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■鬼の対談>西日本『カノン』会議(前編)
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始まりは、一つの書き込みだった。


 
チネチッタ高知掲示板

●『カノン』見るべし シューテツ 2000/10/30 (月) 12:33

お茶屋さんご無沙汰しております。シューテツです。
先日『カノン』という映画を見たのですが、何故だかこれは絶対にお茶屋さんに薦めなければと思いました。f^_^;;
いやいや、凄い映画でした。気に入られるかどうかは解りませんが『河』やパゾリーニが気に入られたお茶屋さんなら必ずこの映画の凄さは理解していただけると思います。
この映画そちらに行くかどうかは解りませんが出来れば劇場で是非見て下さい。
ではでは。

 

●Re: 『カノン』見るべし お茶屋 2000/10/31 (火) 21:38

シューテツさん、いらっしゃいませ。おすすめ、ありがとうございます。
実は某所でシューテツさんの感想を「へ〜、そんなによかったのか〜。」と、しごく冷静に読んでおりました。つまり、シューテツさんの熱い感想を持ってしても「よっしゃ〜!」という気にはなっていなかったのですが、しか〜し、「絶対にお茶屋さんに薦めなければと思いました。f^_^;;」と、「『河』やパゾリーニ」ということであれば、必ずや観させていただきます。 どうやら、高知でも自主上映で観る機会がありそうですし。
私も気に入るかどうかはわかりませんが(^_^;、観たら必ずKUMONOSUの掲示板に書き込みに行きますね。
なんだか楽しみだ〜(^^)。
そりでは!


 
お茶屋はシューテツ氏の書き込みを嬉しく思い、『カノン』を楽しみにする一方、暴力描写がものすごそうなので、上映日がせまると妙に弱気になっていた。


 
KUMONOS掲示板

●感想 お茶屋 2000/12/10 (日) 23:43

シューテツさん、私ビビッているんですけど(^_^;。


●Re: 感想 シューテツ [URL] 2000/12/12 (火) 00:22

お茶屋さん。
近頃の映画って「癒し系」とか「お馬鹿映画」とかが圧倒的に多く、たまにこういう映画を見せられると頭から冷水をかけられた様で、「あっ、これなんだ!」って感じで、久しぶりに出会えた映画に対する情熱の原点回帰というか、なんだか心の底からの嬉しさと震えを感じました。


●Re^2: 感想 お茶屋 2000/12/17 (日) 23:57

予告編を見ました。 思っていたより静かな感じがしました。 もっとギラついた感じかと思っていたもので。 いよいよ、あさっての上映です。


●Re^3: 感想 シューテツ 2000/12/19 (火) 01:19

さぁ〜て、本編や如何に!。バゴーーン!!(←未見の者には意味不明f^_^;;)


 
シューテツ氏の言葉にそそられて、 ついに『カノン』を観てきたお茶屋は、約束どおり感想を書込んだ。


 
KUMONOS掲示板

● 『カノン』 お茶屋 2000/12/20 (水) 12:39

観ましたよ〜。
頭痛薬を飲んでも治まらない頭痛をかかえて。
バコーーン!は頭に響きました。
あのお父さん負のパワー全開でしたね。
ああゆうところは、私にも何パーセントかあるわけでして、決して好きにはなれないけれど、私は拳銃を持っていないし理性も若干残されているので助かってます。あのお父さんの様子を見て、私は色々なものに救われているんだな〜と思いました。
あのお父さんも唯一の救いがあってよかった。というかよかったという言葉はふさわしくないような気がするけれど、とりあえず私はあのシーンに泣けました。「えっえっ」とこみ上げて来るものがあったぞ。
それまではバコーーン!にかなり神経を魚で(もとい逆撫で)されたけど。
それにしても、ひとつしか救いがないというのは哀しいな〜。救いという言葉もしっくりこないけど、とりあえず。←こればっかで、ごめん。
以上、とりあえずの感想です。

ところで、パゾリーニや『河』よりも『タクシードライバー』だと思ったのですが。
私はトラヴィスにも救われてるからな〜。もし、『タクシー・ドライバー』と同じころに『カノン』を見ていたら、あのお父さんにすごく共感したかもしれません。

 

●Re: 『カノン』 シューテツ 2000/12/22 (金) 01:26

お茶屋さん。

>観ましたよ〜。
>頭痛薬を飲んでも治まらない頭痛をかかえて。

えっ、そんな状態でご覧になったのですか。私も偏頭痛持ちなのでそういう状態で映画を見る事はしょっちゅうですが、よりによってそういう状態で最も見たくないような映画だったですね。f^_^;;

なんと言葉をかけていいのやら・・・、ご苦労様でした。映画のせいで余計に頭痛が酷くなりませんでした?。しかし、以前お茶屋さんとの会話でだったと思うのですが、私も頭痛では絶対に見たくない映画といえば『ソドムの市』と『Hole』をその状態で見た事を思い出しました。あの時も辛かった。f^_^;;

>バコーーン!は頭に響きました。

あれは頭痛でなくても響きますよ。(笑)ああした音響効果も含めて劇場で見て欲しかったのですが、裏目となりましたね。

>あのお父さん負のパワー全開でしたね。

それでこそ賛否両論となるわけですね。「負のパワー全開映画」って今までにも沢山見てきましたが、この手の映画というのはどうやらかなりの相性があるようで、全く拒否反応を示してしまうものと、何故だかもの凄く痛い映画でありながら、わが事の様に共感(←この言葉は微妙に違うのですが適切な言葉が思い浮かばない)してしまう映画と極端に別れるようです。だからこそ色々な人の違った感想が聞きたいし、またその感想そのものに今のその人自身が顕著に現れてしまう恐い映画となってしまうのですが・・・。

>もし、『タクシー・ドライバー』と同じころに『カノン』を
>見ていたら、あのお父さんにすごく共感したかもし
>れません。

だから、時間をおいて見る度に違う気持ちで観れる種類の映画と言えるかも知れませんね。例えばこの前WOWOWで『マイ・プライベート・アイダホ』というこれも「負のパワー全開映画」を観ましたが、こちらは主人公の年齢にもよるのか、今の私には何故だか全然ダメでした。(決してダメな映画では無かったのですが・・・。)

ではでは、無理してお願いして観ていただいた様で大変に申し訳ありませんでした。しかし、大変に興味深く読ませていただきました。有り難うございました。m(_ _)m


 
一方のツリーでは、『カノン』で泣いたお茶屋に同士の名乗りをあげた御仁が!


 
KUMONOS掲示板

●Re: 『カノン』 篠田 2000/12/20 (水) 23:11

横入りすみません。
あ、お茶屋さんはじめましてです。

>とりあえず私はあのシーンに泣けました。
>「えっえっ」とこみ上げて来るものがあったぞ。

やった、初の同士だ!!
何て素敵な人なんだ、お茶屋さんて
高知最高やきーにー(笑)

ところで劇中「蜘蛛の巣が・・・・」というセリフがあったと思うの ですが憶えておられますか?
見終わって気になったセリフを頭の中で反芻しててこことシンクロしましたよ、オッ!て思った。
その時点で脳内メモリーが既にオーバーしてたのではっきりとは憶えていられなかったのですけども。
そういう効果を狙った過剰なるセリフ攻撃にも思えましたし)
パンフ売ってなくておまけに再見も出来なかったのでいくつか 再度確認したかったセリフもそのまんまになってます。
シナリオとかあったらまた確認してみたいなとは思いますが。

 

●Re^2: 『カノン』 お茶屋 2000/12/25 (月) 00:00

篠田さん、はじめまして。
お返事が遅くなり申し訳ありません。
(自分のHPの掲示板でもこんな調子で困ったもんですσ(^_^;。)

>やった、初の同士だ!!
おお!(握手)
篠田さんのHPで『カノン』の感想を拝読しました。
やっぱ、泣けますよね〜。>あのシーン
ただし、泣けない人の気持ちもわかりますよね。

>高知最高やきーにー(笑)

広島も最高じゃけ〜の(笑)。
『新・仁義なき戦い』の予習にオリジナルを見ましたもので。

>ところで劇中に「蜘蛛の巣が・・・」というセリフがあっ
>たと思うのですが憶えておられますか?

う〜ん、残念ながら覚えがありません。
あのお父さんのぶつぶつの中のセリフですよね?
あれはほとんどBGMのような感じで聞いておりましたもので。


●Re^2: 『カノン』 シューテツ 2000/12/23 (土) 00:43

篠田さん。

>ところで劇中に「蜘蛛の巣が・・・」というセリフがあっ
>たと思うのですが憶えておられますか?

いや、憶えてないですねぇ。f^_^;;
今度パンフレットで確認しておきます。(って、あの台詞の洪水を読み直す気力があるかなぁ〜。f^_^;;)

>(そういう効果を狙った過剰なるセリフ攻撃にも思えま
>したし)

確実にそうですね。意味よりもショックを与える為の、まさに台詞の弾丸でしたね。(だからセンテンスの最後にバコーン!)


 
そして、また『カノン』ツリーに新たな参加者が加わった。


  [うえ↑]


 
KUMONOS掲示板

●私も観ました。 ヤマ 2000/12/21 (木) 13:49

シューテツさん、先頃は嬉しい書き込みをありがとうございました。
私もお茶屋さんと同じ日に『カノン』観ましたよ。
シューテツさんがシリアス部門で、今年No1.に挙げておいでの作品だけあって、いつの間にやらそこそこ数だけはこなしてきている私でも、思わず戦慄してしまいましたね。
六年前に『カルネ』を観たときは、奇妙なテイストを刻み込まれながらも、それほど強く印象づけられたわけではなかったのですが、今回は強烈でした。
昨夜、例によって日誌に綴りはしましたが、HPに顔出すのは随分先のことになりそうです。
自分の日誌を綴り終えたところで、私もシューテツさんが綴っておいでのように、いろいろな方の御意見を読んでみたいと思いました。
どこかご推奨のレビューがあれば、教えて下さい。

 

●Re: 私も観ました。 シューテツ 2000/12/23 (土) 00:41

ヤマさん。

>私もお茶屋さんと同じ日に『カノン』観ましたよ。

あっ、そうなんですか。でも、ひょっとしたらご覧になられたかなとも思っていました。f^_^;;

>六年前に『カルネ』を観たときは、・・・

私は観ていないのですが、ちょっと観てみたい気持ちがあります。

>昨夜、例によって日誌に綴りはしましたが、
>HPに顔出すのは随分先のことになりそうです。

おお、早く読みたぁ〜〜〜い。(笑)もし、よろしければメールででも先に読ませていただけないでしょうか?。f^_^;; ぜひお願いします。m(_ _)m

>どこかご推奨のレビューがあれば、教えて下さい。

とりあえずHPは見つけました。
http://www.canon-jp.com/

あと、ニフティの映画フォーラムの「100万人の映画評」でも少しだけですが、UPされていましたね。
http://www.nifty.ne.jp/forum/fmovie/

 

●Re^2: 『カノン』 お茶屋 2000/12/25 (月) 00:02

シューテツさん、こんばんは。

>私も頭痛では絶対に見たくない映画といえば『ソド
>ムの市』と『Hole』をその状態で見た事を思い出し
>ました。

そうでしたね!
『カノン』をすすめていただく際に、同じ監督を上げられたのが奇遇ですね。

>ああした音響効果も含めて劇場で見て欲しかったの
>ですが、

あの神経を逆なでする衝撃音は、好きにはなれないけれど演出としては大した物だと感心しています。私はあれは、あの男の怒りの象徴に思えました。 「センテンスをしめくくるピリオド」というのも、ふむふむ(^^)。

>またその感想そのものに今のその人自身が顕著に
>現れてしまう恐い映画となってしまうのですが・・・。

そのとおりだと思います。だから、下手なこと書けんぞ(笑)。
でも、私は正直に自分の中にこの男のような部分があることを認めます。
頭の中では殺人も犯しておる。いや、殺すつもりはないのですが、屋外でタバコを吸って私の吸う清浄な空気を汚染するやからに対しては、もののけ姫のごとく空中に飛び上がり、当該人物の脳天めがけて刃物を振り下ろします。すると脳天からクジラの潮吹きか噴水のごとく、ぴゅーっと血液が放射されるのであります。これは直接、当該人物に「やめてくれ」とお願いできないがゆえの妄想であります。『カノン』の父親は、おどろくほど外部に対して自己表現をしない寡黙な人物で、自己表現できないことにも問題がありますね。

>無理してお願いして観ていただいた様で大変に申し
>訳ありませんでした。

え、そんな。私はシューテツさんと語り合うつもりでおりましたのに。だから、先のはとりあえずの感想のつもりでしたのよ。

>しかし、大変に興味深く読ませていただきました。

それが・・・(^^;。
実は、揉み揉みシーンについて不愉快に感じたことを自分の中で納得させていたため、ここには書かなかったのですが、そのシーンが大変重要であることがヤマちゃんの話でわかりまして、自分の感想も整理整頓し、「チネチッタ高知」へアップしました。お読みいただければ幸いです。
それと、掲示板の方にも実に清々しい感想をアップしてくださった方がおいでますのでお知らせします。(既にお読みかもしれませんが。)


 
というわけで、ここで「きまぐれ日記」と清々しい感想を。



 


きまぐれ日記12月24日
『カノン』ギャスパー・ノエの罠(抄)
注意
注意!
感受性を傷つける
危険なネタバレがあります。


22日金曜日のこと、『カノン』についてヤマちゃんの「ギャスパー・ノエの罠」説を聴いて大変おもしろかったのでご紹介します。以下の構成は、まず、『カノン』を観ての私の感想、次にヤマちゃんの罠説、そして、罠説を聴いた後のギャスパー・ノエに対する私の感想となっております。

私の感想
とにかく、あの父親(オヤヂ)の負のパワーの毒気に当てられました。不定期衝撃音にも神経を逆なでされました。しかし、自分にも表には出さないけれど、彼のように憤懣やら暴力性があることを自覚しているので、彼を全否定することもできず観ておりました。そこへもってきて彼は「やってしまった」。娘を犯したうえ殺してしまった。映像(演出)の力もあって、その衝撃たるや相当のものでありました。
ところが、それは父親の妄想だったのです。憤懣やるかたない人生に絶望して、自殺するか犯罪を犯すか、行きつくところまで行きかけたとき、愛する娘の存在に何度助けられたことか。生きていくには、理性とこのような心のより所が必要だ。泣きながら抱き合う父娘を見て、私はほとんど鳴咽状態でした。父親の怨念渦巻くぶつぶつや衝撃音に耐えた甲斐がありました。
しかし、その後がいけませんでした。嵐の後の静寂の中で、窓辺にたたずむ父親は、寄り添ってきた娘の乳房をもみもみしているではありませんか。私はたまらなく不愉快になりました。「ああ、それでモラルの映画と断っていたのか・・・。さっきの涙のシーンはなんだったの?う〜ん、このラストさえなければな〜。」
それで帰りのバスに揺られながらいろいろ考えまして、妊婦に暴力を振るうなんてやっぱり嫌だなとか、ああいう父親の行為(もみもみのこと。)に対して、娘を口が利けず知的障害があるような無抵抗な設定にしたのはずるいとか思いました。んで、白状すると、父親のもみもみがこれほど不愉快なのは、私も既成のモラルに囚われているということか、もっと自由にならんといかんのかな〜とも思いました。更に、この映画は父親だけの主観に沿って描かれた一方的な映画であって、いわば彼のための映画なのだから、妊婦や娘の立場に立ってどうのこうのいうのは、『ディアハンター』をみてベトナム人の描き方がなってないというのと同じじゃないかと思い、もみもみシーンを見て感じた不愉快な思いを合理化したのでありました。


 
ギャスパー・ノエの罠
さて、そこでヤマちゃんの「罠説」です。
この父親は見てのとおり聞いてのとおり荒みきっているけれど、外面的には身重の妻に暴力を働いた事実があるだけで(本人は赤ん坊を殺したと思っているが実際には赤ん坊は無事だろう)、この程度の荒んだ人間は例外的なものではなく、自分の中にもその種が無いとはいえない。こういう普通の人間と思われる部分を、呪詛のごとき悪口雑言や衝撃音によって救い難いほど醜怪に描き、本来は反モラルであって通常でない行為を救いの場面に持ってきている。
観客は殺人シーンで極限に達した緊張を、清澄なカノンの調べで一気にほぐされて、反モラルな場面にも殺伐とした世界から抜け出したような錯覚を覚えるだろう。このようなギャスパー・ノエのテクニックはたいしたものである。
したがって、観客に対して発せられる「ATTENTION!」の意味は、戦慄の殺人シーンがあることの警告に見せかけて、実は反モラルなシーンを反モラルと意識させずに救いの場面として観客に肯定させる、そういう危険な作品であることの警告ではなかろうか。しかも、警告しておきながら、騙してみせるという意気込みを示したサインだと思うが、これはうがった見方であろうか。
以上、ヤマちゃんのシネマノートと直接聞いた話をまとめてみました。(文責:お茶屋)

その後のギャスパー・ノエに対する思い
この話を聞いて、なんだか無性に悔しくなりましたね。私は先に書いたとおり、妄想シーンの直後、父親と娘が抱き合うシーンに感動しておりますので、ノエ監督の緊張緩和のテクニックにみごと嵌まったわけですから。でも、言い訳すると、この抱き合うだけのシーンは特に反モラルでもないわけで、観客としては実に素直な反応であると自負しております(笑)。
問題はラストのもみもみシーンです。これは明らかに父娘相姦のタブーに触れております。このシーンを不快に思った私はノエ監督の罠に嵌まらなかったのだ!といいたいところですが、「既成のモラルから、もっと自由にならんといかんのかな」と思ったということは、かなりどっぷりとギャスパー・ノエめの罠に嵌まったといえるでしょう(自嘲)。
さんざん悔しがっていますが(笑)、でも、ギャスパー・ノエって、こんな罠を意識して仕掛けられるような頭のいい人なんですか?私はこれ一本しか観たことないのでわからないのですが。「ATTENTION!」は、戦慄の殺人シーンを警告したものなんじゃないかな〜。ただ、気になるのは冒頭で、「これはモラルの映画である」というような宣言があったことなんですよね。だから、ヤマちゃんの説は、あながちうがった見方と言えないかもしれません(半信半疑)。
私としては、仮に「ATTENTION!」が殺人シーンの警告でないとすれば、観客への挑戦というよりも、モラルへの挑戦と思うのですが。「私は反モラルと思われていることを反モラルだとは思っていません。だから、悪く思わないでください。」そういう警告だと受け取った方が、ノエ監督に対して好意的になれます。
もし、ノエ監督が「反モラルな場面を観客に肯定させる自信がある」、「反モラルな場面がやすらぎの場面であるかのように観客を錯覚させてやろう」と思っていたとしたら、私は怒りますよ。そんな観客を騙すようなことをしてはいけません。(だから、警告したじゃないのと言われたらよけい怒るで(笑)。)
『スティング』のような騙しは大歓迎なのですが、『ユージュアル・サスペクツ』のような騙しは私は怒り狂いますからね。『ユージュアル・サスペクツ』をお好きな人はたくさんいらっしゃると思うのですが、私はあの再三出てくる、物陰に何者かが潜んでいるかのようなカットにすっかり騙され、観客を騙すためだけにそのカットを用意した監督の、芸の無さと心根の貧しさに怒り狂いました。って、要はものすごく悔しかったからなんですけど(^_^;。
しかし、ギャスパー・ノエ罠説が本当なら、その『ユージュアル・サスペクツ』さえ可愛く思えます。ノエは芸があるがゆえに油断ならない。「ATTENTION!」が観客への挑戦だとしたら、こんな監督には心を許さず、これからの作品には大いなる警戒心を持って臨まなければならないでしょう。観客への挑戦が「ゲーム」性のある可愛らしいものなら、その必要はないのですが。




 
チネチッタ高知掲示板

カノン見ました みわ 2000/12/20 (水) 23:10

うーん、私は見た後、嫌な気分になりました。おじさんの心の声は誰しも持ってるものだし、思ったことをすべて口にする人は少なくて心の中で意味不明な罵倒を繰り返すことはわかるのですが(私もやってるので)、でもあのおじさんはいったい何なんだ?と怒りたくなりました。自分では何もしないのに、社会や他人が自分に対して何もしてくれないとだだをこねて不平不満を言って、世界中の不運を背負った被害者のふりをしてる、単なる自分勝手なおやじじゃないかと思いました。こういう人は嫌いです。それがこの映画を見て嫌な気分になった理由です。そのうえ、なんだかわからんけど自分の娘を守ってやるなんて言って、単に自分のために利用してるだけじゃないの。こういう勘違いしたおやじ(男)は多いのでしょうか?でも、こういう人物だから物語になるんでしょうけど。愚痴ひとつこぼさずまじめに働くおじさんだと別の話になるものね。

「愛」とはどういうものか人によるのでしょうが、私は「愛してる」なんてセリフを聞くといつもうすら寒くなります。空虚で無意味に感じるのです。いったいどういう意味で使ってるのかと疑ってしまいます。よく利用される「愛」の意味がわかりません。「愛」という言葉のイメージでごまかしてる気がします。人間は自己中心的だけど「愛」という言葉でそうじゃないと思い込もうとしてるのかな。あのおやじも自分の存在理由をひねり出すために愛という名目で娘を利用してたし。私には利用してるとしか思えなかったけど、そういう風に感じるのは私の心がゆがんでるせいなのか?

 

●Re: カノン見ました お茶屋 2000/12/24 (日) 23:55

みわさん、『カノン』の感想を本当にありがとうございます。
拝読して実に清々しい気分になりました。
みわさんもおっしゃるように、おじさんの心の声は誰しもが持つものです。
私の中にも何パーセントかあのおじさんが潜んでいます。だから、おじさんを嫌だと思っても、否定しきれる潔さがありませんでした。

>自分では何もしないのに、社会や他人が自分に対し
>て何もしてくれないとだだをこねて不平不満を言って、
>世界中の不運を背負った被害者のふりをしてる、単
>なる自分勝手なおやじじゃないかと思いました。

まったく、そのとおりです。でも、あのおじさんが自分の中の不平不満を外に出したくても出せない人だからあんなになったんだと思うんですよね。
自分では何もしないのにと言われちゃったけど(^^;、おじさんに出来ることは、あの状況に我慢することだけなんです。世の中広いから、普通であれば出来そうなことが出来ない人もいると思うんです。

>あのおやじも自分の存在理由をひねり出すために
>愛という名目で娘を利用してたし。私には利用して
>るとしか思えなかったけど、そういう風に感じるのは
>私の心がゆがんでるせいなのか?

ゆがんでいるなんて、とんでもない。娘の立場に立ったら、娘の本当の幸せにつながらない一方的な愛し方は、みわさんがおっしゃる薄ら寒い「愛」に最も近い利己的な愛し方だと思います。
ノエ監督が罠を張っていたらの話ですが、みわさんは監督の罠にはまらなかったのですよ!(きまぐれ日記読んでくれた?)




 
中編へつづく


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