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クロッシング
生活がある
監督:キム・テギュン/韓国/2008年/107分

う〜む、泣きどおしだった。私にとっては、それほど重くはなかった。むしろ後味が良く爽やかでさえある。それは、作り手がとてもやさしいからだと思う。

●ネタバレ感想

ジュニ(シン・ミョンチョル)が自転車の荷台にミソン(チュ・ダヨン)を乗せて走るシーン。穏やかなひとときが、ミソンのために(私のためにも)、ありがたかった。
乾ききった荒野で、雨が大好きなジュニの頬に雫が。その雫をきっかけにして、満天の星が降る中、楽しかった思い出が走馬燈のように現れては消える。
「アボジ(お父さん)」と呼ばれて振り返るヨンス(チャ・インピョ)。息子の姿は見えないけれど、父に降りそそぐ雨は温かい。
現実はもっと厳しくて、ミソンのような一時を持てないまま死んで行った子どももいるだろうし、末期に見るという走馬燈だってホントのところどうだかわからない。子どもを亡くして気が狂れた女性が登場していたが、子どもを亡くしたヨンスがどんなにか後悔するだろうと、その後の日々を想像すると可哀想でならない。
だけど、私にはこの映画に描かれた如何にもな収容所や憲兵(?)や、その他の辛いことよりも、詩的で美しくやさしい場面の方が印象深いし、後になって思い出すのはそういう場面だろうという気がする。

この映画はヨンスたちが炭坑で仕事し、その後シャワーを浴びるところから始まる。風呂あがりに着るシャツがボロボロで汚れているのに驚く。だけど、みんな屈託なくサッカーの話などして、労働の後のホッとした様子がうかがえる。貧しい食事の様子も描かれるが、子どもにたくさん食べさせようとする母もしっかり描かれている。「洋酒は二日酔いにならん」とか(笑)、ミソンの父(中国帰り)のセリフも可笑しく、家の中に物があふれ、ちょっと裕福な家はどんな様子かわかる。そのように生活の細かいところまで冒頭からよく描かれているので、どろんこサッカーのところで涙の防波堤が決壊した(早すぎ?)。つまり、ボロを着ていようが、芝のコートでなかろうが楽しみはある。「生きているんだ」ということだ。作り手は、このことを明確に意識して、エンドクレジットにおいても「生活」を描ききった。

作り手がこの映画を作ったのは、韓国でも日本と同様に想像力の乏しい人が少なからず存在するからではないだろうか。ヨンスについて「家族を残し亡命して自分だけ良い思いをしたいのだろう」と陰口を言う同僚(韓国人)が出てくる。そういう人たちは映画の外にも存在していて、北の国の独裁と貧しさを理由に暗いイメージしか持っていないのかもしれない。そういう人たちに向けて、暗いばかりではない(同じ人間で生きているという)ところを見てほしかったのではないかという気がする。もちろん、私のウルトラミラクル想像パワーを持ってしても、この映画のように具体的にイメージすることは出来なかったので、要するに知らない人向けってことかな。(やはり、かなりな取材をしたんでしょうね?)

その他のプチ感想
母を亡くしたジュニが、「母さんをたすける」という約束を守れなかったと父に謝る。私はジュニが、「早く帰る」という約束を守らなかった父をなじるとばかり思っていたので、「あー、そうやった!予告編で見ちょった。」と思いながら号泣。幼い子どもの責任感や気遣いに驚くことがある。もっと子供でいていいのに。
亡命を助ける韓国人も色々で、報酬目当ての人がいるのが「ふむふむ」だった。
後はモンゴル任せ。そんないい加減な(^_^;。(←報酬目当ての人とは別の人。)

あたご劇場 2010/10/28
 
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