ピックアップ>2011年高知のオフシアター・ベストテン選考会

まる画像外国映画73本
順位 作品名 主催者 観た人 × ポイント
(◎−×)
1 メアリー&マックス 高知県立美術館 8 7 0 7
2 127時間 シネマ・サンライズ 12 9 4 5
3 100歳の少年と12通の手紙 シネマ・サンライズ 10 5 0 5
4 冬の小鳥 こうちコミュニティシネマ 6 4 0 4
5 イリュージョニスト こうちコミュニティシネマ 7 4 0 4
5 霊長類 高知県立美術館 7 4 0 4
7 マイレージ、マイライフ 市民映画会 9 4 0 4
8 アンチクライスト 高知県立美術館 11 4 1 3
9 黄色い家の記録 高知県立美術館 5 3 0 3
10 ようこそ、アムステルダム国立美術館へ 高知県立美術館 6 3 0 3
10 ヤコブへの手紙 こうちコミュニティシネマ 6 3 0 3
  人生万歳! シネマ・サンライズ 13 6 4 2
  シチリア!シチリア! シネマ・サンライズ 12 5 4 1
  ハロルドとモード シネマ・サンライズ 8 4 2 2
  しあわせの雨傘 市民映画会 8 4 2 2
まる画像日本映画84本
順位 作品名 主催者 観た人 × ポイント
(◎-×)
1 その街の子ども 劇場版 とさりゅう・ピクチャーズ 7 7 1 6
2 トイレット とさりゅう・ピクチャーズ 12 10 5 5
3 森崎書店の日々 とさりゅう・ピクチャーズ他 6 5 0 5
3 ショージとタカオ 日本国民救援会高知県本部
四国文映社
6 5 0 5
5 江戸川乱歩の陰獣 ムービージャンキー
スタジオベルズ
12 5 0 5
6 ひろしま 小夏の映画会 6 5 1 4
7 劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴りやまないっ えいネ〜 9 6 2 4
8 奇跡 高知県芸術祭特選映画鑑賞会 8 6 2 4
9 あぜ道のダンディ とさりゅう・ピクチャーズ 8 7 3 4
10 東京公園 えいネ〜 13 4 0 4
  海炭市叙景 とさりゅう・ピクチャーズ 8 4 2 2

まる画像概況と歴史

2月5日(日)、朝日新聞高知総局の会議室にて、選考員16名(応募した映画ファン及び自主上映に携わる人)による、約4時間の愉快な遣り取りの末、2011年高知のオフシアター・ベストテンが選ばれました。速報は2月6日付朝日新聞高知版に載りました。参加者の一筆を含めた詳報は、後日掲載される予定です(2月23日付け朝日新聞高知版に掲載されました)。

オフシアター・ベストテンは、1999年からその前年に高知県内のオフシアターで上映された作品を対象に、主に自主上映に携わる有志の人たちにより選考されてきました。2003年に朝日新聞高知支局(当時)が主催に加わってから、今年で10回目となります。10回の間には、朝日新聞高知総局が、ベストワン作品(外国・日本)と高知未公開作品の計3本を無料上映した年もありました(2005年から2008年まで上映)。昨年は、選考会参加者が任意で集まり、2010年のベストワン作品と未公開作品の上映会を催しました。

そして、今年は初参加の方が4名おいでました(拍手)!他にも「いったいどんな会なのか」と関心を持たれた方の見学もありました。
「オフシアター・ベストテン」は、興業映画館で上映された作品を対象に高知新聞が募集している「県民が選ぶ映画ベストテン」ほどには知られていませんが、「オフシアター・ベストテン」を知っていただくことで、都会で上映されるような作品が高知でも"割と"上映されていることを知ってもらえるのではないでしょうか。

まる画像ルール

選考方法は以下の1から7までのとおりです。対象作品1本ずつ、「観た人」と「ベストテンに入れたい人」を挙手してもらい数えます。「ベストテンに入れたい人」の多さで「暫定順位」が決まります。ベストテンに入りそうな「暫定順位第1位から第13位くらいまで」の発表があり、暫定上位から自由に意見交換したうえで「ベストテンに入れたくない人」に挙手してもらいます。
うえの表の◎欄はベストテンに入れたい人の数、×欄は拒否票の数、ポイント欄はベストテンに入れたい人の数から拒否票の数を差引いた数です。ポイント数の多さでベストテンが決まります。

  1. 投票権は一人10票までで、1作品1票。
  2. 拒否権は一人3票までで、1作品1票。
  3. 投票結果を見て、拒否権を使いたい人がマイナス票を投票。
  4. 投票数とマイナス投票数の差引きポイントで順位を決める。
  5. ポイントが同点の場合は、得票数の多い作品を上位とする。
  6. ポイントも得票数も同じ場合は、観た人の少ない作品を上位とする。
  7. 投票をするまえに、自由に推薦や批判の弁を募る。

まる画像外国映画の順位について

外国映画は熾烈でした。
9票を獲得し、ダントツ暫定第1位だった『127時間』ですが、「映像がチカチカする」「自らを傷つけるのが気に入らない」「生死にかかわる問題なのに描き方が軽い」という意見がありました。音楽と映像がポップなので「ああいう手法は独自なものか」という質問があり、「独自ではない。MTVとかで既にある」という答えがありました。「生死の境にあるとき、何が支えになるか、如何に生き抜くかが描かれていて力があった。」という擁護もあり、深刻な話をエンターテイメントにしていることに対して、「エンタメにしてよいものか」という否定的意見もあれば、「そこがよいところだし、ダニー・ボイル監督らしい」と賛辞もありました。この意見交換後、拒否票が4票も入りましたが、その理由は必ずしも否定的なものではなく、「第1位でなくてもいい」「『メアリー&マックス』を上げたい」というものもありました。その『メアリー&マックス』は、 観た人8人のうち7人がベストテンに入れたいという高支持率。拒否票を投じる人もなく無事第1位が確定しました。オーストラリアの寂しい少女メアリーとニューヨークの孤独なおじさんマックスの文通から始まった長年の交流(人とのつながり)を描いたアニメーションで、ぜひ、多くの人に観てほしいと思います。

暫定第3位だった『人生万歳!』は、「これまでウディ・アレン監督本人が演じていた主人公を他人が演じてもちゃんとした作品になっている」という肯定的意見があったものの、これまでも本人主役で描いてきたゆえか「今更(同じネタ?)」という意見もあり、「第3位は高すぎ」「『冬の小鳥』を上にしたい」ということで4票の拒否があり、いっきに圏外へ。悪い作品ではなかったので、観た人が13人と多かったのが転落の要因となっているかもしれません。

同様の状況は『シチリア!シチリア!』にもありました。暫定第5位と高位につけていたにもかかわらず、観た人が12人と多かったためか、ベストテンに入れたい人5票に対し、「そんなによい作品か?長かった」「やり過ぎ」「詰め込みすぎ」と拒否票が4票。「戦前からの状況がわかった」という擁護もありましたが、「『ニューシネマ・パラダイス』などのように、過剰な演出が嵌るときはいいが、嵌らないときは凶と出る」みたいな分析もあり、吉と出ても凶と出てもトルナトーレはトルナトーレという結論のようです。

監督で言えば、暫定第9位『しあわせの雨傘』は、「オゾン監督にしてはよい」「オゾンならもっと良い作品がある」と意見が分かれていました。拒否票の理由は「カトリーヌ・ドヌーブ主演なら『クリスマス・ストーリー』という作品がもっとよい」「『ヤコブへの手紙』を上げたい」でした。『ヤコブへの手紙』は、観た人6人中3票の獲得で暫定ではベストテン圏外に位置していましたが、旧作で暫定第9位の『ハロルドとモード』に「『ヤコブへの手紙』を上げたい」と拒否票が入り、第10位に滑り込みました。『ようこそ、アムステルダム美術館へ』も『人生万歳!』『シチリア!シチリア!』などが転落したためベストテン入りしています。

特筆すべきは『アンチクライスト』でしょう。観た人11人中ベストテンに入れたい人は4人で暫定第12位でしたが、第8位に浮上。「観た当時は嫌悪感いっぱいで人生最悪の映画と思っていた。しかし、自分の結婚生活を振り返ってみたりするうち思いが変わってきた。子が死に母が狂う。キリスト教を否定するような描き方。これだけのタブーだらけの作品を高知県立美術館はよくぞ上映した。美術館のその姿勢に対しても、ぜひ、ベストテンに入れたい。」という強力な推薦の弁があったためか、お茶屋のつぶやき「冒頭の映像だけでもベストテン入りの値打ちがある」が皆に聞こえたためか(「『メランコリア』も予告編だけなら傑作だ」というつぶやきもあり)、常に物議を醸すトリアー監督作品にもかかわらず、拒否票がたった1票でした。

『アンチクライスト』の上映で誉められていた高知県立美術館は、フレデリック・ワイズマン監督の特集上映も行っており、選考会では、とっつきやすい『ボクシング・ジム』、衝撃作『霊長類』と話が盛り上がり、監督を招聘したことも含めて高評価を受けていました。
しかしながら、ジョアン・セーザル・モンテイロ監督の三部作を「なぜ、平日に上映するのか。観たくても観れない。」と言われてもいました。モンテイロ作品は、観た人が少ないにもかかわらず『黄色い家の記録』がベストテン入りしており、三部作について「ポルトガルの凄い監督。」「ルイス・ブニュエル系」「『アンチクライスト』よりもっとタブー。自分を神だと言っている。」などと言われると、お茶屋などつい「もっと宣伝してくれたら観に行ったのにぃ。美術館に淀川長治(伝道師)はいないのかっ!」とちゃぶ台をひっくり返したくなりました(ウソ)。

まる画像日本映画の順位について

日本映画もいろんな作品に拒否票が入っていますが、暫定ベストテンから転落したのは『海炭市叙景』のみでした。拒否の理由は「テレビっぽい。この監督が信用できない。」「『東京公園』を上げたい。」というものでした。

12人中10人が推した『トイレット』は、言葉がわからなくても理解しあえることを描いた感動作で、暫定第1位に輝いていましたが、「異文化の対立からのドラマで、お決まりのストーリー。」「もたいまさこが鼻につく」と否定的意見もあり、「この監督の作品はどれも乗れない。」という人も複数いて、中には「観てないので拒否権を行使できない(出来るものなら拒否したい)」と荻上直子監督はえらい嫌われようでした。また、「ベストテンに入れたいけれど、第1位ではないでしょう」というわけで、ベストテンに推していた人の中からも拒否票が入り、一時は『劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴りやまないっ』より下位になっていました。しかし、『かまってちゃん』暫定第2位の発表に「えー!!!」と声が上がり、「『かまってちゃん』が第2位でも、高知のオフシアター・ベストテンの見識を疑われることはない。入江監督も上映会に来てくれたし、高知で映画を撮ってもらうための投資ということで第2位でよい。」という強力擁護を黙殺するかのように(?)拒否票が入り、『トイレット』が第2位に落ち着きました。

『トイレット』大量拒否票のおかげで、『あぜ道のダンディ』『奇跡』も一時、上位に浮上していましたが、『あぜ道のダンディ』は「上位すぎる」、『奇跡』は「『誰も知らない』『歩いても、歩いても』で是枝監督の小賢しさが抜けたと思ったのに、頭でっかちにもどった。」「この監督作品好きだし、子どももロードムービーも好きなのに、よく思い出せないほど印象が薄い。」という理由で拒否票が入り、ご覧の順位となりました。

第3位となった『森崎書店の日々』『ショージとタカオ』は、観た人が少ないながらも高支持率で拒否する人もありませんでした。6人中5人が推すこの2本と並んでいた『ひろしま』は、「同時上映のドキュメンタリー『予言』が更に凄かった。」という理由で拒否票が入り、第6位となりました。

『江戸川乱歩の陰獣』については、「1977年の作品を2011年のベストテンに入れてよいものだろうか。」という疑問が投げかけられましたが、「旧作だが他の新作より確実に面白い(賛同多し)。」「『二十四の瞳』をベストテンに入れるのとは違うからいいのでは。」という意見があり、第5位となりました。これまでもオフシアター・ベストテン選考会では、力のある旧作が上映された場合、上映されたことを記念して下位でちょこっとベストテン入りすることはありましたし、いくら力のある旧作でも『西鶴一代女』や『ローマの休日』がベストテン入りすることはなく、絶妙のバランス感覚と言えるかもしれません。

栄えある第1位は、「『奇跡』を上位にしたい。」という理由で拒否票が入ったものの、7人中7人が推していた『その街のこども 劇場版』となりました。幼い頃に阪神淡路大震災を経験した男女(佐藤江梨子と森山未來)が、震災15年目に偶然神戸で出会い、それぞれの心の傷と向かい合い、新たな一歩を踏み出していくという作品のようです。東日本大震災の年に上映され第1位になったのは、選んだ皆さん、何か思うところがあったのでしょうか。

まる画像選考結果表(情報提供:高知のオフシアター・ベストテン選考会事務局)

ベスト10及びベスト11以下の得点が一覧になっています。また、選考の対象となった作品(2011年に高知のオフシアターで上映されたほとんどの作品)がわかります。
選考結果表(PDFファイル 161kb)

まる画像第57回県民が選ぶ映画ベストテン(2011年12月19日高知新聞より:応募総数365通)

外国映画

  1. 英国王のスピーチ
  2. パイレーツ・オブ・カリビアン 命の泉
  3. ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2
  4. 猿の惑星 創世記 ジェネシス
  5. ブラック・スワン
  6. 三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船
  7. マネーボール
  8. ツーリスト
  9. アンストッパブル
  10. トランスフォーマー ダークサイド・ムーン

日本映画

  1. ステキな金縛り
  2. コクリコ坂から
  3. SP革命篇
  4. 阪急電車 片道15分の奇跡
  5. 探偵はBARにいる
  6. SPACE BATTLESHIP ヤマト
  7. 相棒−劇場版II−警視庁占拠!特命係の一番長い夜
  8. 最後の忠臣蔵
  9. 八日目の蝉
  10. アンダルシア 女神の報復