クスクス笑えました。三木聡監督は『亀は意外と速く泳ぐ』しか観たことがないけど、のほほんとしてそれほど主義主張があるようには思えませんが、狙わずして（？）妙に伝わってくるものがあります。私の感度がよいのでしょうか（笑）。

『転々』では、血のつながった両親にも養父母にも「家族」を感じることができない青年（オダギリジョー）と、昔息子を亡くし、今妻を殺した元取り立て屋（三浦友和）と、一人暮らしのバーのママ（小泉今日子）が、バーのママの姪の手前、家族を演じることで家族のいいとこ取りができていたのがイイ感じでした。やっぱり血のつながりより心のつながりだよな〜と再認識させてくれました。そこで思い出したのが、息子や娘に冷たくされた尾道の夫婦が、亡くなった息子の嫁には優しくされる『東京物語』。嫁の方でも義父母に真情を吐露するし、このようなつながりを家族と呼びたいものですね。そんなこんなで『転々』は、形を変えた『東京物語』だと思ったのです。
崖の匂いがするとかゴムの匂いだとか、へらへらと笑わせてくれるオフビートコメディですが、父親とジェットコースターに乗って、下で待っている母と妹を眺めるシーンなど、淡い人のつながりが切なくも思えました。