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あの日、欲望の大地で
罪と罰
監督:ギジェルモ・アリアガ/アメリカ/2008年/106分
原題:THE BURNING PLAIN

素晴らしい!疼くような痛さのドラマだった。どの登場人物も作り手に愛されているような感じがする。一人として嫌な人物がいない。一人一人の胸の内がよくわかり、どの人物の行動も否定的に見ることはできなかった。ジーナ(キム・ベイシンガー)とニック(ヨアキム・デ・アルメイダ)のW不倫でさえ「哀しい〜。美しい〜。どこが悪いの?」と思ってしまった。←他人事?(えへへ)
もちろん、俳優もよかった。なかでも、シルヴィア(シャーリーズ・セロン)の少女期であるマリアーナ(ジェニファー・ローレンス)に感心。性格に一貫性があって「マリアーナ長じてシルヴィア」に納得感がある。マリアーナが長子として幼い弟妹の面倒を見ていたのが、ポートランドのレストランで給仕長として采配を振るう姿に重なり、脚本も巧みだと思う。(シャーリーズ・セロンは、あんな寸胴だったっけ?役作りでウエスト改造したんじゃないかな?デ・ニーロアプローチに負けてないよね!)
脚本で思い出したけど、シルヴィアがレストランのコックに「私と一緒に逃げて」という場面の後に、マリアーナがサンティアゴ(J・D・パルド)に「逃げて!」と電話する場面につながるなど、時制をバラバラにして描く意味も感じられた。
また、燃え上がる平原や荒波逆巻く東尋坊(?)など、ナイスショットな映像がドラマチックであると同時に人物の心象風景にもなっているような気がする。監督デビュー作とのことだが、早くも堂に入っている。

不倫はどんなに切実で美しくても、配偶者や子どもにとっては罪なことだと思う。マリアーナにしてみれば、両親がセックスレスなんて知らなかったろうし、母の心の傷に気がつかなかっただろうから、母が嘘をついたり弟が怪我をしたことも知らず逢瀬を重ねるのに怒りが湧くのは当然だ。それに、彼女は子どもだったのだ。母を懲らしめようとあのような行動に出て、思わぬ結果になったマリアーナに同情こそすれ責める気にはなれない。その後の彼女が重い秘密を抱えて自傷行為を繰り返し自棄的に生きているのは見るからに痛々しい。刑務所に入った方が償っている感じがしてよっぽど気が楽だったかもしれない。意識のないサンティアゴにだけれど、とにかく言葉にして打ち明けられて本当によかった。彼女は充分罰を受けた。これからは、サンティアゴとマリア(テッサ・イア)と親子三人で幸せに暮らしてほしい。現代の「ロミオとジュリエット」はオリジナルより複雑で、ハッピーエンディングと行きたいものだ。

シネマ・サンライズ 高知県立美術館ホール 2010/1/22
 
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