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■かるかん>シャーロック・ホームズ|黄金花 秘すれば花、死すれば蝶
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シャーロック・ホームズ
よっ!ご両人!
監督:ガイ・リッチー/アメリカ/2009年/129分

グラナダTVのホームズ・シリーズが、人物にしても19世紀末のロンドンの雰囲気にしてもイメージどんぴしゃだったワタクシとしては、ロバート・ダウニーJrがホームズを、ジュード・ロウがワトソンを演じて、ガイ・リッチーが演出するとなるとクラシカルなホームズは望むべくもなく、いったいどんなホームズになるのか、かえって楽しみにしていた。観てみて、これはホームズファンほど楽しめる映画ではなかろうかと思った。映画でホームズがマントルピース上部の壁にVR(ヴィクトリア女王)と弾丸を撃ち込む場面で、「小説ではこの音はわからなかったなー」と感心した。蝿回り実験の場面では、そうそう、死体をぶっ叩いて死後硬直だか内出血だかの実験もしていたなーと、初期の頃のマッドサイエンティストぶりを思い出しもした。また、ホームズの唯一の思い人アイリーン・アドラー(レイチェル・マクアダムス)が、峰不二子張りの手腕を発揮しながら、どこかしら愛らしさがあるのに好感を持った。確かアイリーンは、愛し合った男性と結婚したはずなのに、ホームズと両思い風なのはどういう経緯があったのか興味津々だ。ワトソンの婚約者メアリー・モースタン(ケリー・ライリー)は、「四つの署名」事件の依頼人だったはずだから、初対面として描かれているのは原作を改変したと思われる。メアリーがホームズに自分の経歴を推理してもらうところでワトソンが止めるのは、実はワトソンもホームズと同居しだして間もない頃だったと思うが、懐中時計から彼の父親のことを「飲んだくれ」などと推理されて、当たっているだけに傷ついた過去があるからだろう。そして、賭け拳闘(格闘技?)の場面では、日本伝来の「バリツ」とはこれなのか!?と楽しかった。だけど、こういう細かいことより、ホームズとワトソンの仲良しぶりがユーモアたっぷりに描かれていたことが嬉しい。

ホームズは奇人変人のたぐいで友達もいないから、唯一の友人で同居人で助手のワトソンが結婚を機に出て行くとなると、それはもう寂しい。寂しすぎる。そういうホームズの心境が描かれているのが、まずもってよい。また、ワトソンも冒険に対する好奇心とホームズへの友情から、ついついお手伝いしてしまうのがよいのだ。
造りかけのタワーブリッジやピカデリーサーカスのロンドン名所がさりげなく、しかもところどころ未舗装で描かれているのもよかった。
続編では、宿敵モリアーティ教授とアイリーンとの関係も描かれるのだろうか。汽車で郊外へも出向いてほしい(ダウニー・ホームズが、どんなに着崩すのか、インヴァネスコート姿を見たいではないか)。今からとても楽しみだ。

TOHOシネマズ高知7 2010/3/18
 
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黄金花 秘すれば花、死すれば蝶
走馬燈の神髄
監督:木村威夫/日本/2009年/79分

やられた。うるうるきた。予告編を見て破天荒な老人パワー炸裂の映画であって筋書きなどはないだろうと予想し、どれほどの炸裂ぶりかを期待していたものだから、感動させられるとは思いもよらなかった。
牧野富太郎博士から名前と植物愛を受け継いだ牧草太郎先生(原田芳雄)が主人公と言えば主人公だが、老人ホームで暮らす面々(役者:川津祐介、小町:松原智恵子、おなお:三條美紀、ピーナッツ:野呂圭介、おりん:絵沢萌子)のよなよなの行動や思念やらが可笑しくもしんしんと心に染みてくる。筋らしい筋はなく老人たちの過去と現在が、自明の未来を前にゆっくり回っていく。観る者は、差し出された数々のイメージを紡いで物語を完成させることができるし、未完成のままでもよい。ジグソーパズルのようでありながら、パズルのように一つに限られた完成形はなく、観る人それぞれが紡いだ物語を正解とする自由さがあるように思う。

●ネタバレ感想

しかし、どうして涙が出たのか不思議だ。親しい人が亡くなったという知らせを聞いて、みぞおちが冷たくなるような、一瞬世界が静寂に包まれるような感じがあった。それと同等の比重で、探し求めていたものを死の直前に授けられるありがたさ(何か褒美のような祝福されたような感じ)と、走馬燈に映る現実・非現実と叶わなかった願いが混ぜ合わされて、それもまた善し、それも含めて人生じゃないかという感じがしたのではないだろうか。このように言葉にすると陳腐だ。介護士長(松阪慶子)のしめの言葉、「うそ、うそ。ウソとホントの混ぜ合わせ。」の声音を耳にこだまさせて、しばし余韻に浸りたい。

あたご劇場 2010/3/19
 
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