婚し、チアチーを呼び寄せる気配はありません。何も言わず何もしてくれないクァンのことはとうに諦め、戦時下において目的を持とうと思えば抗日工作でもするしかなく、でも、その抗日の仲間の中でも孤立無援の状態なのです。
このように孤立した者同士が、魂の結びつきを得るのは、物語においては当然でしょう。
そして、イーが本気になれば、相手の本気を求めるのも当然で、身も心も暴くような攻め方にもなるでしょうし、チアチーも受けて立つしかなかったんでしょうね。(チアチーは秘密も守らないかんしね。攻撃こそ最大の防御(汗)?)

イーにとってチアチーは、本気を受け止めてくれた心を許せる相手。チアチーにとっては、本気でぶつかってきてくれた、これまでにない相手。いよいよ、暗殺の日となって、そのときチアチーはどうしたかというと・・・・・。

●ネタバレ感想

うん、そりゃ、そうでしょう。「殺したくない」その一念。
チアチーの不穏な様子にも、決定的なセリフを聴くまで全く疑うことがないイーもよかった(涙)。その後、足の速いのもよかった(笑)。←いや、本当に逃げるときは、あのくらいじゃないとね(マジ)。

失敗したら死ねと言われていたチアチーですが、彼女は自殺しませんでした。だって、彼女は失敗したわけじゃないもの。チアチーは自らイーを生かすことを選択したのだもの。どうして、自分を利用しただけの人の命令に従わなければならないのでしょう。そんな命令になんか従わない(拍手)。
いっしょに捕まって、いっしょに処刑される仲間にもすまないなんて思わない。あなたたちの覚悟のなさはどうよ。チアチーは常に生きるか死ぬかというシン・レッド・ラインにいたわけです。
この処刑場面での私にとっての救いはクァンでした。他の仲間が泣き叫んでいるのに、彼は泣きませんでした。むしろチアチーといっしょに死ねるのが嬉しそう。まあ、嬉しそうは言いすぎかもしれませんが、チアチーに臆していた彼もこの場面では立派でした。

イーの喪失感については、チアチーが寝泊りしていた客間のベッドのシーツを撫でるシーンが、ひんやりとよかったですね。イー夫人が声を掛けるのもいい。夫の仕事柄もあるでしょうが、夫の全てを知ってはいけない(立ち入ることを許されていない)寂しさが伝わってきました。

しかし、トニー・レオン、難役に挑戦したなぁ!ハッキリ言って、この特務長官は好きになれなかったので、「こんな役やっちゃ、いやぁ〜ん」と思ったのです。だけど、うまいよな〜。
タン・ウエェイは、新人なんですって!?素晴らしかったですね。
ちょっと気になったところは、大学生時代の若気の至り工作。あんまりリアリティがなかったです。抗日運動を彼ら以外もしていたら、当時の学生の雰囲気ってこうだったかもと思えたかもしれませんが、背景がわかるようには描かれてなかったので、一介の学生がそこまでやるかと思いました。
また、チアチーの正体をつかんでいた部下が、イー長官に報告しなかったのは解せないなぁ。
先日観た『アメリカン・ギャングスター』は色々なことが様々な角度で描かれた映画だったけど、『ラスト、コーション』はたった一つのことがじっくり描かれた映画でした。

TOHOシネマズ高知3 2008/2/9
 
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