裏切りのサーカス

ちょー面白い!!!
サーカスにしては渋いキャスティングと思ったら、1970年代、英国スパイの話だった。

MI6の中にソ連に通じた裏切り者がいる。それは誰か。ジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)は、いつの時点で誰が裏切り者とわかったのかなど、細かいところで付いていけなかったところがあるので、もう一度、ぜひ、観たい。
ただし、一度観ただけでも感動するには充分で、何に感動したかというと、スパイも人間だということ。ポーカーフェイスのその裏に秘めた思いというのが、様々な伏線を巡らしたうえに最後の最後でいっさいが明らかになり、ビル・ヘイドン(コリン・ファース)とジム・プリドー(マーク・ストロング)の因縁や、スマイリーの愛妻ぶりなど、感情を露わにしない分じわじわと切々と心にしみてくる。
スクリーンに映らなくても、思い人の運命を知ったリッキー・ター(トム・ハーディ)の気持ちを想像したり、話に出てくるだけのソ連のスパイ、カーラの忠誠ぶりを思うだけでも、人間の心はドラマチックだと唸りたくなる。
また、組織内の派閥あらそいという視点で観ても面白いように作られている。

ところで、スパイの職務を果たすには「目立たない=華がない」がイイような気がするが、そうすると華がなく腹芸の出来るUK俳優の独擅場とも言える(?)この作品(笑)。『ダークナイト・ライジング』とは別人のトム・ハーディには驚いたし、ピーター・ギラム役でドキドキハラハラの美味しいシーンをもらったベネディクト・カンバーバッチはラッキーだったねだし、コントロール役のジョン・ハートは枯れても色気があるしで楽しませてもらった。
だけど、やっぱり一番好きなのはゲイリー・オールドマンだなぁ。穏やかな老紳士の瞳がアップになると・・・・・、目が驚くほど生きている。その瞳の裏で何を考えているのか。深みのある本当にいい俳優だと思う。

TINKER TAILOR SOLDIER SPY
監督:トーマス・アルフレッドソン
(2012/11/24 ギンレイホール)

ドライヴ

スタイリッシュという言葉をどう使ってよいかわからず、あまり使ったことがなかったけれど、こういう作品をスタイリッシュというのだろうか。独自のスタイルがあると感じた。
色んなところにスタイルを感じたが、思い出せるのは二つくらい。強盗の後のカーチェイスのシーンで、同乗者の女性の表情をとらえるとともに、リアウインドウ越しに追いかけてきた車がクラッシュするのを写し込んでいる。また、名無しのドライバー(ライアン・ゴスリング)が、エレベーターで人妻だが相愛のアイリーン(キャリー・マリガン)に別れの(?)キスをするシーンのスローモーションも印象深い。

お話はありがちだけど(どっかで『シェーン』みたいと書いてあるのを読んだ)、スタイリッシュな演出のお陰で退屈するヒマはない。それよりワタクシ的には、主人公の名無しのドライバーに難ありだ。無口はまあよい。プラトニックもまあよい。アイリーンの息子に対する優しさは、なかなかよい。サテンの生地にスコーピオンのジャケットもまだよい。逃走時のドライバーとして強盗に荷担するのは穏やかではないが、まあ、娯楽映画と思えばいいんじゃないの。ただし、愛する女性を守るため、命を賭しての大殺戮。これには思いっきり引いた。仮に私を守るためであったとしても、そんなことをする人には一瞬にして恋も冷める。ロマンチックでもヒロイックでもない描かれ方のため、うへぇと逃げ出したくなった。

DRIVE
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
(2012/11/24 ギンレイホール)

危険なメソッド

かしこまったクローネンバーグ(笑)。

ユング(マイケル・ファスベンダー)・・・・フロイドの嫉妬と羨望のまなざしを感じとれないお坊ちゃま。
フロイド(ヴィゴ・モーテンセン)・・・・貧乏、子だくさん、ユダヤ人であることの劣等感(ではなさそうだけど、そんな感じ)というか、ユングへの羨望が不和の原因か。
サビーナ(キーラ・ナイトレイ)・・・・顎が、顎が・・・・、よく外れなかったと思う。
エマ(サラ・ガドン)・・・・絵のような奥さん。
オットー(ヴァンサン・カッセル)・・・・ヴァンサン・カッセル、クローネンバーグと気が合ったのだろうか?何だか嬉しい再登場。

A DANGEROUS METHOD
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
(2012/11/23 TOHOシネマズシャンテ)

ジェーン・エア

美しい~。曇り空に稲光。落ち着いた緑に花の色。明るい豪奢なお城に、暗く重苦しい邸宅。更に更に、ろうそくに照らされたジェーン(ミア・ワシコウスカ)の繊細な表情。不機嫌なロチェスター(マイケル・ファスベンダー)までもが美々しいのだ。
風景も人物も限りなく静かなのに、ヒジョーに激しいと思った。ジェーンとロチェスターが激しいのだ。激情、恋の嵐、西城秀樹(笑)。

それにしてもジェーンのモテ率100%はすごい。セント・ジョン・リバース(ジェイミー・ベル)からも求愛されて。
お屋敷の窓から遠くを眺め、広い世界を見たい、男性との出会いがほしいと言っていたジェーン。的中率もすごかった。

JANE EYRE
監督:キャリー・ジョージ・フクナガ
(2012/11/30 シネマ・サンライズ 県民文化ホール・グリーンホール)