草原の椅子

四十にして惑わず、五十にして天命を知る。
なかなかそうはいかないので、こういう映画ができるんだろうなぁ。
一番大事なラスト、フンザに到着して砂山を駆け上がっていくシーンで事切れてしまったので、何も言えない・・・・。
あー、面白かったのに、なぜ、寝てしまったのか。寝てしまって言うのはおかしいかも知れないが、成島監督作品にハズレはないような気がする。

遠間(佐藤浩市)/富樫(西村雅彦)/篠原(吉瀬美智子)

監督:成島出
(2013/03/01 TOHOシネマズ高知4)

ソハの地下水道

暗いし、カメラがぐらぐら動いて見にくいし、息が詰まりそうだった。息が詰まりそうだったのは、アグニェシュカ・ホランド監督の演出力なんだろう。

観ながら赤瀬川源平の「ルーブル美術館の楽しみ方」だったか、西洋絵画は肉食の人たちが描いただけあってうんぬんかんぬんと言っていたのを思い出していた。ゲットーから地下水道へ逃げるとき、整然と移動し、整然と隠れた方が身のためのように思えるのに、各人の自己主張が激しいのに観ていて疲れた。また、ゲットーでも地下水道でもお盛んだったので生命力があるなーと思い、日本人も同じ状況でこれだけ生命力があるだろうかと考えて、今村昌平監督だったらあるかもしれないと思った。(今平監督、肉好きだったに違いない(・_・)。)

お話は、お金目当てから人助けへと、ソハ(ロベルト・ヴィエツキーヴィッチ)の行動の動機が変わっていったり、それが危険をともなうものであったりと、定石どおりの流れでそんなに目新しい作品とは思わなかったけれど、14ヶ月地下水道に隠れ生きのびたユダヤ人がいたことは知らなかったし、エピソードもふんだんで疲れることはあっても飽きることはなかった。

それより私のお気に入りは、ソハの妻ヴァンダ(キンガ・プレイス)だ。「ユダヤ人も私たちとそう変わらない。だって、イエス様もユダヤ人だし。」とユダヤ人差別とは無縁の彼女だったが、ソハが彼らを助けているとなると別。ユダヤ人に恨みはないが、助けていることがバレルとこちらの身も危ういのでカンカンになる。ころりと変わるところが健全だ(笑)。
ソハが娘の聖体拝受式を途中で抜け出したことに堪忍袋の緒が切れて、一旦は家を出て行くが、「バカね、戻ってきちゃった。」と笑う。明るくて善良で、見るたびホッとさせてくれて、(他の登場人物が悪人というわけではないが、あまりにも状況が暗いので)地獄に仏のようなキャラクターだった。

IN DARKNESS
監督:アグニェシュカ・ホランド
(シネマ・サンライズ 2013/03/15 高知県立美術館ホール)

ひまわりと子犬の7日間

母が堺雅人のファンなので観た。堺雅人が出ずっぱりだったので大満足。
親子で動物ぎらいなんだけど、結構面白く観た。
彰司(堺雅人)と母(吉行和子)や、保健所職員の若手(若林正恭)と古参(でんでん)の掛け合いが笑えるのがイイ。日常の場面を描いてセリフの遣り取りにおかしみがあるのは、昔ながらの映画の雰囲気だ。今ではそういう映画が少なくなったので、それだけでもポイントが高い。また、保健所で動物を殺処分しなければならない問題もしっかりと描かれているうえ、彰司の二人の子(近藤里沙、藤本哉汰)と亡くなった妻(檀れい)の家族の話にもなっているし、万事ほどよい加減だった。
ただし、なんだか緑色と彼岸花の赤が変。そこがちょっと残念だった。

保健所所長(小林稔侍)/彰司の幼なじみで獣医(中谷美紀)/議員(左時枝)/前の飼い主(夏八木勲、草村礼子)

監督:平松恵美子
(2013/03/17 TOHOシネマズ高知2)

フライト

なんか変な感じがつきまとう映画だった。旅客機背面飛行の娯楽映画なのか、アルコール依存症絡みの人生ドラマなのか。変なバランスだと思いながら観ていたが、終わってみるとヒーローものとして、なかなか面白かった!

ウィップ・ウィトカー(デンゼル・ワシントン)は妻子に去られ自暴自棄となっているが、飲酒のうえ航空機を操縦したことを査問委員会でごまかすため、酒を抜いて生活態度を改めなければならない。自暴自棄から見せかけの品行方正へ軌道修正するのはアルコール依存症ゆえ難しく、査問委員会の直前に旅客機背面飛行よりびっくり仰天の一発があったりして、ダメダメなのにキメキメでうまくごまかせそうなので、これは汚れた英雄(ダーティ・ヒーローもの)だと思った。査問委員会を無事やり過ごしたら、超絶操縦で多くの人を救ったこのパイロットを、マスコミは正真正銘の英雄と囃したてるだろう。だが、その内実は汚れたちっぽけな人間なのだ。そうか、そういう映画だったのか、なかなか面白い。

ところが、なんとウィトカーは、最後の最後で自ら飲酒したと語ってしまう。あ~れ~!そうきたかぁ!うっかりしゃべったのではない。亡くなって反論できない同僚に飲酒の罪をなすりつけることができず、迷ったあげく真実を語ったのだ。ひえ~。これぞ、本当の英雄、ヒーローだ!汚れた英雄で終わっていても面白かったが、この結末でスッキリと娯楽映画らしくなった。
因果応報。善因善果。ウィトカーに幸あれ。

ニコール(ケリー・ライリー)・・・・オーバードーズ。
弁護士(ドン・チードル)・・・・敏腕。
チャーリー(ブルース・グリーンウッド)・・・・パイロット仲間。
ハーリン(ジョン・グッドマン)・・・・ディーラー。
エレン・ブロック(メリッサ・レオ)・・・・査問委員。

FLIGHT
監督:ロバート・ゼメキス
(2013/03/03 TOHOシネマズ高知7)